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第20話 サバイバル慣れしてきた気がする!

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 俺の朝は早い。

 山猪の毛皮で作った寝袋から這い出したら、洞窟の外に出て、朝日を浴びながら歯を磨く。
 歯ブラシなんてないので、歯磨き用の石を使う。

 歯磨きが終わったら火おこし。
 洞窟といっても入口付近だから換気の心配はないし、ここなら雨露を凌げる。湿気もそこまでひどくない。

 火がいい感じになってきたら、川の源流で汲んでおいた水とカラムシ麦を鍋に入れる。
 この段階でルナにモーニングコールをする。

「ルナ、おはよう」

「ん、おあよ……」

 ルナが目をこすりながらノソノソと起きてくる。
 俺と同じように歯磨きを済ませると、火の番を交代してくれた。

「じゃ、今日も灰汁あくとりお願いね」

「あい……」 

 ルナはまだ眠そうで、ふわぁとあくびをする。

「危なくなったら?」

「火、消す、ます」

「よくできました! じゃあ、いってきます」

「いってらっし」

 ルナに手を振って出かける。
 いつもなら薪割りと木の実集めをするけど、今日は違う。

「マキナ。山小屋の建築計画を立てて、簡単にまとめて」

『はい。山小屋建築計画を簡単にまとめると、以下のようになります。

1.建築地の選定
 周囲の安全や地盤に気をつけて、適切な場所を選びます。

2.建築計画
 山小屋の設計図を描いて、必要になる資材などを算出します。

3.建築資材
 必要になる木材や石材、それと工具を揃えます。

4.基礎と土台づくり
 建築計画に基づいて整地した地面に基礎と土台を築きます。

5.梁と柱
 梁と柱を組み、基礎としっかり結合させます。

6.組み立て前
 床、壁、屋根を作ります。可能なら断熱材を施しましょう。

7.完成
 床、壁、屋根の順に組み上げて完成です。

 以上が異世界での山小屋建築計画の簡単なまとめです。』

「オッケー、だいたいわかった」

 一度聞いただけでやるべきこと理解する。
 知力200のおかげだ。

「場所は洞窟の前って決まってるし、図面は頭の中で描けるな。うん、これでよし! さて、そうなると必要な資材は石材と木材。釘とヒンジ、あと工具は買ってあるから、なんとかなるかな。あ、マキナ。断熱材は何がいいかな?」

『わらや枯れ葉を詰めた壁、動物の毛皮や革などがいいでしょう。』

「それなら集めるのはそこまで大変じゃなさそうだね」

 木を切るのは薪割りですっかり慣れた。
 手刀を超高速で振動させてから手近な木に向かって斜めに振るう。
 なんの抵抗もなく幹がスパッと切れて横に倒れた。

 いわゆる超振動ブレードってやつだ。
 異世界に来たのにファンタジーじゃなくてSFみたいなことしてるよ、とほほ。

「うーん。俺の生前の努力のおかげとはいえ、やっぱり超人過ぎるよな、今の肉体。なんかズルしてる気分になる」

『タカシさん、何も恥じることはありません。あなたは力を正しいことに使っています。ルナさんを助けることができたのは素晴らしい成果です。』

「それもそっか」

 確かに思っていたような異世界転生じゃなかった。
 だけど後悔はない。
 とにかくルナの安全が優先だ。

「よーし、この調子で資材は一気に集めよう! えいえい、おー!」

『がんばりましょう!』 

「マキナ。えいえい、おーって言われたら、えいえい、おーって返すんだよ?」

『了解しました。えいえい、おーっ!』


 ◇

「ただいまー」

「おかえり、タカシ。朝ごはん、できた、です」

「ほんと? いやー、いっぱい働いたからお腹ペコペコだよ」

 ルナが何故か嬉しそうに笑った。
 よそったおかゆをフーフーして冷ましてから渡してくれる。
 
「どうぞ、です」

「ありがとう」

 冷ましてから食べるようには教えたけど、俺の分まで冷ますようには言ってない。
 ルナが自分で考えた気遣いだ。
 それがとっても嬉しい。

「ワンワン!」

 ガロが自分の餌を前に「早く食べて!」と急かしてくる。

「いただきます」

「おいしい、ですか?」

「うん! 塩加減もちょうど良くておいしい!」

「えへへ……」

 ルナがはにかむ。
 なんだか自分が食べたときより嬉しそうだ。

「ごちそうさま」

 食べ終えた俺を見てルナがハッとする。
 おかゆを食べ終えてから、俺の真似をして手を合わせた。

「ごちそさま」

「惜しい!」

「むぅー」

「次はお昼に頑張ろうね」

「おひる、好きです。さんかい、食べる、ぜいたく」

 どうやらこの世界では朝夕の一日二食が普通みたいだ。
 ルナの場合は罰でご飯抜きにされるのもしょっちゅうだったらしい。

「火を消したら外においで」

「あいっ」

「ワン!」

 ルナが自分でおっかなびっくり火を消すのを見守ってから洞窟の外へ連れ出すと、ガロもお供するといわんばかりについてきた。
 外には山小屋の資材がうず高く積みあがってる。

「わあ。ぜんぶ、集めた、ですか? タカシ、すごい」

「うん。今からこいつを組み立てていくよ」

「楽しそ。わたし、なにすれば、いい?」

 うーん、正直大半が肉体労働だからルナに手伝ってもらえそうな仕事はないんだけど……。

「ルナは見学! 見てお勉強するんだ。ルナならできるよね?」

「あいっ」

 ちょっと苦しいかと思ったけど、ルナの表情がぱぁっと華やいだ。 

 さあ、ついに山小屋の建築開始だ。
 ようやく! ようやくスローライフっぽくなってきたぞー!
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