恋人にバカにされて捨てられたのでイケメン社長と仕返しして更に付き合うことになった話

雨宮里玖

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10.藍羅の計略 〜富永side〜

 今日は富永は早く帰宅することができた。
 いつも神乃に家事をしてもらってばかりだから、今日こそは先に帰って富永が夕食の準備から何から何まで家のことをやりたいと思っていた。



 マンションのエントランス前に見覚えのある女がいた。藍羅だった。

「あっ、とみーがいた!」

 とみー=富永のことらしい。

「なんでここを知ってる?」
「にーくんから教えてもらったんだよ。とみーはこのマンションに住んでるって」

 仁井の野郎、人の個人情報を面倒くさい女に簡単に喋りやがって!

「仁井と別れた分の金は渡しただろ? これ以上俺に構うな」
「ねぇ、かみのんのエッチな動画、見たい? にーくんからゲットしたんだけど」

 藍羅は意味深な笑みを浮かべ、スマホを操作し始めた。
 この女は何を言い出すんだ……?
 かみのん=神乃のエッチな動画……?
 そんなものを、仁井から……?
 ここは外だ。こんなところで神乃のそんなものを再生して晒すわけにはいかない。

「やめろ!」

 慌てて藍羅スマホを奪い取り、電源を切った。それでもまだ富永の心臓はバクバクしている。

「ねぇ、かみのんのエッチな動画、いくらで買ってくれる?」

 藍羅は口角を上げ、ニヤリのと微笑を浮かべた。
 とにかく、こんなところでは話せない。

「藍羅、お前に聞きたいことがある。俺の家で話そう」
「うん、いいよー」

 富永は藍羅を家に上げるしかなかった。




「これ何ー?」

 藍羅は富永の部屋に置いてあったルイヴィトンの小さな紙袋を勝手に手に取った。

「男物の財布だ」
「えー。なんだ男物かぁ。あ、かみのんにプレゼントするの?」
「したかったけど『要らない』って断られた」

 富永としては、神乃が愛用していた仁井とお揃いの黒の皮財布を一刻も早く捨てて欲しいという気持ちから神乃に無理矢理プレゼントしたかったのだが、それは神乃に拒まれて叶わなかった。

 クッソっ! まだ仁井の事が忘れられないのかよ、とあのときは悔しくなったが、別れて間もない神乃にとってそれは酷な話だろうと思い直した。

「俺から貰う財布よりも、仁井とお揃いの財布の方がいいってことだよな……」

 神乃に振られた後、偶然仁井と神乃を街中で見かけたことがあった。その時二人は革製品専門店でお揃いの財布を買っていた。その時の仲睦まじい姿が今でも目に焼き付いて離れない。

「確かに。かみのん、にーくんのことめっちゃ好きだったかもね。にーくん自分で言ってたもん。俺の恋人は俺にベタ惚れだって。にーくんが言えば何でもしてくれるって。迎えに来いって言えば夜中でも車出して迎えに来るし、食べたいメニューを言えば何でも作ってくれるんだって。夜のプレイもNG無しらしいよ? 私が嫌がったら、かみのんにお願いするからやらなくていいって言われたよ」
「藍羅! やめてくれ!」

 二人は三年間も同棲していたんだから、その間どんなことがあったか想像はできる。でもその事実に全て目を背けたい。そう思っているのに赤裸々に言われてしまうとものすごく辛い。

「とみーはかみのんに片想いしてるんだね。だからかみのんのことでこんなに必死になるんでしょ?」
「そうだ。だから変な動画はこの世から完全に抹殺しろ」
「いくら出してくれるの? 私もヴィトンが欲しいんだけど」
「ど、動画の内容による……早く見せろっ」

 神乃のそんな姿なんて可哀想で見たくない。でも、内容の確認はしなければならない。

「とみー、エッチだね!」
「そういうことじゃないっ!」
「えっとね、内容としては、目隠しされてるかみのんがお尻に大人のオモチャを突っ込まれながらにーくんに意地悪されてアンアン言ってる感じ?」
「…………っ!!」

 衝撃的すぎる。仁井のためにそこまでするか?! しかも目隠しされていたとしたら神乃は動画を撮られていたことに気がついていないかもしれない。

「観る? かみのん可哀想じゃない? そんなのとみーに見られたら」
「仕方がない。お前のハッタリかもしれないだろ?」
「……バレた? 無いよ、そんな動画」
「はぁ?!」

 こいつ、あっさりと認めやがって……。

「正確にはなくなった。私が消したの。にーくんが、私にこれと同じことをしてもいいかって訊いてきて、かみのんの動画を見せてきたんだ」
「それで?!」
「私はこれは無いなと思って、にーくんにはこんなことしたくないって断ったし、その時かみのんの動画もスマホから削除してやったの。あれはさすがにヤバくない? と思って」
「そうか……」
「にーくんは『スマホにしか動画が入ってないんだぞ!』『これしか無かったのに!』ってめっちゃ怒ってたから、他のところには動画は保存してないんじゃないかな。どう? 私偉いでしょ?」
「まあな……」

 藍羅の言うことが本当ならば、かなりのファインプレーだ。世の中には別れたあと、そういういかがわしい動画を使って元恋人に復讐するリベンジポルノなるものがある。
 もし動画が仁井の手元にあったら、それを使って神乃が嫌がらせを受けた可能性だってあった。

「だから、ね? 私にもヴィトン、買ってくれる?」

 藍羅が富永の腕にねだるようにしがみついてきた。

 動画が本当に存在していたかどうかはわからない。だが、仁井ならそういうこともやりかねないと思う。
 藍羅が嘘をついている可能性もある。証拠がないと突っぱねて、追い返すか……。
 神乃のためには事を穏便に終わらせて金輪際こいつとは縁を切るべきた。

「わかった。ヴィトンだな」
「ホント? 本当に買ってくれるの?!」
「うるさいな。でももうこれで最後だ」
「でも今回は買ってくれるんでしょ? やったーっ! ありがと!」
「藍羅、離れろよっ」

 富永は振り払おうとするが、藍羅は離れない。

「やーだ!」

 藍羅は富永の腕に頬を擦り寄せてきた。思い切り振り払ってしまいたいが、万が一どこかにぶつかって怪我でもされたら困るので強くは拒絶できない。

「ねぇ、私たち付き合おうよ」
「ありえない。お前とは今日で終わりだっ」
「えー。なんなの、とみーもにーくんもかみのんかみのんってさ。かみのんばっかりモテてずるい!」
「仁井も神乃がいいって言ってるのか?!」

 たしかに仁井は神乃に未練がありそうだった。わざわざ富永のマンションにまで追っかけてきたのだから。

「そうだよ、かみのん居なくなってから、どれだけかみのんが尽くしてくれたかやっと気がついたんだって。今度こそやり直したいとか言ってたよ」
「お前はまだ仁井と連絡とってんのか?」
「うん。だって同じ職場だし」

 なんて奴だ。職場の同僚と浮気をして、別れてからも普通に接せられるものなのか?!
 富永としては理解に苦しむ。
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