機械の腕に抱かれて

SHIN

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行き交う群れ 賑わう声が

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 森からみて北にある街、リフィノーズ。
 
 そこは、獣人と人が住まう街である。
 街には特殊技能登録所であるギルドがあり、その大きさはここら辺でにある中でも大規模の部類にはいる。
 俺は、リフィノーズに着いて真っ先にここに来た。
 というのも、よく見る異世界物の小説で分かるように身分証明書が必要だからだ。

 ギルドには商業、冒険の二つの部署がある。
 商業では特許がとれたり、街と街行き交うときの便宜を図ってくれたりするし、店を出したいときの補助金制度とかあった。
 冒険は想像通り、ギルドの掲示板に貼られている依頼を受けたり、人々を害する魔物や犯罪者を退治したり捕まえたりする。
 とりあえず俺は両方のギルドに入っておく事にした。まあ、何かのときに利用出来れば良いなって軽い気持ちだが。

 受付にいたちょっとゴツいお姉さんに聞いたら、やはり、俺と同じように二部署のギルドに入る者がいるみたいで手続きの書類は同じものを一枚で大丈夫なのだとか。

 書類をすべて記入して受付に持ってくると、先ほどのお姉さんが受け取ってくれた。


「次は、会員証にステータスを刻むわね。これで終わりだからもう少し待ってて。」

「会員証にステータスを刻んだら、他人に色々とバレない?」

「うふふ、大丈夫。刻むのはパーソナルステータスとギルドランクだけよ。さすがにその人の持つ能力とかを刻むわけにはいかないわ。」


 それはそうだな。
 しばらく奥で何かした後、受付のお姉さんが一枚の黒いカードを持ってくる。そのカードを俺の前に置くと確認するように促した。
 カードを手に取ると、確かにパーソナルステータスとギルドランクのEが記載されているようだ。


「ちなみに、犯罪……理由なき殺人とかをしたらそれも記載されるわ。」

「へぇ。」

「これで、会員証の発行は終わりよ。何か質問はあるかしら?」


 その言葉にゆっくりと首をふる。わからないことが出てきてからでもまた来れば良いだろう。
 その行動に満足したのかお姉さんは俺の書類を保管すべく奥へと消えていった。
 俺はその隙にEランクの掲示板から簡単そうな薬草採取とゴブリン討伐の依頼を見つけ手に取る。

 これぐらいなら楽勝だな。


「依頼を受けるのか?」

「ん?」


 お姉さんが戻ってきたら受理してもらおうかと思っていると、背後から低い男の声が聞こえてきた。
 背後を首だけで振り向くと、左目に眼帯をつけた大柄なナイスミドルなおじさまが、俺の依頼内容を覗いてきている。
 完全に振り向けば、その大きな姿が改めて分かった。
 おじさまは、大剣を背に装備していてお洒落な長めのコートを着用している。それによってその体型がどの様なものか判断はつかないが、俺の経験上強い相手なのはわかる。そういう相手にはちゃんと敬語で敬意を払うのが当然だ。


「受けるつもりですが、もしかして狙っていた依頼でしたか?」

「いや違う。薬草採取はいいがゴブリン討伐は初めてやるには辛いぞ。」

「大丈夫です。」

「せめて誰かと組むか、戦闘奴隷を連れていった方が良い。」


 戦闘奴隷。
 この世界には、奴隷の身分があるようだ。
 俺が生きていた世界ではめったに聞かない言葉だった。そもそも、平和大好きなあの国では奴隷という言葉だけで嫌がる人もいたしな。
 しかし、この世界では奴隷は一般的な事みたいだな。


「心配してくださりありがとうございます。ですが、ゴブリンなら大丈夫です。」

「……そのようだな。」


 おやおや、おじさまは俺の何かを察したのかにやにやとした愉快感をにじませ始めた。う~ん、やっぱりこの人強いな。

 おじさまは、俺の持つ依頼を奪うと受付に向かう。その後をカルガモの親子の如くついて行けば、ギルドにいた人たちがモーゼの渡る海の様に道をあける。

 おじさまが受付に付くと、お姉さんが場所をあける。
 なんだ、おじさまはギルドの人なのか。


「私はここのギルド長、ラスだ。受付はしといた。」

「今日、ギルドに入ったユーリです。」

「薬草は5本で一束と数える。それを十束を納品してくれ。ゴブリン討伐証明部位は頭の角だ。角には使い道があるから綺麗に取ってきてくれ。」

「了解です。」


 おじさまことラスさんから依頼を受けている証のドッグタグをもらい、軽く採取の説明をしてもらったあとギルドをあとにする。
 
 ラスさんには今後とも何か縁がありそうなので色々と仲良くなりたいな。ギルド長と仲良くっておかしいか?
 いやいや、伝は作っておくべきだよな。

 とりあえずは依頼をちゃんとして、好感度をあげていこう。

 色々と考えながら城門を抜けて森へとむかう。






 森は薄暗く、生い茂る植物が視界を狭めていた。
 こういうところは嫌いではない。
 忘れられがちではあるが俺は暗殺者。この雰囲気は行動しやすいのだ。

 神様に強化してもらった武器を片手に、慧眼を発動しながら薬草を取っていく。今の暗器はワイヤーの様なもの。指を動かす毎にワイヤーはまるで生き物の様に動く。次々と束になる薬草は慧眼で高品質を叩き出している。どうやら体温などの熱でダメになる薬草のようだ。

 ついでにとばかりに時たまワイヤーを遠くに飛ばし引き戻せば、脊椎にワイヤーが刺さったゴブリンが釣れる。
 どのぐらい倒すのが良いのかわからないが、適当に釣りをした。場所は気配で読んでいる。ラスさんが背後にいたときはまさか声をかけられるとは思っても居なかったからほっといてたが、俺を見ていたことは知っていた。

 気配には敏感なんだよね。イヒッ。

 
 ある程度、集まったらボディバックにしまいます。
 もちろん、ゴブリンは角だけだが。そういえば、なんか途中で緑色の筈のゴブリンが黒い色だったのを釣り上げた。慧眼で見ると『ゴブリン亜種』というものらしい。これも大丈夫かな。一応ゴブリンだし大丈夫だよね。


 久々の細部コントロールの練習となった依頼は俺のlevelを大分上げてくれました。特に『ゴブリン亜種』よ、ありがとう。


──────────


ユーリ・テンドー (14歳)


level:15
 種族:神々の機械カラクリ
 体力:1000/2500
 魔力:2500/4000   神力:5000/6500

 〈取得技能〉
 魔法 L2   暗殺 L8   神通力 L1   慧眼 L5   暗器使い L8




───────────


 ……なんか、延びしろがすごい。普通の人がどの程度か知らないけど。街に戻ったら見てみて違いでも見てみるか。
 あ、特殊技能ってそれぞれの項目に注目すると更に詳しく知ることができるみたいだ。 


『魔法L2』
 魔力を使い不思議な力を使うことができる。イメージが重要で言葉にすることで具体性を持たせることができる。ゆえに、別に呪文は唱えなくても大丈夫。 


 こんな感じだ。
 魔法は、後でやってみるとして今日は街に帰ろうかな。宿も探さなきゃだし。ラスさんにオススメ聞いてみよう。
 


 その帰り道、傷だらけの少女を拾うのはその時は思いもよらなかった。そして、その出会いが俺を少しづつ変えてゆく。



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