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34.バーにて
ヒロくんと別れたあと、富永と合流した。そのあと藍羅と約束したホテルのバーへと富永を誘う。富永は二つ返事で了承してくれた。
バーに着いてまず、神乃のやることは富永を酔わせることだ。
富永はアルコールに弱いわけではないので、ワインの一杯二杯では駄目だ。神乃自身もワインを嗜みながら、富永にもアルコールを勧めていく。
富永はやたらと神乃の話を聞きたがる。アーモンドよりもピーナッツが好きだとか、どうでもいい話を「そうなのか。覚えておくよ」とニコニコ嬉しそうに相づちを打って聞いている。
「あ! とみーとかみのんじゃん!」
この声は間違いない。藍羅だ。
計画どおりに藍羅とヒロくんが現れた。
「藍羅?!」
神乃はここで藍羅と偶然会った体体を装わなければならない。そのため驚いたフリをして、藍羅を振り返る。
「一緒に飲もうよ!」
藍羅は迷わず富永の隣に座った。
おい! お前は俺の隣に座るはずだっただろと藍羅にジロッと抗議の目を向けたのに、藍羅は嫌味な笑顔で神乃の視線をさらっと受け流した。
ここで怒りを爆発させるわけにはいかない。神乃は「どうぞ」と身体をずらして、ヒロくんが座れるようにと場所をあけた。
「ヒロくん! とみーとかみのんは私の友達なの!」
藍羅が仲介し、神乃は「はじめまして、神乃です」とヒロくんに挨拶する。ヒロくんとは初対面ではない。だが、ここで初めて会ったふうに装わなければならない。
ヒロくんもそれはわかっているので「はじめまして」と挨拶を返してくれた。ヒロくんとふたり、目配せをして互いの意思疎通を図る。
富永は明らかに不機嫌になった。みんなの会話にまったく参加する気がない。ひとりでガンガン酒を呷り続けている。
もしかしたら、神乃とふたりきりがよかったと思ってくれているのかもしれない。
いや、それは思い上がりかな。ただ藍羅が嫌いなだけだろう。
「私、座る場所間違えちゃった! これじゃとみーと私が恋人同士みたいだよね。恋人交換しちゃった♡」
何が「座る場所間違えちゃった!」だよ!
お前のことだからどうせわざとだろ!
藍羅が富永に擦り寄った。やめろ、富永に触るなと神乃は気が気じゃない。
富永はかなりの泥酔状態にあるようだが、自分に寄ってきた藍羅を邪険にして振り払った。そして藍羅から更に距離をとる。
よかった。目の前で富永と藍羅にくっつかれでもしたら、計画も何もかもふいにして大声を出してしまいそうだった。
富永もかなり酔っているが、ヒロくんも相応のようだ。
ヒロくんはあまりアルコールは得意ではないらしく、少し飲んだだけで顔が紅潮し、酔っている様子だった。
酔っていて身体がふらつくのか、ヒロくんは片手をついて身体が倒れないよう支え始めた。
ふたりを酔わせるのは思惑どおりのことだ。そろそろ戻ってもよいのではないか。
「悪い。俺、先に部屋に戻る」
そう思っていた矢先に富永が立ち上がった。
「じゃあみんな戻ろっか」
藍羅も神乃と同じことを考えていたのかもしれない。皆一致で、その場を終わらせる運びとなった。
「富永大丈夫か?」
神乃はすかさず富永のもとへ駆け寄る。富永はフラフラしていて、ひとりでは歩けないくらいに酔っているようだ。
「とみー、飲み過ぎだよ」
神乃の反対側から富永に擦り寄ってきたのは藍羅だ。藍羅は視線であっちにいけと神乃を追い払おうとする。こいつは既に富永を手に入れた気でいるのか……?
「ここの支払いは私がします」
ヒロくんはウェイターを呼び、部屋番号を告げている。
「えっ、申し訳ないです!」
ヒロくんは今回の計画の協力者だ。それだけでもありがたいのだから神乃が支払おうと思っていたのに。
「いいんですよ。今日は神乃さんに出会えた記念日ということで」
ヒロくんににっこり微笑まれてしまった。
神乃に出会えた記念日——神乃に会ったことで、藍羅の本性を知ることができたことに感謝してくれているのだろうか。
結局ヒロくんの奢りということになってしまい、申し訳なかったがお言葉に甘えることにした。
バーに着いてまず、神乃のやることは富永を酔わせることだ。
富永はアルコールに弱いわけではないので、ワインの一杯二杯では駄目だ。神乃自身もワインを嗜みながら、富永にもアルコールを勧めていく。
富永はやたらと神乃の話を聞きたがる。アーモンドよりもピーナッツが好きだとか、どうでもいい話を「そうなのか。覚えておくよ」とニコニコ嬉しそうに相づちを打って聞いている。
「あ! とみーとかみのんじゃん!」
この声は間違いない。藍羅だ。
計画どおりに藍羅とヒロくんが現れた。
「藍羅?!」
神乃はここで藍羅と偶然会った体体を装わなければならない。そのため驚いたフリをして、藍羅を振り返る。
「一緒に飲もうよ!」
藍羅は迷わず富永の隣に座った。
おい! お前は俺の隣に座るはずだっただろと藍羅にジロッと抗議の目を向けたのに、藍羅は嫌味な笑顔で神乃の視線をさらっと受け流した。
ここで怒りを爆発させるわけにはいかない。神乃は「どうぞ」と身体をずらして、ヒロくんが座れるようにと場所をあけた。
「ヒロくん! とみーとかみのんは私の友達なの!」
藍羅が仲介し、神乃は「はじめまして、神乃です」とヒロくんに挨拶する。ヒロくんとは初対面ではない。だが、ここで初めて会ったふうに装わなければならない。
ヒロくんもそれはわかっているので「はじめまして」と挨拶を返してくれた。ヒロくんとふたり、目配せをして互いの意思疎通を図る。
富永は明らかに不機嫌になった。みんなの会話にまったく参加する気がない。ひとりでガンガン酒を呷り続けている。
もしかしたら、神乃とふたりきりがよかったと思ってくれているのかもしれない。
いや、それは思い上がりかな。ただ藍羅が嫌いなだけだろう。
「私、座る場所間違えちゃった! これじゃとみーと私が恋人同士みたいだよね。恋人交換しちゃった♡」
何が「座る場所間違えちゃった!」だよ!
お前のことだからどうせわざとだろ!
藍羅が富永に擦り寄った。やめろ、富永に触るなと神乃は気が気じゃない。
富永はかなりの泥酔状態にあるようだが、自分に寄ってきた藍羅を邪険にして振り払った。そして藍羅から更に距離をとる。
よかった。目の前で富永と藍羅にくっつかれでもしたら、計画も何もかもふいにして大声を出してしまいそうだった。
富永もかなり酔っているが、ヒロくんも相応のようだ。
ヒロくんはあまりアルコールは得意ではないらしく、少し飲んだだけで顔が紅潮し、酔っている様子だった。
酔っていて身体がふらつくのか、ヒロくんは片手をついて身体が倒れないよう支え始めた。
ふたりを酔わせるのは思惑どおりのことだ。そろそろ戻ってもよいのではないか。
「悪い。俺、先に部屋に戻る」
そう思っていた矢先に富永が立ち上がった。
「じゃあみんな戻ろっか」
藍羅も神乃と同じことを考えていたのかもしれない。皆一致で、その場を終わらせる運びとなった。
「富永大丈夫か?」
神乃はすかさず富永のもとへ駆け寄る。富永はフラフラしていて、ひとりでは歩けないくらいに酔っているようだ。
「とみー、飲み過ぎだよ」
神乃の反対側から富永に擦り寄ってきたのは藍羅だ。藍羅は視線であっちにいけと神乃を追い払おうとする。こいつは既に富永を手に入れた気でいるのか……?
「ここの支払いは私がします」
ヒロくんはウェイターを呼び、部屋番号を告げている。
「えっ、申し訳ないです!」
ヒロくんは今回の計画の協力者だ。それだけでもありがたいのだから神乃が支払おうと思っていたのに。
「いいんですよ。今日は神乃さんに出会えた記念日ということで」
ヒロくんににっこり微笑まれてしまった。
神乃に出会えた記念日——神乃に会ったことで、藍羅の本性を知ることができたことに感謝してくれているのだろうか。
結局ヒロくんの奢りということになってしまい、申し訳なかったがお言葉に甘えることにした。
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