21 / 44
21.いちょうの木の下で 〜富永side〜
「こんな料理食べたことないな」
神乃はしげしげと料理を眺めている。その姿が無邪気でとても愛らしい。
「これからはいろんなところへふたりで出かけような」
富永が微笑むと神乃は「うん。楽しみだ」と微笑み返してきた。
ああ。もうひとりじゃない。これからはどこに行くにも神乃とふたりで行こう。
買い物もふたり。旅行もふたり。趣味のキャンプだってソロキャンは終わりだ。近所のスーパーやコンビニも神乃と行けばそれだけでエンターテインメントになる。
こんなに楽しい毎日を過ごせているのは神乃がそばにいてくれるお陰だ。
「好きだよ、神乃」
心から溢れる気持ちを言葉にしたら、神乃が目をしばたかせて富永を見た。
「もぅ……! そういう不意打ちやめろよ……」
あ、神乃が照れて顔を手で覆ってしまった。
その姿も愛おしいと思ったが、これ以上好きを言葉にしたら神乃に怒られそうなので富永は口をつぐむことにした。
食事を終えたあと、外苑前のいちょう並木を神乃と歩くことにした。
いちょうがはらはらと舞い落ちて、並木の辺りは一面中いちょうの黄色で埋め尽くされている。
「うわぁ……テレビではみたことあるけど、初めて来たよ……」
神乃は一面いちょうの秋景色に目を奪われている。その無邪気な横側を眺めているだけで幸せな気持ちになる。こうして神乃の隣にいられるなんて最高だ。
この時期の外苑前は屋台も出ているし、いちょうを観るために人が多く集まっていて、かなりの混みようだ。
「神乃、はぐれたら大変だから」
富永は最もらしい理由をつけて、神乃の手を握った。
「あっ……あの、すっ、少しだけに……人が見てるから……」
神乃は明らかに動揺していたが、富永から離れようとはしなかった。少し照れたようにうつむきながらも富永の腕に身体を寄せてきた。
富永としてはたまらなく嬉しい。今すぐ神乃を抱き締めたくなったが、なんとか堪える。そんなことをしたらさすがに神乃に嫌がられるに決まっているからだ。
神乃が突然、富永のコートの袖をくいっと引いてきた。なにかあるのかと富永が神乃を振り返ると、こっちを見ていた神乃と目が合った。
「富永。大好き」
上目遣いの神乃にいきなり言われてドキッとした。
待ってくれ、可愛いが過ぎるぞ神乃!
「びっくりしたか? さ、さっきの不意打ちの仕返しだからなっ」
いやいや、仕返しって、言った本人の神乃が真っ赤になってるじゃないか。それって仕返しになっているのか……。
「わかったよ。俺も神乃が大好きだ。愛してるよ。ずっと一緒にいよう」
そう神乃に囁いて、頭をぽんぽんしたら、神乃はうつむいたままその場から動かなくなった。
「どうした?」
富永が神乃の顔を覗き込むと、神乃が涙ぐんでいる。これは大変だ!
富永は神乃をいちょうの木の陰に連れ込んで神乃を様子を伺うことにした。
「ごめん、富永……」
「いいよいいよいいよいいよ! 俺は大丈夫!大丈夫だから!」
神乃に嫌な思いをさせてしまったのかもしれない。友達としての付き合いは長いが、恋人として神乃とどう接していけばいいのかは未だ模索中だ。
神乃は嫌なことも嫌だと言わないタイプだから気持ちをちゃんと汲んでやらないといけなかったのに。
「お、俺……」
神乃が震える声で話し始めた。絶対に聞き逃してはならないと富永は耳をそばだてる。
「こんなに人から大事にされたの初めてで……でも俺には何もないから……」
神乃はさっと涙を拭き、富永に無理矢理笑ってみせる。
「ありがとう、富永……こんな俺でよかったらこれからもよろしく、お願いします……」
人前で神乃を抱き締めることだけはしてはいけないと自制していたが、タガが外れた。
「俺、神乃のこと一生大切にする」
あー、ついに神乃を抱き締めてしまった。でも抱き締めずにはいられない。五秒、いや十秒だけ。
「富永離せって!」
腕の中でジタバタする神乃を少しだけ抱き締めて、解放してやる。
「恥ずかしいからやめろって……」
予想通り神乃に怒られた。富永は『神乃が可愛いのがいけないんだ。俺は悪くない』と心の中で思いながら、「ごめん、もうしない」と神乃に心にもないことを言った。
神乃はしげしげと料理を眺めている。その姿が無邪気でとても愛らしい。
「これからはいろんなところへふたりで出かけような」
富永が微笑むと神乃は「うん。楽しみだ」と微笑み返してきた。
ああ。もうひとりじゃない。これからはどこに行くにも神乃とふたりで行こう。
買い物もふたり。旅行もふたり。趣味のキャンプだってソロキャンは終わりだ。近所のスーパーやコンビニも神乃と行けばそれだけでエンターテインメントになる。
こんなに楽しい毎日を過ごせているのは神乃がそばにいてくれるお陰だ。
「好きだよ、神乃」
心から溢れる気持ちを言葉にしたら、神乃が目をしばたかせて富永を見た。
「もぅ……! そういう不意打ちやめろよ……」
あ、神乃が照れて顔を手で覆ってしまった。
その姿も愛おしいと思ったが、これ以上好きを言葉にしたら神乃に怒られそうなので富永は口をつぐむことにした。
食事を終えたあと、外苑前のいちょう並木を神乃と歩くことにした。
いちょうがはらはらと舞い落ちて、並木の辺りは一面中いちょうの黄色で埋め尽くされている。
「うわぁ……テレビではみたことあるけど、初めて来たよ……」
神乃は一面いちょうの秋景色に目を奪われている。その無邪気な横側を眺めているだけで幸せな気持ちになる。こうして神乃の隣にいられるなんて最高だ。
この時期の外苑前は屋台も出ているし、いちょうを観るために人が多く集まっていて、かなりの混みようだ。
「神乃、はぐれたら大変だから」
富永は最もらしい理由をつけて、神乃の手を握った。
「あっ……あの、すっ、少しだけに……人が見てるから……」
神乃は明らかに動揺していたが、富永から離れようとはしなかった。少し照れたようにうつむきながらも富永の腕に身体を寄せてきた。
富永としてはたまらなく嬉しい。今すぐ神乃を抱き締めたくなったが、なんとか堪える。そんなことをしたらさすがに神乃に嫌がられるに決まっているからだ。
神乃が突然、富永のコートの袖をくいっと引いてきた。なにかあるのかと富永が神乃を振り返ると、こっちを見ていた神乃と目が合った。
「富永。大好き」
上目遣いの神乃にいきなり言われてドキッとした。
待ってくれ、可愛いが過ぎるぞ神乃!
「びっくりしたか? さ、さっきの不意打ちの仕返しだからなっ」
いやいや、仕返しって、言った本人の神乃が真っ赤になってるじゃないか。それって仕返しになっているのか……。
「わかったよ。俺も神乃が大好きだ。愛してるよ。ずっと一緒にいよう」
そう神乃に囁いて、頭をぽんぽんしたら、神乃はうつむいたままその場から動かなくなった。
「どうした?」
富永が神乃の顔を覗き込むと、神乃が涙ぐんでいる。これは大変だ!
富永は神乃をいちょうの木の陰に連れ込んで神乃を様子を伺うことにした。
「ごめん、富永……」
「いいよいいよいいよいいよ! 俺は大丈夫!大丈夫だから!」
神乃に嫌な思いをさせてしまったのかもしれない。友達としての付き合いは長いが、恋人として神乃とどう接していけばいいのかは未だ模索中だ。
神乃は嫌なことも嫌だと言わないタイプだから気持ちをちゃんと汲んでやらないといけなかったのに。
「お、俺……」
神乃が震える声で話し始めた。絶対に聞き逃してはならないと富永は耳をそばだてる。
「こんなに人から大事にされたの初めてで……でも俺には何もないから……」
神乃はさっと涙を拭き、富永に無理矢理笑ってみせる。
「ありがとう、富永……こんな俺でよかったらこれからもよろしく、お願いします……」
人前で神乃を抱き締めることだけはしてはいけないと自制していたが、タガが外れた。
「俺、神乃のこと一生大切にする」
あー、ついに神乃を抱き締めてしまった。でも抱き締めずにはいられない。五秒、いや十秒だけ。
「富永離せって!」
腕の中でジタバタする神乃を少しだけ抱き締めて、解放してやる。
「恥ずかしいからやめろって……」
予想通り神乃に怒られた。富永は『神乃が可愛いのがいけないんだ。俺は悪くない』と心の中で思いながら、「ごめん、もうしない」と神乃に心にもないことを言った。
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。