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第13話 早くルナを安心させてあげよう!

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「本当か? 本当にもうバジリスクを?」

 受付のギルマスが驚きに目を見開く。
 依頼出したのアンタじゃん、と思いつつ笑顔で応対した。

「はい。バジリスクはもう解体所に置いてきました」

「……どうだ、ここのギルドの専属にならんか? 他のギルドでの依頼は受けられなくなるが、その分、報酬が上がるぞ。もちろん今回のバジリスクの報酬からだ」

「んー、専属になったら最低契約期間とかありますよね? せっかくですけど遠慮しておきます」

 ひとつの街に縛られるのはデメリットが大きすぎるしね。

「そうか、残念だ」

「この街はしばらく拠点にしますんで、また来ますよ」

「バジリスクの鑑定が終わるまではゆっくり待ってな」
 
 そんなこんなで報酬をたっぷりを受け取ってからギルドを出る。
 買い物は必要ないので、そのまま町の出口へ向かった。

「よお、聞いたぞ。バジリスクを倒したそうだな」

「あ、ザルバックさん。お疲れ様です」

 門の詰め所から顔を出した色黒のスキンヘッドがニヤリと笑った。

「あのバジリスクにはみんなが困ってた。あいつを倒したお前は英雄だ。だから、いつでも来い!」

 言ってるセリフはまともなのに、見た目は完全に山賊の頭領なんだよなぁ……。

「ザルバックさんもお元気で!」

 さーて、ルナも待ってるだろうし。
 寄り道せずにまっすぐ帰ろう!


 ◇


 一方その頃、ルナの叔母ダリアはとても焦っていた。

「あのクソガキッ! いったいどこに隠れているんだい!」

 もう奴隷商人に言われた三日目だ。
 奴隷商人にルナを引き渡せなかったら奴隷にされてしまう。
 逃げることも考えたが、冬の直前に家を捨てるのは自殺行為だ。

「まさか、もうどこかで野垂れ死んでるんじゃないだろうねぇ……!」

 ダリアは既にボロボロだ。
 雑木林であっちこっち走り回った結果、見た目はすっかり老婆じみている。

「フザけるんじゃないよ、あんの疫病神! 最後の最後くらいあたしの役に立ちな!」

 ルナの両親が行方不明になって孤児院に送られそうだったルナを引き取ったのは、ダリア自身が楽をするためだった。
 赤眼ブラドの娘をこきつかったところで村の誰にも文句は言われないと思ったのだ。
 しかし、村人から赤眼ブラドを引き取った自分まで厄介者扱いされるとは、ダリアは夢にも思っていなかった。

「こんなことになるなら、もっと早く殺しておけばよかったよ!」


 ◇


 そのときルナは水浴びを終えて、焚き火の前で体を乾かし終えたところだった。

 炎に照らされた少女の肌には痛々しい傷がある。
 ダリアから受けた虐待の痕だ。
 自分の傷を見るたびルナの心には、うすら寒い風が吹く。

「~♪」

 しかし、今は心を弾ませていた。
 タカシがプレゼントしてくれた服に袖を通してみたくて仕方がなかったからだ。
 タカシを待ち切れずに身を清めたのは、服を着るためだった。

「わあ……!」

 服を着たルナがその場でクルクル回る。
 ごく普通の子供服だ。
 だけどルナはお姫様に変身したような気分だった。 

「リラ、ルラ、ルウ、ロミ~♪」

 幼い頃に覚えたメロディを口ずさむ。

「リラ、ルラ、ルウ、ロミ~♪」

 赤と青。
 ふたつの月の光を浴びながら無意識にステップを踏んでいく。
 もしタカシが見ていたら幻想的な光景に心奪われたことだろう。

 しかし、その歌を聞きつけてやってきた女は違っていた。

 探していた獲物を見つけて鮫のようなと笑みを浮かべる。



「見 つ け た」
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