恋人にバカにされて捨てられたのでイケメン社長と仕返しして更に付き合うことになった話

雨宮里玖

文字の大きさ
12 / 44

12.二度と繰り返さない

神乃side

 ファミレスで何度もドリンクバーをお代わりしながら長時間粘っていて、さすがに店員の視線もチクチク刺さるようになってきた。
 早く行き先を見つけなければと、神乃はスマホで検索しながら最適な行き場所を探していた。



「神乃」

 不意に名前を呼ばれて顔を上げる。そこには富永が立っていた。

「え? 何でここに……」
「忘れ物だ」

 富永はルイヴィトンの紙袋を神乃の目の前に置いた。

「これ、俺のじゃない」
「受け取れ。使え。要らないならお前が捨てろ」

 富永。あれから何かあったのか……? 普段と少し雰囲気が違うようにみえる。


「ごめん。迎えに来るのが遅くなった。俺と一緒に帰ろう」

 富永は神乃のスーツケースと伝票を持って店を出ようとする。

「待てよ。どうした? 何の真似だよっ」

 神乃の言葉が届かないのか、富永はズカズカと進み、会計を済ませて店の外へ行ってしまう。スーツケースを取られた神乃も仕方なく富永についていく。
 店を出ると、富永は神乃の手を掴み、自宅マンションへと向かって行く。

「おいっ! 富永っ!」

 富永はこんな強引な奴じゃない。どうしたのかわからないまま連行される。

「俺は同じ間違いを二度も繰り返すところだった。そして、今度こそお前を離さない。これ以上待つなんて俺は耐えられない」

 間違い……?
 二度目……?

 よくわからないが、とりあえずは富永の指示に従う。
 やがて富永の自宅に戻ってきた。ずっと富永は手を離してくれなかったが、ここまできてやっと解放された。

 玄関にはもうadidasのスタンスミスはない。


「もう帰ったのか……」

 ぽつり神乃が呟いた途端、富永が振り向き、神乃の両肩を持って壁にドンっと押し当ててきた。

「やっぱりそうだ。神乃、お前は俺と藍羅が一緒にいるところを見たんだな。それで優しいお前は変に気を利かせてここを出て行った。行く当てがなくてとりあえずファミレスにしか居場所がないくせに」

 普段の優しい富永じゃない。獣みたいに鋭い目つきで神乃のことを見透かそうとしているみたいだ。

「……そうだよ。でっ、でも富永は悪くない。俺が悪かったんだ。最初から言ってくれよ、彼女がいるならいるで。俺が使っていた部屋も彼女が泊まりに来たときに使ってたのか……? おかしいなと思ってたんだ。ゲストルームなんてわざわざ——」
「あの部屋は三年前からずっと神乃のための部屋だ」
「はぁっ……?」
「三年前の俺は傲慢だった。神乃に振られるなんて思いもしなかったから、先に神乃と暮らすために神乃の部屋を用意してたんだ。結果、振られて三年間誰も使わないままだったがな」

 あのとき告白してきた富永が、そんな用意までしていたとは知らなかった。


「俺と藍羅はなんでもない。俺と仁井を一緒にするなっ」
「一緒になんてしてない。仁井は浮気だったけど、富永、お前は俺の恋人じゃないんだから、藍羅を家にあげてもいいし何をしたっていいんだよっ」

 富永は仁井とは違う。立場も、性格も全然違う。

「藍羅は俺の恋人じゃない!」
「えっ……? じゃあなんで家に……」
「話せば長くなるし、神乃は知らなくていい。俺があいつを家にあげた理由は、神乃、お前を守りたかったからだ。断じて藍羅は恋人なんかじゃない!」
「俺のため……?」

 富永はいったい何をしていたんだ……?



「神乃」

 富永はやけに真っ直ぐに苦しそうな視線を向けてくる。

「正直に告白する。昔から俺の気持ちは変わってない。ずっとお前を好きなままなんだ。この前は恋人のフリだったけど、神乃、俺はお前と本気で付き合いたい。ずっと一緒にいたいんだよ」

 驚き過ぎて言葉にならない。富永が未だ神乃を想ってくれていたこと、そして付き合いたいとまで言ってくれたこと。そのどちらも信じ難いくらいの事実だ。

「……ごめん、急にこんな事を言って困らせて……。でもやっと仁井と別れて神乃がフリーになったんだから、他の奴にとられる前に今度こそ早く気持ちを伝えなきゃいけない。三年前、俺はお前にもっと早く気持ちを伝えれば良かったって死ぬほど後悔した。同じ間違いを繰り返すわけにはいかないんだよ!」

 三年前。あと少しだけ早く、仁井と付き合うより前に富永の想いを知っていたら、神乃は富永を選んでいただろう。

「富永。さ、三年も前の話だぞ?!」

 普通振られたのに三年も諦めない奴なんていないだろと思う。
 しかも富永ほどの男ならその間どれだけ言い寄られたことか。

「神乃、違う。驚くなよ。俺はお前の事を中学の頃から好きだから、三年どころじゃないんだ。軽く十年以上片想いしてる」
「えっ……」

 富永……。お前、一途すぎる……。
 学生時代、富永の事をずっと好きだった神乃も20代になり、さすがに諦めて別の人と付き合うことを考えた。
 それなのに富永はずっと変わらず想い続けていたのか……?

「仕事が忙しくて恋愛にかまけてる時間は無かった時期もある。でもいつか仕事が落ち着いたらなんて思ってたら遅すぎた。だからタイミングなんて待ってちゃ駄目なんだ。お前の気持ちはまだ仁井にあるかもしれないし、整理もつかない状態かもしれない。でも今すぐ伝えたい。俺はお前が好きなんだ。頼むから俺のものになってくれ。俺のそばにいてくれ!」

 信じられない。
 ちょっと前まで仁井に捨てられて絶望してたのに、まさかこんなことになるなんて。
感想 39

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。