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関わる気はありません!
エルへの想いを気付いてから数日。変わらない日々を過ごしています。
いや、たまに指先が触れたりして照れたり、私の料理を美味しそうに食べる姿に愛しさを感じたり甘酸っぱい青春をしていますが、エルに自分の想いを伝えられずにいます。
そんなある日、私の元に少しだけ疲れた風のドランとアイリスが来ました。
確か二人は公爵と夫人に付き合うのを反対されていましたね。なんか、私のポジションを公爵の二人がやってくれているみたいです。
二人はいったい何の用なのかしら。
「お待たせいたしました。」
「久しいなユーリ。」
「今日は何用でございますか?」
客間に二人を通してもらい私は久々にドレスを身に纏い出迎えた。
二人はソファーに座り挨拶の際にも立ちもせずそのまま返された。アイリスにいたってはドランの腕に不安げにすがり付いているだけで挨拶もしない。
うむ、これじゃあ特に公爵夫人は気に入らないわね。
「実は俺の両親に口添えを頼みたいのだ。」
「嫌です。」
「そうか、やってくれるか……えっ。」
「嫌ですと言ったのですわ。」
「どうしてですか?元とはいえ愛していた婚約者の頼みですよ。」
初めて声を聞いたと思ったらアイリスは何を言っているのかしら。
確かに私とドランは婚約者でしたが、愛があったかと言えば答えはNO。
そう答えたら驚いた様に目を見開く二人。あら、私がドランを愛していたと思っていたのかしら。
「う、嘘よ!ドランを愛しているから公爵家に言って私達を邪魔しているんでしょ?」
「そんな事をする意味が分かりませんわ。」
「だって、貴女は悪役令嬢じゃない!」
おや、悪役令嬢なんてもしかして彼女も記憶持ちかしら?
それならもっと上手くやればいいのに。
つい、ため息をついてしまったらアイリスのきゃんきゃんがさらに増えた。
「よろしくて?」
「な、何よ。」
「私は悪役令嬢と呼ばれる行いはしておりません。」
「じゃあ、なんで皆認めてくれないのよ!」
「その態度じゃ誰も認めてくれる訳ない。」
アイリスが吼えるのを、ドランが止める前に聞きなれた声が聞こえた。
いつの間にかいたのかエルが客間に入ってきて私の斜め前に護るように立つ。思わずどきりとして嬉しく感じる。
ふと、エルの姿を見たドランが動きがとまり固まっているのが目にはいった。いつもの俺様はどうしたのでしょうか。
「ドラン、久し振りですね。」
「え、エルディオン殿下。お久し振りでごさいます。なっ、何故此処に……。」
「ユーリは私の愛しの者です。会いに来て何が悪い。」
え、ちょっ、エルがで、殿下?
し、しかも、私が愛しの者?
私の顔に熱が集まる。
やばい、とても嬉しいです。でも、殿下ということは次期国王?
いやいや、確か兄がいると聞いたな。じゃあ、次期公爵かしら。
私が混乱に陥っているのを知ってかクスリと笑うエルはとても格好いい。
「話を戻しましょう。アイリス嬢。」
「あ、はぁい。」
「夜会での時や先程の訪問時にしろ挨拶もなくドランにすがり付いているのみ。」
「それは、不安でぇ。」
「挨拶すら出来ないなど子供以下です。」
「なっ!」
エルの綺麗な顔を見てからアイリスは猫なで声で答えているときっぱりと子供以下だと言いきった事に言葉を失った。
ま、まあ、確かに私たちの年齢で挨拶の1つも出来ないとね。しかも、花売りなんだから度胸もあって良いのに。
「き、貴族達の挨拶が分からなくてぇ。」
「ドランと結婚する気なら教えて貰うなりするでしょう。公爵家に入る予定ならな。」
「公爵夫人が教えてくれないんですぅ。酷いと思いません?」
「ドランに教われば良いだけです。」
そういえばそうね。身分の差は今は考えないで、このままドランと結婚することが出来れば公爵家の一員になるのですものね。それこそ、貴族のマナーや挨拶の仕方などはあらかじめドランに教えて貰うなりするべきでしょう。
えっ、ドランてばアイリスに何も教えてないの。
あっ、そういえば小説なら私がマナーにいちゃもん付けて教えて貰うんだっけ?
「エルディオン殿下、そ、そろそろその辺で。」
「そもそも人の多い夜会で婚約解消しておいて私のユーリに何用です?」
「そ、それはユーリに両親へ口添えを頼んでもらう予定で。」
「何故ユーリがそんな事をしないといけないか理解できないし、貴方達のそれは頼む態度ではない。」
その通り。
私はすでに舞台を降りた者。今さら巻き込もうなんてしないで欲しいわ。しかも、頼む態度は最悪。だれも手は貸さないでしょうね。
エルの敵意の対象がドランに移るとアイリスは私を睨み付けてきた。
「あんた!ちゃんと悪役令嬢を演じなさいよ!」
「演じるもなにも私は私ですわよ。」
「あんたがやらないから……。」
「よろしくて?」
本当にきゃんきゃんうるさい娘ですね。
段々とイラついてきて、強めの口調で話しかけた。うん、ここはどことなく悪役令嬢チックね。苛める気はないけど。
どうでもいいけどこの娘、前世ではこの性格でやっていけてたのかしら。
「私がその悪役令嬢とやらでないと貴女は何も出来ないと?」
「そうよ。悪役令嬢のあんたがいちゃもんつけるから私は学ぶきっかけを得るんですもの。」
「甘えるのもいい加減にしなさい。」
「なによ!」
「学びたいなら自分から学べばいいでしょう?ここは一度きりの人生。物語でも何でもない決まったルートなんてものもないのだから自分から行動を起こさなくてどうするの。」
勝手に巻き込んで、悪役にしないでよ。
その想いを言葉に乗せてきつめに言えば、エルと話していたドランが驚愕の表情のまま私を見てきた。
エルはドランから離れて私を抱き締めて、目元を手で優しく拭ってくれた。
どうやら私はいつの間にか泣いていたようだ。
別に泣きたかった訳ではなく、つい感情が高まったのだ。
「申し訳ありませんが、エル以外はお帰り下さい。」
「あ、ああ。そうしよう。アイリス、帰るぞ。」
「……。分かりました。」
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