親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール

雨宮里玖

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二月・三月 親衛隊は承認していれば『推し』に選ばれたとき通知がくるルール

エンディング④ 3.

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「鳴宮……卒業式くらいは来いよ」

 吉良は鳴宮の身体にそっと身を寄せる。

「頼むから……。お前が来てくれないともう会えなくなるから……」

 吉良は鳴宮の唇に、そっとキスを返した。




「あっ……」

 鳴宮の唇から吐息が漏れた。鳴宮はキャップを上げ、呆然としている。

「吉良……今、俺に……」

 鳴宮は目をしばたかせている。

 そうだよ、鳴宮。俺はお前のファンで、親衛隊の一員で、お前のことが好きなんだと言いたいのに、吉良にはそれは叶わない。

 あと少し。卒業式さえ迎えてしまえば想いを伝えられるのに、その頃に鳴宮に会えるとは限らない。



「鳴宮。今日のライブすごくよかったよ。なんていうか、自分に歌われてるみたいでさ……。お前の歌声がいいからだよな。とっ、とにかく感動したんだ。何度も聴いてる歌のはずなのにな」

 想いは言葉にできなくても、鳴宮に精一杯伝えられただろうか。


「嘘だろ。ヤバい、吉良。俺どうしよう……心臓が破裂しそうだ。こんなことになるなんて信じられない」

 鳴宮は、自分の胸に手を当てて、肩を上下し呼吸をしている。

「そうだ! これ……。承認取り消ししたやつ……」

 鳴宮はスマホを取り出し、何かの操作をしている。そのあと、こちらに意味深な視線を送ってきた。

 吉良と鳴宮、ふたりのスマホがほぼ同時に震える。吉良がスマホのバナーを見たら、それは親衛隊サイトからの通知のようだった。




 隣に座る鳴宮がそっと吉良の手を握ってきた。鳴宮の手は冷たかった。見れば鳴宮が着ているものは、二月の夜にパーカーくらいで、コートのようなものは着ていない。ここまで走ってきた熱が冷めてしまうと鳴宮の服装では寒そうだ。

 吉良も鳴宮の手を握り返すと、鳴宮は吉良の手に指を絡ませてきた。


 ベンチに座ってふたり手を繋いだきり。寒い風が吹いて、吉良は身体を震わせた。

「なぁ、鳴宮。お前その格好じゃ寒いんじゃないのか?」

 吉良が鳴宮のほうを振り向いた途端、鳴宮に唇を奪われた。

 鳴宮は腕を吉良の首の後ろに回し、手にはスマホを握りしめたまま、吉良の身体を引き寄せる。

 ついばむようなキスを何度も繰り返したり、唇を重ねたまま、舌で吉良の唇を味わうように舐めたり、鳴宮のキスは全然止まない。

 
「なるみっ……だめっ、ここ、外だか……」

 吉良はキスの合間に鳴宮に抗う。人通りはほとんどないが、ここは危険だ。いつ鳴宮のファンが通りかかるかもわからないような場所なのに。

「うん。そうだね……」

 鳴宮は同意しながらも再びチュッと音を立てて口づける。

「今日は寮に帰らないで、俺の部屋に来ない? 俺、昨日から会場の隣のホテルに泊まってるんだ」
「は……?」
「何もしないから、ね? 吉良とふたりでゆっくり話がしたいだけ」

 たしかに今、鳴宮とは離れ難いけど……。

「お願い、吉良。今夜は吉良とずっと一緒にいたい」

 鳴宮は吉良を強く抱き締めてきた。

 その手は艶かしく、吉良の服の隙間から中に入ってくる。鳴宮の手が冷たくて、触れられて吉良は「ひぁっ……」と変な声が出てしまった。

「うぅん……吉良可愛い……。ね? ホテル行こ?」

 鳴宮の手に触られると、心拍数は上がるし妙に身体が熱をもってくる。


「鳴宮と話すだけ……?」
「うん。話をするだけ」

 鳴宮の顔を見てドキッとする。いつもの軽いノリの鳴宮じゃない。鳴宮は魅惑的で艶っぽい目をしている。鳴宮がこんな大人な顔をするのかとびっくりする。

「おいで」

 鳴宮に手を取られて吉良は立ち上がらされる。そのまま吉良は鳴宮に連行されていく。


 鳴宮。本当に話をするだけだよな。


 ——エンディング④  鳴宮Ver. 完。
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