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12.二度と繰り返さない
神乃side
ファミレスで何度もドリンクバーをお代わりしながら長時間粘っていて、さすがに店員の視線もチクチク刺さるようになってきた。
早く行き先を見つけなければと、神乃はスマホで検索しながら最適な行き場所を探していた。
「神乃」
不意に名前を呼ばれて顔を上げる。そこには富永が立っていた。
「え? 何でここに……」
「忘れ物だ」
富永はルイヴィトンの紙袋を神乃の目の前に置いた。
「これ、俺のじゃない」
「受け取れ。使え。要らないならお前が捨てろ」
富永。あれから何かあったのか……? 普段と少し雰囲気が違うようにみえる。
「ごめん。迎えに来るのが遅くなった。俺と一緒に帰ろう」
富永は神乃のスーツケースと伝票を持って店を出ようとする。
「待てよ。どうした? 何の真似だよっ」
神乃の言葉が届かないのか、富永はズカズカと進み、会計を済ませて店の外へ行ってしまう。スーツケースを取られた神乃も仕方なく富永についていく。
店を出ると、富永は神乃の手を掴み、自宅マンションへと向かって行く。
「おいっ! 富永っ!」
富永はこんな強引な奴じゃない。どうしたのかわからないまま連行される。
「俺は同じ間違いを二度も繰り返すところだった。そして、今度こそお前を離さない。これ以上待つなんて俺は耐えられない」
間違い……?
二度目……?
よくわからないが、とりあえずは富永の指示に従う。
やがて富永の自宅に戻ってきた。ずっと富永は手を離してくれなかったが、ここまできてやっと解放された。
玄関にはもうadidasのスタンスミスはない。
「もう帰ったのか……」
ぽつり神乃が呟いた途端、富永が振り向き、神乃の両肩を持って壁にドンっと押し当ててきた。
「やっぱりそうだ。神乃、お前は俺と藍羅が一緒にいるところを見たんだな。それで優しいお前は変に気を利かせてここを出て行った。行く当てがなくてとりあえずファミレスにしか居場所がないくせに」
普段の優しい富永じゃない。獣みたいに鋭い目つきで神乃のことを見透かそうとしているみたいだ。
「……そうだよ。でっ、でも富永は悪くない。俺が悪かったんだ。最初から言ってくれよ、彼女がいるならいるで。俺が使っていた部屋も彼女が泊まりに来たときに使ってたのか……? おかしいなと思ってたんだ。ゲストルームなんてわざわざ——」
「あの部屋は三年前からずっと神乃のための部屋だ」
「はぁっ……?」
「三年前の俺は傲慢だった。神乃に振られるなんて思いもしなかったから、先に神乃と暮らすために神乃の部屋を用意してたんだ。結果、振られて三年間誰も使わないままだったがな」
あのとき告白してきた富永が、そんな用意までしていたとは知らなかった。
「俺と藍羅はなんでもない。俺と仁井を一緒にするなっ」
「一緒になんてしてない。仁井は浮気だったけど、富永、お前は俺の恋人じゃないんだから、藍羅を家にあげてもいいし何をしたっていいんだよっ」
富永は仁井とは違う。立場も、性格も全然違う。
「藍羅は俺の恋人じゃない!」
「えっ……? じゃあなんで家に……」
「話せば長くなるし、神乃は知らなくていい。俺があいつを家にあげた理由は、神乃、お前を守りたかったからだ。断じて藍羅は恋人なんかじゃない!」
「俺のため……?」
富永はいったい何をしていたんだ……?
「神乃」
富永はやけに真っ直ぐに苦しそうな視線を向けてくる。
「正直に告白する。昔から俺の気持ちは変わってない。ずっとお前を好きなままなんだ。この前は恋人のフリだったけど、神乃、俺はお前と本気で付き合いたい。ずっと一緒にいたいんだよ」
驚き過ぎて言葉にならない。富永が未だ神乃を想ってくれていたこと、そして付き合いたいとまで言ってくれたこと。そのどちらも信じ難いくらいの事実だ。
「……ごめん、急にこんな事を言って困らせて……。でもやっと仁井と別れて神乃がフリーになったんだから、他の奴にとられる前に今度こそ早く気持ちを伝えなきゃいけない。三年前、俺はお前にもっと早く気持ちを伝えれば良かったって死ぬほど後悔した。同じ間違いを繰り返すわけにはいかないんだよ!」
三年前。あと少しだけ早く、仁井と付き合うより前に富永の想いを知っていたら、神乃は富永を選んでいただろう。
「富永。さ、三年も前の話だぞ?!」
普通振られたのに三年も諦めない奴なんていないだろと思う。
しかも富永ほどの男ならその間どれだけ言い寄られたことか。
「神乃、違う。驚くなよ。俺はお前の事を中学の頃から好きだから、三年どころじゃないんだ。軽く十年以上片想いしてる」
「えっ……」
富永……。お前、一途すぎる……。
学生時代、富永の事をずっと好きだった神乃も20代になり、さすがに諦めて別の人と付き合うことを考えた。
それなのに富永はずっと変わらず想い続けていたのか……?
「仕事が忙しくて恋愛にかまけてる時間は無かった時期もある。でもいつか仕事が落ち着いたらなんて思ってたら遅すぎた。だからタイミングなんて待ってちゃ駄目なんだ。お前の気持ちはまだ仁井にあるかもしれないし、整理もつかない状態かもしれない。でも今すぐ伝えたい。俺はお前が好きなんだ。頼むから俺のものになってくれ。俺のそばにいてくれ!」
信じられない。
ちょっと前まで仁井に捨てられて絶望してたのに、まさかこんなことになるなんて。
ファミレスで何度もドリンクバーをお代わりしながら長時間粘っていて、さすがに店員の視線もチクチク刺さるようになってきた。
早く行き先を見つけなければと、神乃はスマホで検索しながら最適な行き場所を探していた。
「神乃」
不意に名前を呼ばれて顔を上げる。そこには富永が立っていた。
「え? 何でここに……」
「忘れ物だ」
富永はルイヴィトンの紙袋を神乃の目の前に置いた。
「これ、俺のじゃない」
「受け取れ。使え。要らないならお前が捨てろ」
富永。あれから何かあったのか……? 普段と少し雰囲気が違うようにみえる。
「ごめん。迎えに来るのが遅くなった。俺と一緒に帰ろう」
富永は神乃のスーツケースと伝票を持って店を出ようとする。
「待てよ。どうした? 何の真似だよっ」
神乃の言葉が届かないのか、富永はズカズカと進み、会計を済ませて店の外へ行ってしまう。スーツケースを取られた神乃も仕方なく富永についていく。
店を出ると、富永は神乃の手を掴み、自宅マンションへと向かって行く。
「おいっ! 富永っ!」
富永はこんな強引な奴じゃない。どうしたのかわからないまま連行される。
「俺は同じ間違いを二度も繰り返すところだった。そして、今度こそお前を離さない。これ以上待つなんて俺は耐えられない」
間違い……?
二度目……?
よくわからないが、とりあえずは富永の指示に従う。
やがて富永の自宅に戻ってきた。ずっと富永は手を離してくれなかったが、ここまできてやっと解放された。
玄関にはもうadidasのスタンスミスはない。
「もう帰ったのか……」
ぽつり神乃が呟いた途端、富永が振り向き、神乃の両肩を持って壁にドンっと押し当ててきた。
「やっぱりそうだ。神乃、お前は俺と藍羅が一緒にいるところを見たんだな。それで優しいお前は変に気を利かせてここを出て行った。行く当てがなくてとりあえずファミレスにしか居場所がないくせに」
普段の優しい富永じゃない。獣みたいに鋭い目つきで神乃のことを見透かそうとしているみたいだ。
「……そうだよ。でっ、でも富永は悪くない。俺が悪かったんだ。最初から言ってくれよ、彼女がいるならいるで。俺が使っていた部屋も彼女が泊まりに来たときに使ってたのか……? おかしいなと思ってたんだ。ゲストルームなんてわざわざ——」
「あの部屋は三年前からずっと神乃のための部屋だ」
「はぁっ……?」
「三年前の俺は傲慢だった。神乃に振られるなんて思いもしなかったから、先に神乃と暮らすために神乃の部屋を用意してたんだ。結果、振られて三年間誰も使わないままだったがな」
あのとき告白してきた富永が、そんな用意までしていたとは知らなかった。
「俺と藍羅はなんでもない。俺と仁井を一緒にするなっ」
「一緒になんてしてない。仁井は浮気だったけど、富永、お前は俺の恋人じゃないんだから、藍羅を家にあげてもいいし何をしたっていいんだよっ」
富永は仁井とは違う。立場も、性格も全然違う。
「藍羅は俺の恋人じゃない!」
「えっ……? じゃあなんで家に……」
「話せば長くなるし、神乃は知らなくていい。俺があいつを家にあげた理由は、神乃、お前を守りたかったからだ。断じて藍羅は恋人なんかじゃない!」
「俺のため……?」
富永はいったい何をしていたんだ……?
「神乃」
富永はやけに真っ直ぐに苦しそうな視線を向けてくる。
「正直に告白する。昔から俺の気持ちは変わってない。ずっとお前を好きなままなんだ。この前は恋人のフリだったけど、神乃、俺はお前と本気で付き合いたい。ずっと一緒にいたいんだよ」
驚き過ぎて言葉にならない。富永が未だ神乃を想ってくれていたこと、そして付き合いたいとまで言ってくれたこと。そのどちらも信じ難いくらいの事実だ。
「……ごめん、急にこんな事を言って困らせて……。でもやっと仁井と別れて神乃がフリーになったんだから、他の奴にとられる前に今度こそ早く気持ちを伝えなきゃいけない。三年前、俺はお前にもっと早く気持ちを伝えれば良かったって死ぬほど後悔した。同じ間違いを繰り返すわけにはいかないんだよ!」
三年前。あと少しだけ早く、仁井と付き合うより前に富永の想いを知っていたら、神乃は富永を選んでいただろう。
「富永。さ、三年も前の話だぞ?!」
普通振られたのに三年も諦めない奴なんていないだろと思う。
しかも富永ほどの男ならその間どれだけ言い寄られたことか。
「神乃、違う。驚くなよ。俺はお前の事を中学の頃から好きだから、三年どころじゃないんだ。軽く十年以上片想いしてる」
「えっ……」
富永……。お前、一途すぎる……。
学生時代、富永の事をずっと好きだった神乃も20代になり、さすがに諦めて別の人と付き合うことを考えた。
それなのに富永はずっと変わらず想い続けていたのか……?
「仕事が忙しくて恋愛にかまけてる時間は無かった時期もある。でもいつか仕事が落ち着いたらなんて思ってたら遅すぎた。だからタイミングなんて待ってちゃ駄目なんだ。お前の気持ちはまだ仁井にあるかもしれないし、整理もつかない状態かもしれない。でも今すぐ伝えたい。俺はお前が好きなんだ。頼むから俺のものになってくれ。俺のそばにいてくれ!」
信じられない。
ちょっと前まで仁井に捨てられて絶望してたのに、まさかこんなことになるなんて。
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