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28.機会
「とみーと、私の彼氏のヒロくんを交換して欲しいの。ね? いいでしょ?」
「はぁ? なんだそれ。恋人を交換するなんてできるわけないだろう?」
「できるよ。やってみようよ」
藍羅は意味のわからないことを平然と言ってのける。
「あのね、とみーとヒロくんには内緒で、私たちは同じホテルに泊まるの。それで偶然を装って四人でかんぱ~いしてお酒を飲む。で、男を酔わせて部屋に戻るの。そのとき私たちはパートナーを入れ替えるために戻る部屋をチェンジする。そこで過ちを犯させる」
神乃は絶句だ。そんなことを考える藍羅を心底恐ろしいと思った。
「男なんて単純だから。同じベッドに入っちゃえば勝手に向こうから襲ってくるよ? 気持ちよくなれれば相手なんて誰でもいいみたい」
そんなことはない。少なくとも神乃はそう簡単には人に身体は開けない。
でも、かなり酔った状態で目の前に『抱けるもの』があったら男は本能で飛びついてしまうものなのだろうか。
たしかに酔った勢いでヤッてしまったなどという話を聞いたことはある。
「わかった。恋人交換に応じる。ただし富永への金は先に返すんだ」
神乃が藍羅に伝えると、提案してきたはずの藍羅自身が驚いていた。だがすぐにニヤッと笑い、悪巧みをする同志を見るような目を神乃に向けてきた。
「かみのんて意外に話がわかる人なんだね」
「交換条件だからな」
藍羅は少し考えて「ふーん」と軽い返事をした。
話を続けたいが、ここは会社のオープンスペースでさっきから人目がある。こんなところで恋人交換の詳細を藍羅と話し合うのは危険だ。
「こんな話はここで話すことじゃない。場所と日を改めて話そう。いいか?」
「うん」
これはチャンスだ。上手くいけば藍羅は自滅する。
失敗はしない。富永のことは心から信頼しているし、きっと富永も神乃のことを信じてくれると思っている。
藍羅と会う約束をしたのは日曜日の夜だった。場所は渋谷駅前のカフェだ。
送らなくていいと言ったのに富永は神乃についてきた。
昼間は外苑前の有名レストランで美味しい料理を富永と食べて、それからいちょう並木を散歩した。
そこで別れようとしたのに富永は「いい運動になる」という理由で神乃についてきた。
そのため結局ふたりで渋谷駅まで歩くことになったのだ。
渋谷駅で富永がタクシーに乗るところをしっかりと見届けて、神乃は藍羅との待ち合わせの場所に向かった。
「とみーとラブラブじゃん」
渋谷駅前で待っていた藍羅は開口一番そんなことを神乃に言った。
「どこかで見てたのか?」
「まぁね。やっぱりいいな。とみーかっこいい」
藍羅は溜め息をついた。
その気持ち、わからないでもない。だって富永は完璧だ。
男同士で歩いているから誰もふたりが恋人同士だとは思わない。だから富永に誘いをかけてくる女がかなり多い。
それらをすべて富永はさらりと角が立たないように断っている。だが、その断り方が妙に手慣れているので今まで相当な人数に言い寄られてきたのだろう。
——富永と同級生じゃなかったら好きになってもらえなかっただろうな……。
富永との出会いは奇跡だ。きっと天文学的な数字の確率で富永との今がある。
「さぁ。藍羅。お互いやるべきことを話そうか」
神乃は足早に話し合いの場へと向かった。
「はぁ? なんだそれ。恋人を交換するなんてできるわけないだろう?」
「できるよ。やってみようよ」
藍羅は意味のわからないことを平然と言ってのける。
「あのね、とみーとヒロくんには内緒で、私たちは同じホテルに泊まるの。それで偶然を装って四人でかんぱ~いしてお酒を飲む。で、男を酔わせて部屋に戻るの。そのとき私たちはパートナーを入れ替えるために戻る部屋をチェンジする。そこで過ちを犯させる」
神乃は絶句だ。そんなことを考える藍羅を心底恐ろしいと思った。
「男なんて単純だから。同じベッドに入っちゃえば勝手に向こうから襲ってくるよ? 気持ちよくなれれば相手なんて誰でもいいみたい」
そんなことはない。少なくとも神乃はそう簡単には人に身体は開けない。
でも、かなり酔った状態で目の前に『抱けるもの』があったら男は本能で飛びついてしまうものなのだろうか。
たしかに酔った勢いでヤッてしまったなどという話を聞いたことはある。
「わかった。恋人交換に応じる。ただし富永への金は先に返すんだ」
神乃が藍羅に伝えると、提案してきたはずの藍羅自身が驚いていた。だがすぐにニヤッと笑い、悪巧みをする同志を見るような目を神乃に向けてきた。
「かみのんて意外に話がわかる人なんだね」
「交換条件だからな」
藍羅は少し考えて「ふーん」と軽い返事をした。
話を続けたいが、ここは会社のオープンスペースでさっきから人目がある。こんなところで恋人交換の詳細を藍羅と話し合うのは危険だ。
「こんな話はここで話すことじゃない。場所と日を改めて話そう。いいか?」
「うん」
これはチャンスだ。上手くいけば藍羅は自滅する。
失敗はしない。富永のことは心から信頼しているし、きっと富永も神乃のことを信じてくれると思っている。
藍羅と会う約束をしたのは日曜日の夜だった。場所は渋谷駅前のカフェだ。
送らなくていいと言ったのに富永は神乃についてきた。
昼間は外苑前の有名レストランで美味しい料理を富永と食べて、それからいちょう並木を散歩した。
そこで別れようとしたのに富永は「いい運動になる」という理由で神乃についてきた。
そのため結局ふたりで渋谷駅まで歩くことになったのだ。
渋谷駅で富永がタクシーに乗るところをしっかりと見届けて、神乃は藍羅との待ち合わせの場所に向かった。
「とみーとラブラブじゃん」
渋谷駅前で待っていた藍羅は開口一番そんなことを神乃に言った。
「どこかで見てたのか?」
「まぁね。やっぱりいいな。とみーかっこいい」
藍羅は溜め息をついた。
その気持ち、わからないでもない。だって富永は完璧だ。
男同士で歩いているから誰もふたりが恋人同士だとは思わない。だから富永に誘いをかけてくる女がかなり多い。
それらをすべて富永はさらりと角が立たないように断っている。だが、その断り方が妙に手慣れているので今まで相当な人数に言い寄られてきたのだろう。
——富永と同級生じゃなかったら好きになってもらえなかっただろうな……。
富永との出会いは奇跡だ。きっと天文学的な数字の確率で富永との今がある。
「さぁ。藍羅。お互いやるべきことを話そうか」
神乃は足早に話し合いの場へと向かった。
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