この記憶、復讐に使います。

SHIN

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一週間後②

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 リドリーさんやイェシル殿下が出て行ったあと、侍女が数名入ってきて、お風呂やら着付けやらを行ってくれた。
 彼女達はリドリーさんの弟子でもあるみたいで、リドリーさんの偉業を最中に聞くことになった。


 リドリーさんは、本名では無いらしいが今はこの名前が世界で美の追求者として有名になっているらしい。
 それこそ、人間の国のから獣人の国に最果ての国まで知らない人がいないという人物らしい。
 彼女?が買う化粧品は瞬く間に売れ、宝石を誉めれば産地が盛大に盛り上がるのだとか。
 前世のインフルエンサーみたいな者かしら。

 私はそんな娯楽を知ることは無かったから、初めて知ったといえば侍女達はこれから知れば良いわと言ってくれた。

 そんな美のカリスマリドリーさんが、最後の仕上げをしに戻ってきた。

 イェシル殿下とフィシゴは部屋の外で待たせているらしい。不敬罪とかは今さらだが、イェシル殿下の扱いが軽いきがする。



「まさか、あのイェシルが愉しそうにしているなんて初めて見たわ。」
「えっ?」
「動かないで。いっつも詰まらなそうでね。あ、私、学生時代の友人なのよ。フィシゴも。」

 だから、皆仲良さげなんですね。


「あんなに貴女に尽くす姿にこいつ誰って思ったわ。」
「尽くす?」
「そう、貴女を気に掛けてるわ。」


 こんな話を聞いてしまうととても申し訳なく感じてしまう。
 私は、カインの為に利用しているのだから。


「はい、リップを塗るわよ。」


 少しだけきつめの赤いリップが塗られ、鏡を差し出された。手に取り、覗き込むとそこにはとても自分とは思えない少女が映っていた。

 黒髪はまとめられ、大きな蝶が飾られていて、青みグレーのドレスに映える唇の赤と小降りな赤い石のネックレス。

 今まで一応は侍女として生きてきたので分かる。

 これは下手に動いてはダメな奴だ。

 固まってしまった私を一笑して、リドリーさんは扉の方に歩きだし、開いて待っているだろう人を呼び出した。


「服なんて着てなんぼよ。イェシル、出来たわよ。」
「上出来。んじゃ行くぞ。」
「まっ、待って。」

 
 私の姿をまじまじとみた後に、満足げに笑みを浮かべると、早速とばかりに呼ばれた。
 ドレスは足を全て隠すようなものではないため、裾を踏むことはないだろうが、フレアの部分が指輪に引っ掛からないか心配だ。

 ゆっくりと、イェシル殿下の元に向かい、歩く。

 しばらくあるいていなかったが、歩きがおぼつかないというほどではなくて、少し安心する。


「そんなんじゃ、日が暮れる。」
「え、きゃあ。」
「イェシルってば大胆。」


 イェシル殿下のところまで来たら、いきなり抱き上げられた。いわゆるお姫様抱っこだ。
 顔面に熱が集まる前に、イェシル殿下は歩き出す。



 振動で私を怖がらせない為か、わりかしゆっくり歩いてくれる殿下が首を傾け何かを示す。

 おそるおそる、手を首に回せば、そうだ。と言うようにグルルと喉を鳴らした。


 謁見の場所はおそらくその名の通り謁見の部屋で行われるだろう。
 そこまでの距離がどのくらいか分からないがとても長く感じてしまう。そして、王子にこんなことをさせるなんて心象は大丈夫だろうか。


 全てがネガティブになっていくなか、ふと廊下から見える庭に、見知った後ろ姿を見た気がした。
 

「あり得ないわね。」
「もうすぐ着くぞ。」



 あの後ろ姿はあの人じゃない。
 
イェシル殿下の言葉で、頭のもやもやを一掃して気合いを入れた。
 もう、どうとにもなれという気持ちに切り替えて、おそらくあそこだろうという目の引く豪華な扉に視線を送る。

 兵士が二人程左右対象に並び、私達を視界に捕らえたあと、一瞬だけイェシル殿下に嘲るような視線を送る。
 すぐに、視線は外されて扉をノックして中の人に我等がきたことを知らせているようだった。


「殿下とその花嫁がお着きになられました。」
「うむ、入れ。」


 扉が兵士によって開かれる。
 
 

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