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一週間後
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身体の自由も効くようになり、城の美味しく栄養たっぷりなご飯のお陰で、いくらか肉付きも良くなってきた様に思える。
相変わらず、私の知る情報を紙に書いて、イェシル殿下がそれを、どこかに持っていく。そんな日常を過ごしていたなかで、あの女の行動も教えてくれた。
あの女は、クェイル・テンペスターという名前なのだけど、獣人の国と近いテンペストという人間の国一つである王国の第2王女だ。
クェイルは、昔から自分が中心じゃないと気にくわない性質で争い事、金や宝石が大好きな女。
今は、小さな人間の村で文句を言いながらも、従者兼護衛兵士と淫らな生活を楽しんでいるとのこと。
体調が回復してきた私はそろそろと本格的な復讐準備をしようと思っている。
復讐場所はテンペスト国のお城。
あの女より先に着いて迎え撃つ準備をしないと。
そろそろ、色んな試供品できてきてるかしら。
あ、でもその前に
ちらりと毎日の様に私の部屋で寛いでいるもとい、サボっているフィシゴに視線を向ける。
本人曰く、ハイエナの獣人娘にしか立たっコホン…興味ないそうで、イェシル殿下からの命令により私の護衛として居たり居なかったりしている。
イェシル殿下のお目付け役は良いのか聞いたときは、『あの人、姐さんに良いとこ見せようと張り切っているんで大丈夫っす。』とのこと。
しかも、あの時に一番騒いでいた宰相が監視の如く張り付いているとも言っていた。
フィシゴが私の視線に気が付いて、こちらを見てきた。
耳がピクピクと動いて何のようと先を促している。耳が良いからか、近くには来ない。
「王様に謁見をお願いすべきですよね。」
「あぁ、そういえば会って無かったすね。」
「この国にいるのだし、弟の一応は嫁だし挨拶すべきなんだけど。」
本心を言えば、本来の嫁である姫では無いし、多少マシになったとはいえ、肌も髪もボロボロな私、謁見の為の服も無いのだからあまり会いたくはない。
「イェシル殿下に相談したらどうっすか?」
「相談。」
「呼んでくるんで。」
「あっ、まっ…。」
待ってくれの言葉も言わせないで行かれてしまった。
だけど、のばしのばししているのも何だし、これくらいの方が良いのかも。
謁見するにしてもしなくても、ずっと寝間着のままな訳にはいかないし、服はせめて二枚だけ欲しい。
イェシル殿下の関係で養生させて貰っているのにもきっと税金だろうしなぁ。
コンコン…
「はい。」
「謁見するぞ。」
入って来たのはイェシル殿下で、いきなり本題を呟くと部屋に備え付けてあるクローゼットを開いた。
毒に魘されて目覚めてから、何も無いのに勿体無いなと思っていたのになかには、もっさりとカジュアルからフォーマル、ドレスまで入っていた。
え、いついれたの?
というかサイズ…。
「とりあえずはおとなしめのドレスだな。色はグレーで…。」
イェシル殿下はぽいぽいと、クローゼットから衣装を投げてくる。
フレアの入ったおとなしめの青みグレーのドレスに、同色の靴。
消えなかった手のひらの傷を隠す為の黒の手袋。
次に宝石を選び出したところで、初めて見る男が選んだ宝石を首を振って戻させていた。
「ダメダメね。それは彼女の情熱に合わない。彼女の瞳に燻る炎を示すには赤いアルマンディンガーネットをオススメするわ。」
「彼は、イェシル殿下の友人のアルファべ侯爵っす。」
「友人じゃねぇよ。」
「悲しいわね。君から連絡をくれたから飛んできたのに。」
「ちなみにおねぇっす。」
うん、なんか、最後の言葉に全てが持っていかれたわ。
「うふ。初めましてイェシルの愛しの君。私はリドリー・アルファべよ。リドリーと呼んで。」
見た目が、ハニーブロンドの美丈夫な男の方が、女の口調だと違和感を感じるかと思っていたが、自然と優しい仕草が多くて、何も感じない。
自信を持っているのか堂々としていて、美しくも感じる。
リドリーさんが散らばった服を回収して、横に避ける。
そして、ビシッとイェシル殿下の方を向くと、フィシゴと共に捕まえてドアに向かって行った。
「さあ、レディの変身の時間は野郎共は退散よ。」
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