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第9話 どうせ怪しまれるんだからトコトンやったる!

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「それでさ、街に入るときの注意点とかあったら教えてほしいんだけど」

『そうですね。街に入るときに注意すべきことは――』

 マキナといろいろ打ち合わせをしながら一時間ほど走ったら、大きな街が見えてきた。

「すいません! これを売りたいんですけど!」
「お、おい……アンタ、そんなもんどうやって背負ってんだ!?」

 街の門番たちがびっくり仰天している。
 かまうことなくマキナに考えてもらった文言を伝えた。

「あと通行証もお金もないんで、こいつを売ったお金で買わせてください!」
「それ……ま、まさか森猪か!? 少し待てっ!」

 門番さんが詰め所に引っ込む。

 しばらく待っていると――

「……で? 話を詳しく聞かせてもらおうか」

 マキナさん?
 なんか巨大な斧を肩にかついだ強面こわもてのおじさんが出てきたんですけど?

「えっと、どちらさまでしょうか?」

「警備隊長のザルバックだ」

 ……警備隊長?
 色黒スキンヘッドで上半身裸、ムキムキマッチョな肉体を見せつけてるあなたがですか?
 山賊の頭領にしか見えないんですけど。

「責任者の方ですね。申し遅れました。俺はタカシといいます。そちらの警備の人に話したとおりなんですけど」

 ザルバックの後ろには他にも何人か警備の兵士が控えてるんだけど、あきらかに警戒されてる。

「オレは詳しくって言ったんだぜ? どうして金と通行証がないんだ? それに、どうやって森のヌシを倒した」

 ザルバックの質問を耳にしながらマキナとのシミュレーションを思い出す。

『ダリアさんに話したような盗賊に荷物を奪われたという言い訳は、詳しい事情聴取を免れません。ですので、いっそ正直に話しましょう。』

 うーん、本当に大丈夫かな……?

「ええとですね。気がついたら着の身着のまま森にいたんで、お金も通行証もないんです。それで仕方なく森でサバイバルしてたら、森猪に襲われたから素手で倒しました」

 全部本当の話です。
 ルナのことは除いてね。

「ふざけるな! そんな話が信じられるか!」

 ですよねー。

「まあ、信じてもらえなくてもいいですよ。森猪がここにあるのは事実なんで」

 片手で森猪を持ち上げてからポイッと投げる。
 ズズーンと地面が揺れると、ザルバックを含め警備兵たちが仰天ぎょうてんした。

「森猪の毛皮を街におろせたら冬の備えが万全になりますよね? せっかくの肉も処理しないと腐っちゃいますし、もったいないと思いません?」

 ザルバックたちから殺気が向けられてくる。

「おっ、力づくで奪うつもりですか? やめたほうがいいですよ。さっきも言ったとおり、俺は森猪を単独で倒しました。こちらに武器を向けたら命の保証はできなくなります。あと、俺には森猪を別の街に持っていくって選択肢があるのもお忘れなく」

「我々から逃げられると思うのか?」

「はい、もちろん」

 警備兵たちの視界の外に走る。

「なっ、消えた!?」

「こっちです」

「いつの間に……!」

「あなた方では、俺の動きをとらえることはできません」

 ザルバックが怪訝な目を向けてくる。

「まさかお前、バゾンドなのか?」

早口野郎バゾンド?」

 なんかそれ、奴隷商人も言ってたよな。
 この言葉だけ【知力】200でも類推できないし、異世界特有の言い回しなのか?

「……いいだろう」

 ザルバックが戦闘態勢を解いた。
 他の警備兵たちもそれにならう。

「オレの権限で仮の通行証を発行しておく。金を払えば正式なものと交換できる。だから暴れるなよ?」

「それはもちろん。俺はこいつを売りたいだけなんで」

「だったら冒険者ギルドに行くんだな」

 おっ、来たね冒険者ギルド!
 マキナからちょっと聞いてはいたけど、楽しみだな~。

「紹介状を書いてやるから少し待ってろ。あと、そいつは町の中に直接持っていくなよ」

「了解です。その辺に隠しておきますから」

「フン、ここで大丈夫だ。信用しろ」

 ザルバックがニヤリと口端をつり上げる。

 この人、笑うとますます山賊の頭領だなぁ……。


 ◇


『冒険者ギルドは別名「ならず者互助会」です。』

 事前にマキナから聞いたとおりだった。
 入った途端に山賊にしか見えないような連中が併設された酒場で騒いでるのが見える。

「女性冒険者も一応いるけど。なんかゴリラみたいな体格の人しかいないね」

『冒険者は大変ハードな仕事です。普通の女性には務まりません。』

「そりゃそうかもしれないけどさあ」

 うーん、どうもリアル寄りの異世界に転生してしまったみたいだ。
 マキナの言ってた『理想どおりの異世界転生になるとは限らないです。』ってこういうことかぁ。

「ようこそ冒険者ギルドへ。何の用だ、あんちゃん」

 受付にいたのはひげづらのおじさんだった。
 やっぱり受付も女性じゃないんだ。
 確かに受付嬢はセクハラの格好の標的になるもんな。

「ザルバックさんの紹介できました」

 紹介状を渡すと、受付おじさんの目の色が変わった。

「ほう? わかった、ちょっと待ってな」

 受付の人が引っ込んだので大人しく待ってようと思ってると。

「おうおう、なんだ兄ちゃん。見ねぇ顔じゃねえか。誰の許可でここに来た?」
「つーかよ、そんなヒョロヒョロの体じゃ早死にしちまうぞ?」
「大人しくママのおっぱいでもしゃぶってるんだな! ヒャッハッハ!」

 チンピラに絡まれるイベントキター!!





※※※





ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
明日は6話更新の予定です。
よろしくお願いします。
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