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4.三年前の告白
「見たか! 仁井の奴、ざまあみろだ!」
車を運転しながら、富永はさっきからずっと嬉しそうだ。
「浮気してごめんって、謝ってたな! 俺には『浮気じゃなくて本気だ』とか言っておいて、女に振られた途端に態度変えやがって」
仁井は本当にご都合主義だ。藍羅を失い、急に一人になったもんだから寂しくなって自分から捨てた神乃にみっともなく縋りついたのだ。
「ああいう、浮気性のクソ男にはお灸を据えてやらないとな! あー! すげぇスッキリした」
「ありがとな、富永。俺もだよ。仁井に散々バカにされてイラついて、自信まで無くなってた。でも富永のお陰ですっかり忘れられそうだ」
俺をバカにして、捨てた罰だ。俺がお前にどれだけ尽くしてきたか、俺がいなくなって思い知れと思う。
そして神乃自身もこれで次の恋に進めそうだ。ひとり暮らし用の賃貸を探して新たな生活をスタートさせないとなと決意する。
「あ、あの……そうだ。神乃」
「ん?」
「お前さえ良かったら、その……俺とこのまま一緒に暮らさないか?」
「え?」
「神乃にとっては災難だっただろうけど、俺はお前と暮らした一週間、すげぇ楽しかったんだ」
車は富永の自宅マンションの駐車場に到着した。富永は車を定位置に駐車する。
車を停めた後、富永は助手席に座る神乃を真っ直ぐに見つめてきた。
その真剣な目にドキリとする。
俺も。
富永、俺も楽しかったよ——。
この一週間は神乃にとって最高の日々だった。
夜景の綺麗なタワーマンションの鍵を渡され、そこに帰るだけでセレブ気分だ。都内一等地のため、会社までの通勤時間も三分の一になり、二十分もあれば会社に到着する。
仕事をしながらの家事なので適当な時短料理にも関わらず、富永はいつも喜んで食べてくれて、「ありがとう」と欠かさず言ってくれる。
掃除や洗濯もふたりでする。仁井はこだわりが強くて、窓ガラスに指紋が付いていたり、洗濯が間に合わなかったりするとすぐに怒鳴られたが、富永は正反対だ。
「神乃のペースで家事をしてくれればいい」と言って、仕事が忙しくて疎かになってしまった家事は富永がやってくれている。
残業して帰宅したとき、仁井には「遅ぇんだよ! 腹減った。早く飯を作れ!」と怒られたが、富永は「仕事大変だったな」と神乃の肩を揉んでくれて、「今日は神乃の好きなトマトパスタにした」と夕食を目の前にズラリと並べてくれた。
比べてはいけないと思いつつも、つい、仁井と過ごした日々と比較してしまう。
富永とは中高一貫校からの付き合いで、親友のような親しい間柄だった。
ずっとそばにいて富永は立派な親友ヅラ。恋愛感情を抱いているような素振りなんて微塵もなかった奴が、大学を卒業して数年後、突然神乃に連絡を取り告白してきたのだ。それが三年前だ。
タイミングが最悪だと思った。今までの人生で神乃が告白されたのは仁井と富永のふたりだけだ。その時既に仁井の家に神乃は暮らし始めており、「関係をはっきりしてくれ」と神乃が煮え切らない態度の仁井に迫り、仁井が「恋人同士になろう」と言ってくれて、ふたり付き合う事になったその一週間後に富永は告白してきた。
まさかの告白にはっきり言って神乃の心は揺れに揺れた。何故なら神乃は学生時代ずっと富永のことを想っていたからだ。
でも富永はどう見てもノンケにしか見えなかった。これは脈がない、ノンケだけは恋愛対象にしてはいけないと自らの気持ちを封じ込め、社会人になり、やっと仁井という人を見つけ出した矢先の富永の告白だった。
受け入れたい。だが、今の恋人は裏切れない。
結果、神乃は富永の告白を断った。
あの時、仁井じゃなくて、富永と付き合えば良かったな——。
未来なんて予想できない。三年後にこっ酷く仁井に捨てられるなんてわかるはずもない。
薄暗い車の中で、神乃も富永に真摯に向き合うことにした。富永の優しさにこれ以上甘えてはいけない。
「ありがとう。でもお前に悪いよ。仁井にひと泡吹かせてやれただけで俺は満足だ。あ! でもあと少しだけここに俺を置いてくれないか? 部屋を探して出て行くまではさ」
ありがとう、富永。昔からお前の存在にどれだけ助けられたか。やっぱり恋人は良くない。いつか別れがくる。友達ならきっとそんなことはなくずっと付き合っていけるかもしれない。
「わかった。でも次の部屋は慌てて探すなよ。一年でも二年でも時間をかけていいからゆーっくり探せ!」
富永の優しい冗談に「そんなにかからねぇよっ」と神乃も笑った。
車を運転しながら、富永はさっきからずっと嬉しそうだ。
「浮気してごめんって、謝ってたな! 俺には『浮気じゃなくて本気だ』とか言っておいて、女に振られた途端に態度変えやがって」
仁井は本当にご都合主義だ。藍羅を失い、急に一人になったもんだから寂しくなって自分から捨てた神乃にみっともなく縋りついたのだ。
「ああいう、浮気性のクソ男にはお灸を据えてやらないとな! あー! すげぇスッキリした」
「ありがとな、富永。俺もだよ。仁井に散々バカにされてイラついて、自信まで無くなってた。でも富永のお陰ですっかり忘れられそうだ」
俺をバカにして、捨てた罰だ。俺がお前にどれだけ尽くしてきたか、俺がいなくなって思い知れと思う。
そして神乃自身もこれで次の恋に進めそうだ。ひとり暮らし用の賃貸を探して新たな生活をスタートさせないとなと決意する。
「あ、あの……そうだ。神乃」
「ん?」
「お前さえ良かったら、その……俺とこのまま一緒に暮らさないか?」
「え?」
「神乃にとっては災難だっただろうけど、俺はお前と暮らした一週間、すげぇ楽しかったんだ」
車は富永の自宅マンションの駐車場に到着した。富永は車を定位置に駐車する。
車を停めた後、富永は助手席に座る神乃を真っ直ぐに見つめてきた。
その真剣な目にドキリとする。
俺も。
富永、俺も楽しかったよ——。
この一週間は神乃にとって最高の日々だった。
夜景の綺麗なタワーマンションの鍵を渡され、そこに帰るだけでセレブ気分だ。都内一等地のため、会社までの通勤時間も三分の一になり、二十分もあれば会社に到着する。
仕事をしながらの家事なので適当な時短料理にも関わらず、富永はいつも喜んで食べてくれて、「ありがとう」と欠かさず言ってくれる。
掃除や洗濯もふたりでする。仁井はこだわりが強くて、窓ガラスに指紋が付いていたり、洗濯が間に合わなかったりするとすぐに怒鳴られたが、富永は正反対だ。
「神乃のペースで家事をしてくれればいい」と言って、仕事が忙しくて疎かになってしまった家事は富永がやってくれている。
残業して帰宅したとき、仁井には「遅ぇんだよ! 腹減った。早く飯を作れ!」と怒られたが、富永は「仕事大変だったな」と神乃の肩を揉んでくれて、「今日は神乃の好きなトマトパスタにした」と夕食を目の前にズラリと並べてくれた。
比べてはいけないと思いつつも、つい、仁井と過ごした日々と比較してしまう。
富永とは中高一貫校からの付き合いで、親友のような親しい間柄だった。
ずっとそばにいて富永は立派な親友ヅラ。恋愛感情を抱いているような素振りなんて微塵もなかった奴が、大学を卒業して数年後、突然神乃に連絡を取り告白してきたのだ。それが三年前だ。
タイミングが最悪だと思った。今までの人生で神乃が告白されたのは仁井と富永のふたりだけだ。その時既に仁井の家に神乃は暮らし始めており、「関係をはっきりしてくれ」と神乃が煮え切らない態度の仁井に迫り、仁井が「恋人同士になろう」と言ってくれて、ふたり付き合う事になったその一週間後に富永は告白してきた。
まさかの告白にはっきり言って神乃の心は揺れに揺れた。何故なら神乃は学生時代ずっと富永のことを想っていたからだ。
でも富永はどう見てもノンケにしか見えなかった。これは脈がない、ノンケだけは恋愛対象にしてはいけないと自らの気持ちを封じ込め、社会人になり、やっと仁井という人を見つけ出した矢先の富永の告白だった。
受け入れたい。だが、今の恋人は裏切れない。
結果、神乃は富永の告白を断った。
あの時、仁井じゃなくて、富永と付き合えば良かったな——。
未来なんて予想できない。三年後にこっ酷く仁井に捨てられるなんてわかるはずもない。
薄暗い車の中で、神乃も富永に真摯に向き合うことにした。富永の優しさにこれ以上甘えてはいけない。
「ありがとう。でもお前に悪いよ。仁井にひと泡吹かせてやれただけで俺は満足だ。あ! でもあと少しだけここに俺を置いてくれないか? 部屋を探して出て行くまではさ」
ありがとう、富永。昔からお前の存在にどれだけ助けられたか。やっぱり恋人は良くない。いつか別れがくる。友達ならきっとそんなことはなくずっと付き合っていけるかもしれない。
「わかった。でも次の部屋は慌てて探すなよ。一年でも二年でも時間をかけていいからゆーっくり探せ!」
富永の優しい冗談に「そんなにかからねぇよっ」と神乃も笑った。
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