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浮き世の随に
しおりを挟む「事情はわかった。」
「うう。」
「ちなみに、俺は元の世界の輪廻は外れているのか?」
「はい。なので、もう二度と元の世界には帰れません。」
まあ、そこはなんとなくわかっていたがな。
そうそう、おっさんの話を聞いて分かった事なのだが、どうやら俺の両手は機械のため感覚が鈍いようだ。
オリハルコンで出来てるから傷などはめったにつかないだろうが少し残念だ。せっかくの異世界、五感で楽しみたかったなあ。
ちなみに言っておくと、オリハルコンの白さにヒヒイロカネの赤み、ミスリルの黒黄色の色が混ざり肌の色は少し白いかな程度で違和感がない。誰も両手がレアメタルで出来ているとは思わないだろうよ。
「おっさん。」
「はい。」
「この世界の事を教えてくれよ。」
「はい、いくらでも罵りくだ……えっ。」
このおっさん、罵りくださいって言おうとしただろ。別に恨んじゃいないって。
まあ、友人と会えないのは寂しいけどさ。
それに、せっかくの異世界だし楽しまないとな。
そう言ったらおっさんの目からまた涙が溢れて来た。まったく、泣き虫なんだから。誰得でもないんだから泣き止めよ。
おっさんの涙が止まり、この異世界について話し始めた。
この世界の名はルーフェルデルトガルド。略してルーフェと言うらしい。神々のお偉いさんと、魔族のお偉いさんが協力して作ったのだという(仲良いな)。
ルーフェは、地球に似せられて作ってあるが世界に魔素が満たされているため、魔物や精霊、魔族や神族がいるのだとさ。 お偉いさん達とは違いこの世界の魔族や神族は仲が悪いそうだ(上司を見習えや!)。
そして、この世界で一番多い種族は人間だという。魔族や神族は人間とは一線を引いて暮らしているが他の魔物や精霊は人間社会に関わりを持っているのだと。
一言でこの世界を言うなれば、まさにファンタジー。コンテニューが無いことを除けばゲームの様な世界である。
さらに言うなれば、ステータスというものがあった。
おっさんに言われてステータスを開けば、頭の中に文字が浮かんでくる。
──────────
ユーリ・テンドー (14歳)
level:1
種族:神々の機械
体力:1000/1000
魔力:2500/2500 神力:5000/5000
〈取得技能〉
魔法 L1 暗殺 L8 神通力 L1
──────────
……うん。俺、人間じゃないね。それと年齢が若返ってます。本当は俺、19歳なんです。なんか5年間の経験値を返してと言いたくなりました。
はぁ、だから初め身体をまさぐったときに違和感をかんじたのか。
ん?それよりもツッコミ処があるって?どこどこ?
まあ、魔法や神通力はファンタジーとしてはありだろ。えっそこじゃない。ああ、暗殺のlevelが高いとこか。まあ、普通だろ。俺は元々、暗殺者だったからな。
「とんでもないやつを改造してしまったようですね。」
「おっさんにはステータスが見えるんだな。」
「ええ、慧眼の能力をもっていますから。」
「なにそれ欲しい!」
俺が羨ましく思っていると、おっさんが苦笑いを浮かべながら頭に手を乗せてきた。ほんわりおっさんの手が暖かくなる。
すると、ステータスに『慧眼』が追加される。
「わたしからの謝罪の品です。他の神々にも何か贈るように伝えておきます。」
「すげぇ、ありがとう。ちなみに他は要らないから。」
慧眼を使い、森の中を見てみると木の種類や年齢が頭に浮かぶ。おお、これは便利だ。
「神の能力ってチートぽいじゃん。せっかくの異世界だしチートを使うのは楽しくないだろ?」
「だが、なんかしなくては。」
「じゃあ、この世界の地図と小銭、それから武器が欲しいな。」
「そ、そうだね。」
おっさんは忘れてたというように、なにもない空からボディバックを取り出した。ボディバックから、地図や見たことのある小銭入れやら死ぬときにに持っていたものを含め見せてくれた。
そこには手に馴染んだ暗器もあった。
「このボディバックの中は異空間となっているので倉庫ぐらいなら入ります。」
「おお!」
「あと、暗器は強化しておこう。」
「何から何までありがとう。」
ボディバックを受け取り、早速身に付ける。うん、ぴったり。
次に暗器も身体に取り付けていく。強化したお陰かいつもより手にしっくりと馴染む。ためしにと、太い幹に向かって軽く手を振る。それだけで、幹が輪切りになる。
「うん、いいね。」
「それは、良かったです。ボディバックの方はあなたが持ち主だと登録しときました。」
「助かるよ。」
俺は暗器をしまい、次に地図を開く。
地図には俺らしき点とおよそ数キロ範囲の道が描かれていた。これは、魔法の地図らしい。俺の意思で詳細地図から世界地図にまでなるらしく、やっぱり点は俺を示すものであった。
色々と地図で試していると、北に街があるのが分かった。まずはそこに行って色々な情報を集めるのが良さそうだ。
「色々と最低限の物が手にはいったから、日が暮れる前に街に向かおうと思う。」
「それが良いと思います。しかし、これでお別れですか寂しいですね。」
「おっさんは神様だからいつでも来れるだろ。」
「そうだけど、人間一人を贔屓できないです。」
「俺、神の機械だからメンテナンスがてら遊びに来てよ。」
「その手があった。」
おっさんのぽむっという手を叩く動作をみて思わず笑ってしまった。一通り笑ったあと、またの再開を約束すると、おっさんに見送られて森を北に歩き出す。
目指すは北の街。
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