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第31話 役に立たないと捨てられると思ってるのか?
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朝ごはんを済ませて、日課の狩りに出かけようと準備をしてると。
「タカシー!」
ルナが息を切らせて走ってきた。
「どうしたの? そんなに急いで」
ルナがぷくっと頬を膨らます。
「だって、タカシ、すぐに、いなくなる、ます」
まあ、【素早さ】100だからねえ。
「それで何かな? 俺、忘れ物したかなぁ」
「いっしょに、おでかけ、したい、です」
「おでかけ? でも……」
「だめ、です?」
うっ、そんな目で見られたらダメとは言えない。
「わ、わかったよ。でも、俺から離れないで。ちゃんと言うことを聞いてね」
「あいっ!」
うーん、素直なルナがかわいい。
そういえば、ルナの返事が日に日に元気になってきてる気がするな。
最近はおかゆじゃなくても、ちゃんと食べられるようになってきたし。
まだまだ痩せてるから、冬に備えてもっと食べさせてあげないといけないけど。
「ワン!」
「うんうん、わかった。お前もだな」
ガロが当然だとばかりに胸を張った。
「さて、ルナがついてくるなら、どうしよっかな……」
狩りじゃなくて、木の実集めにしようかな?
冬が近いせいか、もうあんまり採れなくなってきてるけど……。
「タカシの、狩り、見る、ます」
「え? 俺の狩りを見たいの?」
ルナがコクコクうなずいた。
「うーん……言っちゃなんだけど、残酷だよ? 動物を殺すわけだから」
「まえ、どうぶつ、さばくの、やって、ますた。だいじょぶ、です」
そっか。村で暮らしてるときは、そういう仕事もおばさんにやらされてたのね……。
「じゃあ、とりあえず仕掛けた罠のところに行こうか。ウサギとかとれてるかもしれないし」
「あいっ!」
「ワゥン!」
せっかくルナがやる気を出してくれているんだし、狩りのままでいっか!
◇
今日はルナがいるので高速移動をしないで、超振動手刀で枝葉を切り払いながら進んでいく。
「このあたりは地面に根っこが多いから、転ばないようにね」
「あいっ」
「ここは滑りやすいから、俺の手につかまって」
「あいっ」
最初は不安だったけど、ルナが素直に言うことを聞いてくれるので困ることはほとんどなかった。
こっそり虫よけの魔法も使ってあるから、蚊に刺されたりもしないし。
ガロにも周辺を警戒してもらってるから、ちょっとした散歩気分だ。
「そろそろ罠を仕掛けた場所だけど……おっ、ウサギだ」
蔓を利用したシンプルな括り罠だけど、ちゃんとウサギがかかってた。
もちろんサバイバル知識なんて皆無だったので、マキナに作り方を教わって用意したものだ。
「ルナ。今からウサギにとどめを刺すけど……」
だから目をつむってね、という意味で言ったんだけど。
「やる、ます」
「えっ!?」
さすがにびっくりした。
なんとルナが自分でウサギにとどめを刺すと宣言したのだ。
「……大丈夫?」
俺の場合は【精神力】が100になってるおかげで、そこまでショックはなかったけど……さすがに子供のルナには刺激が強すぎるんじゃ?
「やる、ます」
うーん、ルナの意志は固そうだ。
「やったことあるの?」
一応確認してみると、ルナはフルフルと首を振る。
「未経験か……だったら、最初は俺がお手本を見せるよ。次からでもいい?」
「でも……」
「ルナを役立たずだなんて思わないよ? それに、ちゃんとしたやり方がわからないとウサギを苦しめちゃうでしょ」
俺の言葉にルナがハッとした。
「わかり、ますた」
ようやく聞き入れてくれたルナは、ウサギをジッと見つめる。
俺がとどめを刺すのをしっかりと見届けたあとで、手と手で輪っかを作っていた。
「何してるの?」
「お祈り、です。青い、お月様に、かんしゃ」
「へえ、そっか。青いほうの月に祈るんだ……」
空を見上げると、木々の隙間から青と赤の月が見える。
今日はどちらも半月。
ただし、鏡合わせのように正反対だ。
ふたつの月はいつもそう。
片方が満ちている部分が、もう片方では欠けている。
合体したらちょうど満月になるような感じで満ち欠けするってわけ。
太陽の光を反射してたらこうはならない。
この世界独自の法則なんだろうな。
「青き月よ。あなたの恵みに感謝を」
俺もルナを真似して手で輪を作って祈りを捧げる。
「それと……ルナに会わせてくれたことにも、感謝を」
ルナが驚いて俺を見た。
笑い返してあげると、少し慌てて言葉を付け足した。
「わ、わたしも。タカシ、会えて、かんしゃ、です」
「タカシー!」
ルナが息を切らせて走ってきた。
「どうしたの? そんなに急いで」
ルナがぷくっと頬を膨らます。
「だって、タカシ、すぐに、いなくなる、ます」
まあ、【素早さ】100だからねえ。
「それで何かな? 俺、忘れ物したかなぁ」
「いっしょに、おでかけ、したい、です」
「おでかけ? でも……」
「だめ、です?」
うっ、そんな目で見られたらダメとは言えない。
「わ、わかったよ。でも、俺から離れないで。ちゃんと言うことを聞いてね」
「あいっ!」
うーん、素直なルナがかわいい。
そういえば、ルナの返事が日に日に元気になってきてる気がするな。
最近はおかゆじゃなくても、ちゃんと食べられるようになってきたし。
まだまだ痩せてるから、冬に備えてもっと食べさせてあげないといけないけど。
「ワン!」
「うんうん、わかった。お前もだな」
ガロが当然だとばかりに胸を張った。
「さて、ルナがついてくるなら、どうしよっかな……」
狩りじゃなくて、木の実集めにしようかな?
冬が近いせいか、もうあんまり採れなくなってきてるけど……。
「タカシの、狩り、見る、ます」
「え? 俺の狩りを見たいの?」
ルナがコクコクうなずいた。
「うーん……言っちゃなんだけど、残酷だよ? 動物を殺すわけだから」
「まえ、どうぶつ、さばくの、やって、ますた。だいじょぶ、です」
そっか。村で暮らしてるときは、そういう仕事もおばさんにやらされてたのね……。
「じゃあ、とりあえず仕掛けた罠のところに行こうか。ウサギとかとれてるかもしれないし」
「あいっ!」
「ワゥン!」
せっかくルナがやる気を出してくれているんだし、狩りのままでいっか!
◇
今日はルナがいるので高速移動をしないで、超振動手刀で枝葉を切り払いながら進んでいく。
「このあたりは地面に根っこが多いから、転ばないようにね」
「あいっ」
「ここは滑りやすいから、俺の手につかまって」
「あいっ」
最初は不安だったけど、ルナが素直に言うことを聞いてくれるので困ることはほとんどなかった。
こっそり虫よけの魔法も使ってあるから、蚊に刺されたりもしないし。
ガロにも周辺を警戒してもらってるから、ちょっとした散歩気分だ。
「そろそろ罠を仕掛けた場所だけど……おっ、ウサギだ」
蔓を利用したシンプルな括り罠だけど、ちゃんとウサギがかかってた。
もちろんサバイバル知識なんて皆無だったので、マキナに作り方を教わって用意したものだ。
「ルナ。今からウサギにとどめを刺すけど……」
だから目をつむってね、という意味で言ったんだけど。
「やる、ます」
「えっ!?」
さすがにびっくりした。
なんとルナが自分でウサギにとどめを刺すと宣言したのだ。
「……大丈夫?」
俺の場合は【精神力】が100になってるおかげで、そこまでショックはなかったけど……さすがに子供のルナには刺激が強すぎるんじゃ?
「やる、ます」
うーん、ルナの意志は固そうだ。
「やったことあるの?」
一応確認してみると、ルナはフルフルと首を振る。
「未経験か……だったら、最初は俺がお手本を見せるよ。次からでもいい?」
「でも……」
「ルナを役立たずだなんて思わないよ? それに、ちゃんとしたやり方がわからないとウサギを苦しめちゃうでしょ」
俺の言葉にルナがハッとした。
「わかり、ますた」
ようやく聞き入れてくれたルナは、ウサギをジッと見つめる。
俺がとどめを刺すのをしっかりと見届けたあとで、手と手で輪っかを作っていた。
「何してるの?」
「お祈り、です。青い、お月様に、かんしゃ」
「へえ、そっか。青いほうの月に祈るんだ……」
空を見上げると、木々の隙間から青と赤の月が見える。
今日はどちらも半月。
ただし、鏡合わせのように正反対だ。
ふたつの月はいつもそう。
片方が満ちている部分が、もう片方では欠けている。
合体したらちょうど満月になるような感じで満ち欠けするってわけ。
太陽の光を反射してたらこうはならない。
この世界独自の法則なんだろうな。
「青き月よ。あなたの恵みに感謝を」
俺もルナを真似して手で輪を作って祈りを捧げる。
「それと……ルナに会わせてくれたことにも、感謝を」
ルナが驚いて俺を見た。
笑い返してあげると、少し慌てて言葉を付け足した。
「わ、わたしも。タカシ、会えて、かんしゃ、です」
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