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七色の贈り物
エルの頼みを聞いてから1ヶ月が経ちました。
1ヶ月の間に変わったことは2つ。
1つは正式にドランとの婚約解消がなり、賠償金百万フレアをドランのポケットマネーから貰えた事。
契約はどうにかまとめられ、公爵の領地の一部を借りる代わりに安価に塩を提供するということになったようだ。
借りた領地はその土地でしか出来ないフルーツを作ってくれている様で、こちらから人手を出すのも嫌ではない利点があります。
フルーツが楽しみです。
ちなみに、ドランとアイリスは公爵とその夫人に認められず色々と無理難題を言われているようです。
2つ目は私の商売の事。
母がさっそくお茶会や夜会でネックレスを付けて行ってくださった様で、あのネックレスは何処で売ってるのかと話題になりました。
初めは口コミや知り合いを通じてのみ販売し、段々と話題が大きくなった処で貴族から平民まで入れる雑貨屋に卸しました。
その際エルの助言で珍しい石であると伝えて少しずつ卸して見ると希少価値が上がったらしく、卸したら即座に完売になるほどです。
私が卸す店を平民も入れるような雑貨屋にしたのは商品を色んな人に見てもらいたいからです。そのため琥珀にはランクを付けています。色のある花を封じたものは最も希少、色のない花の入った物は希少、透明感のあるなにも入っていないのはちょい希少、不純物や色の悪いものは石自体は希少だけと粗悪品というように。
主に平民は粗悪品の物を買って行きますが、たまにプロポーズの為にちょい希少や希少を買う方も居ます。どうやら父と母がお揃いの琥珀のアクセサリーをしていたのがやはり良かったみたい。
売り上げは上々で、週一で持っていった利益表を見て父もお手上げ状態です。最近では二月はいらなかったなと呟く始末。やったね。これで商人になれる。
ただ、あまりの忙しさに毎日がてんてこ舞いである。特にアクセサリーの土台作りは一つ一つ手作業で大変だ。そこに、エルが助言をしてくれた。
「お嬢、そろそろ小物作成を人に任せるべきじゃないかい?」
「そうね、琥珀は私しか創れないけど加工は誰かに任せたいわね。」
そんな会話がされて直ぐに向かったのは奴隷売りのお店。奴隷と言われて私は牢屋の中で光のない瞳をした人達が居るのを想像していた。
しかし、私の想像していた奴隷と違っていた。明るい店内に身綺麗な奴隷の首輪を着けた人々が優雅に歩いているのだ。
それにショックを受けながらも何処かほっとしていた。しかも、国から補助金が出ていて支援もされているらしく年に一度抜き打ち監査が入り、酷い奴隷売りは潰されていくらしい。
さらに監査員に不正が入らないように選ばれる監査員はランダムで何処が担当になるかも直前じゃないとわからないのだとか。
こうして奴隷もとい、3名の従業員をゲットした私は久々ののんびり出来る時間ができたのだ。
「エルに何か感謝を伝えたいのよね。いつも助けて貰ってるし。」
「それを本人の前で言いますか。」
「だって、本人に欲しいものを聞いた方がはやいでしょ?」
「(私が欲しいのは貴女……言えるわけ無いじゃないですか。)」
「そんなに悩まないでよ。」
「はあぁ、貴女に貰えるものなら何でも嬉しいですよ。」
嬉しそうだけと何処か複雑そうな表情でそう答えられ、私の胸の奥に何か暖かな物が灯った気がした。
それが何を意味するのか知っている私は今、顔を赤くしているかもしれない。そのままだと鼓動までなり始めそうで視線を反らし、部屋の中を見回す事で落ちつく事にした。
もしかしたら、私はエルが好きなのかもしれない。いや今の感じは好きな気持ちで間違いない。
どうしよう、どんな顔したらいいかしら。私って今までどんな顔して対応してた?
ひっひっふー。とりあえず落ち着こう。あれ、違う?
少しだけ落ちついたら、あるものが目にはいった。
それは幸運のお守り代わりにしていたもの。
それを手に取り水魔法で形を整えて、一部に穴を空ける。その穴に通すのは落ち着いたみどり色の刺繍糸で編んだ飾り紐。
「これをあげるわ。」
「琥珀?あれ?中に七色の……虫?」
「玉虫っていうの。私の前世で住んでいた地域で幸運のお守りとしてたの。 」
実は玉虫をこちらで見付けて、テンションが上がり思わず魔力が漏れてしまったのだ。そしたら偶然に琥珀が出来てしまったという、初めての琥珀でもある。
「良いの?」
「エルに持っていてもらいたいの。」
「ありがとう。大切にするよ。」
エルは七色の入った琥珀を大事に握りしめると飾り紐を首に通して、服のなかにしまう。
恐らく琥珀があるであろう場所に手を当て、慈愛に満ちた表情をしている。その姿はまるで一枚の絵のようで思わず見つめていた。
あーあ、やっぱり私はエルが好きみたい。
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