機械の腕に抱かれて

SHIN

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運命分かつ 哀れな奴隷商人

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※グロい表現があります。お気をつけください。






 窓から飛び降り、森に入った俺は森に意識を移す。そうすれば、あのときリンファに向かってきてた人達の気配を探る。
 すると、思っていたより近くに二人いるみたいだ。
 気配を消すのは当然として、動くことで生じる衣服の摩擦音でさえ消して近寄る。
 
 魔法でも同じようなことはできると思うが、それでは魔法の気配に敏感な人やそもそも、使えない所では意味がない。
 何でも魔法を使うのはあまりにもどうかと思うんだよね。
 便利なんだけどさ。

 俺は、静かに二人の人物の真上の木に降り立つ。
 二人はこちらに気付いてないようだ。まあ、当然だけどね。

 ゆっくりと、木から二人を取り囲むようにワイヤー状の暗器を張り巡らす。それこそ蜘蛛の巣のように張り巡らせれば準備完了。

 木から音もなく降りるとゆらりと二人の側によるその二人は男の組み合わせだった。二人は、下卑た話をしていた。
 どうしてこういう男たちはそんな話ばかりするのか。全く、女の人に勘違いされる他の男の身にもなれよな。

 すこし、憤慨感を織り混ぜながらナイフを一人の男の背に当てる。と同時に殺気を放てばもう一人は距離を取ろうとしてワイヤーに引っかかる。


「ねぇ、仲間の場所を教えてよ。」


 ナイフを滑らせて首筋に当てて尋ねれば、簡単に頷いてくれた。
 そりゃあ、目の前にワイヤーで細切れの仲間を見たらそうなるか。ポタリポタリと落ちる血が水溜まりをつくっていた。ふはっ。
さあ、色々と教えて貰いましょうか。




 数分後、ワイヤーに付いた血肉を振ることで落とし、再度歩き出す。俺の背後には元が何か分からない鮮血色のミンチが残されている。それが二人分だとわかるのは当事者のみである。

 森を再度駆け、拓けた所に出る。
 猫の様に音もなく村に忍び込み、全体が一望できる位置に行く。
 
 協会の鐘がある位置に来て村を見渡せば、広場らしき所に人々が居るのがわかった。
 人々の首には鋼鉄の首輪が付いている所を見る限り、奴隷として選ばれた者達だろう。そこからすこし離れたところに、年老いた者達の死体が積み重なっている。
 老人たちは体力も無いため奴隷としては失格だったのだろうな。惨いな。

 とりあえず、彼処に居そうかな。

 しゅるりと影に姿を溶け込ませ村の中を移動して、広場の木に潜む。
 どうやら、奴隷商人達は一興を高じているようだ。その舞台の演技者は夫婦の様だ。

 銀糸の青眼美女と、黒髪の緋眼の美男子。
 間違いなく、リンファの両親であろう。
 彼らは両手を縛られ、首に縄を掛けられ不安定な足場にたたされている。
 両手の縄はお互いと繋がっており、どちらかがバランスを崩したら二人とも首吊りになる設計だ。
 
 良い趣味だこと。

 何時間そこにたたされているのか、母親の方はふらふらとしてきている。
 もう少し、敵の情報を探りたかったがそんな暇は無さそうだな。取り敢えず、見えるは五人。
 リンファの両親を見てゲラゲラと野次を飛ばしているのを見る限り、ここに居るのはリーダーでは無さそうだな。

 まずは、遠くにいる人の順に始末するか。

 広場の外側で見張りをしているまだ若い男の背後にしのびより、口を押さえて喉仏辺りを切り裂く。血が飛び散るので背後に投げながらの行動である。そうすれば、悲鳴も返り血も浴びなくてすむ。
 
 次に、近い所に居るのはお酒を手に持って騒ぐ二人組。

 こいつらなら、寝てても怪しまれないな。

 そう考えて、背後の影にしゃがみこむ形で近寄ると二人同時に手刀を入れて地面に横たえる。一応証言するやつらは必要だしね。

 あと、残りの二人はリンファの両親の足場に茶々を入れて騒いでいた。うん。奴等は殺す。

  足首に隠してある小型のナイフを三本取りだし、投げつければ二人の敵の足と両親の間に繋がる縄を切っていた。

 痛みに悲鳴を上げてこちらを見たときにはもう遅い。

 空を舞い、一人の首を切る。そこから出るおびただしい量の血はもう一人の顔にビシャビシャてかかり目潰しとなる。
 そうして遮られた視界を利用して近づき、首を折ってやる。鈍い音がしてその者の身体から力が抜けて崩れ落ちた。

 うむ、取り敢えず両親さんを助けるか。

 トテトテと広場にいる村人達が唖然としているなか歩き、まずは銀糸の美女の首もとの縄を切る。美女はよろけて落ちてきたので受け止めた。やっぱりリンファと顔立ちが似てる。

  地面に労る様に下ろすと、次に美男子の元に行く。その途中背後から破裂音が聞こえてきた。こちらに向かってきているそれをワイヤーで弾けば、足元に鉄の弾が落ちてきた。へぇ、銃なんてあるんだ。
 ワイヤーで美男子の首の縄を切り、背後を振り向く。
 そこに居たのは奴隷達の中に紛れている数人の奴隷商人。リーダーらしき人も居た。

 
「何者だ!」

「しがないギルドの新人ですが?」

「嘘つけ。新人がこんなに躊躇なく人を殺せるか!」

「倒せるよ。ひー、ふー、みー……。これで全員ですよ。ラスさん。」

「……どっからその情報をつかんだんだよ。」


 俺に注目している奴隷商人達の背後から、リーダーらしき男に大剣を突き付けているラスさんがいた。
 その一瞬にできる隙に、奴隷の中の奴隷商人達をワイヤーで縛りあげた。
 
 ラスさんがもう少し遅かったらリーダーさん殺れたのにな。残念。






※※※※※※※※※※※※※※※※


 奴隷商人リーダー視点



 何なんだ、何なんだ!

 珍しい魔神族の娘が居るという村に奴隷狩りに来たらその娘に逃げられて、両親を使って遊んでたら戻るかと思いきや来たのは化け物だった。

 いつの間にか、娘の両親の元にいた化け物は躊躇なく人を殺して行く。むしろ手慣れた雰囲気で殺していく様はぞっとする。
 化け物は娘の両親を助けるためにこちらに背を向けていた。倒すならいまだ!

 裏の市場で手にいれた銃をうつ。
 目にも留まらぬ銃弾が化け物に当たり鮮血を散らせる、そう想像していたのに。化け物の回りで煌めく何かが銃弾を弾く。

 こいつは本当に何なんだよ!

 口元から疑問が出て奴と目線があった。やばいっ、殺される。
 
 しかし、オレは生きていた。世界を救った勇者のラスのお陰で。



 




 
 
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