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ハレの日の決戦
しおりを挟むその日は晴れなのに雨が降る不思議な日でした。
こんな日が決行の日になるとは前までは想像もつかなかったでしょう。
わたくしの前には大きな花のトンネル。
その道を赤の絨毯が色を染めて、隣には口を一文字に結んだ父の姿。
そしてわたくしは純白のマーメード型のウエディングドレスをきている。そう、今日はわたくしとレオの結婚式です。
赤の絨毯、いわゆるバージンロードをゆっくりと仏頂面の父と歩き始めました。
ここは花に囲まれた美しい教会。
特別に周囲までもが花畑となっていて他の民家からは大分離れています。
花のトンネルを抜けるとそこにはこれまた綺麗に咲いた花が作り上げるドーム状の祭壇がありました。
そこに立つのは真っ白なタキシードに身を包んだ、王弟、レオナルドの姿です。
客席には、陛下や魔王、エリザベート様にアリア、ティグリス、ウルススを始め、例の三人がおります。
特に後半の六人は、安全面を危惧した人達に止められましたが、彼らのお陰でこうして出会えたのですからどうしても呼びたかったのです。
なんていうのは建前ですけどね。
念のため、アリア、ティグリス、ウルススには強力な拘束具でヘタな事ができないようにしてあります。他の三人もバラバラに配置されて周りには腕に覚えのある父の友人が固めていたり。
「いつまで、そんな顔をするのですか。」
「愛娘の結婚式がこんな餌として使われて不機嫌にならない親は居ないだろ。」
「そのお言葉だけで、わたくしは嬉しいですわ。」
この作戦を考えたのはわたくし自身。
レオは最後まで反対してくれましたが、わたくしがこのままだと気持ち悪かったのです。
それに、不穏な物は早々に排除すべきですから。
この国のためにも。
父のエスコートの末に祭壇の手前まで来ました。
途中、アリアが『何であの悪役令嬢がっ!』と叫んでいるのが聞こえましたが、拘束具のお陰で他の客の迷惑にならなくて良かったです。
魔王だけはその叫びを聞いて、驚きを隠せないようでしたが。
「ラスレア。」
祭壇で優しい笑みを浮かべて手をさし伸ばしてくれたレオの元に父から離れてゆっくりと向かいます。
口許では呪文を唱え、ウェディングドレスの胸元の魔道具をぎゅっと握りしめる。
この魔道具は魔王とエリザベート様が結婚祝いとして下さったものです。
淡い光を放つそれは観客からはわたくしの背でみえないでしょう。
どうしても3つの魔力の性質を生かして術を使うのには時間がかかってしまう。
慣れればそうでも無いのでしょうが、練習期間が10日だけという短さではそうはいきません。
最後のレオの元までつくとそのまま式が始まります。
わたくしの魔力の変動がバレないようにちょうど太陽の光が祭壇奥のステンドグラスを通してわたくしに被るように時間も調整しました。
あとはタイミングよく発動するだけ。
レオと事情を知った神父に頷いて合図をだすと二人は祝いの言葉をさりげなく中断しました。
「…祝福をラスレアに与えます。」
「『サーチ!』」
神父のフォローのお陰か、わたくしの呪文がまるで祝福の波動のように煌めいて会場を包みます。
その煌めきが収まる頃には、事情のしらない観客は歓喜の悲鳴をあげます。
しかし、そんなのを喜んでいる暇はありません。
アリアから靄のようなものがティグリス、ウルススに延びているように見えます。そして、切れつつあるも三人の男の一人からアリアへ延びている微かな靄も。
その男の顔には焦りなど微塵も感じない、むしろ余裕な姿をしていました。
※やっとここまで来ました。
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