暗殺するため敵国に来たが愚王というのは嘘で溺愛され妃に迎え入れられました

雨宮里玖

文字の大きさ
61 / 91
過去の代償

4.


「薬でヒートを起こして、カイル様に抱いていただければ、私にもカイル様の子が孕めるかもしれません……」
「ユリス。焦ることはないと言っただろう?」
「ですが、王妃になって九ヶ月が経ちました。普通のオメガなら3回はヒートが来るはずです! それなのに、私は一度も……」
「ユリス……そんなことは気にするな。俺はユリスさえいればそれでいい。無理などせずに自らの身を大切にするんだぞ」
「そうはまいりません。皆が、カイル様のお子の……世継ぎの誕生を心待ちにしております……」

 大臣のヒイラを始め、他の家臣からも「期待してますぞ」と世継ぎのことばかり言われる。そしてユリス自身もカイルの子を孕むことを望んでいる。

「世継ぎがなんだ! 子供などできなくても構わない。俺はユリスがなにより大切なんだ。だからユリスもそんなに気負うな」

 カイルはユリスの身体を強く抱き締めてきた。

「誰かに意地悪を言われたのか……? 誰だ? 名前を教えろ。今後は世継ぎの話はユリスでなくて俺に言うように伝えるから」
「いいえ……そのようなことはありません……」

 どこの誰のせいじゃない。ユリスだって世継ぎを望んでいる。

「カイル様? お言葉ですが、カイル様は国王なのです。なので世継ぎは要らないというわけにはいきません。以前カイル様もおっしゃってましたよ? 私に子供をたくさん産んで欲しいと。国王の義務だからと」

 平民ならば子がいなくとも夫婦円満ならそれでいいが、カイルはそうはいかない。カイルに子がいなかったらケレンディア王家が途絶えてしまう。

「たしかに言った。だが、無理にでも、などとは思っていない。今までどおりユリスとすごして自然にヒートが来て、子供ができたらそれは喜ばしいことだ。だがユリスの身体に負担をかけてまでは子を望んでおらぬ。そうするくらいなら子は要らん。そういう意味だ」
「カイル様……」
「ユリス。変な考えはよせ。発情薬は飲むな。もし薬で無理矢理ヒートを起こしたら、俺はそんなユリスは抱かない。だから絶対にやめるんだ! いいな?」
「……はい」

 カイルに抱いてもらえなければ発情薬でヒートを起こしても意味がない。

 どうしたらいい……?
 薬を飲んだことを黙っていて、自然なヒートが来たとカイルを騙すしかないのか。だがもしバレたら? 薬のせいでユリスの身に不都合が起きたら?
 なによりもカイルに嘘をつくことはしたくない。

「ユリス。大丈夫だ。子は要らんと言ったが、俺は必ずユリスにはヒートが来ると思っている。俺の勘は当たる。ユリスの身体には何も問題ないはずだ」

 カイルはユリスの顔をじっと覗き込み、ユリスに言い聞かせるように言った。

「ユリス。実は俺なりにオメガの身体やヒートについて調べてはいるのだ。それでわかったことだが、アルファとよく交わったほうがオメガにとって良いらしい」

 カイルはやけに嬉しそうににやけている。

「オメガのうなじにアルファが口づけしたり、舐めたりするのも効果があるそうだ」

 カイルはユリスのうなじに手を触れ、そこをつーっと指でなぞる。

「アルファとオメガの接触回数は多いほうがいい。夜以外に時間がとれないなら朝や昼は口づけするだけでもいいとオメガの医学書に書いてあった」

 たしかにアルファとの性的な接触は多いほうがいいとユリスも知ってはいたが……。

「これからは時間を作って一日五回口づけすることを俺とユリスの義務にしよう」
「ご、五回もですか……?」

 それだと起きている間、三時間おきくらいにカイルと口づけを交わすことになってしまうが……。

「今も欠かさないようにしてはいるが、夜は必ず共にしよう。ユリス、よいな?」
「は、はい……」

 まさか嫌とは言えない。ユリスのためを想って提案してくれているのだから。

「ユリス、後ろを向いて俺にうなじを差し出してくれ」
「えっ!」
「早く! 試せることはなんでもやろう。ユリスも何かあったら遠慮なく俺にいうのだぞ? ユリスのためなら協力する。なんでもしてやるぞ」

 カイルにくるりと身体を反転させられた。そしてカイルはユリスのうなじに口づけする。

「あっ……」

 駄目だ。そんなことをされると身体がゾクゾクしてしまう。

「効果がありそうだな。続けるぞ」

 カイルは唇と舌を使って、丁寧にユリスのうなじを愛撫する。

「はぁ……んんっ……」

 うなじばかり攻められるのにはまったく慣れていない。思わず嬌声を上げてしまい、すごく恥ずかしい。

「可愛いな、ユリスは」

 カイルは愛撫の合間に囁いてきた。

「ユリス。愛してる」

 カイルはユリスの身体を優しく抱き締め、うなじへの愛撫を繰り返す。

 カイルの愛撫はすごく刺激的で、同時にカイルの優しさを感じて、不安だったユリスの気持ちまで溶かしてしまうほどだった。
感想 6

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 様々な形での応援ありがとうございます!

過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~

水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった! 「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。 そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。 「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。 孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!

出来損ないと虐げられ追放されたオメガですが、辺境で運命の番である最強竜騎士様にその身も心も溺愛され、聖女以上の力を開花させ幸せになります

水凪しおん
BL
虐げられ、全てを奪われた公爵家のオメガ・リアム。無実の罪で辺境に追放された彼を待っていたのは、絶望ではなく、王国最強と謳われるα「氷血の竜騎士」カイルとの運命の出会いだった。「お前は、俺の番だ」――無愛想な最強騎士の不器用で深い愛情に、凍てついた心は溶かされていく。一方、リアムを追放した王都は、偽りの聖女によって滅びの危機に瀕していた。真の浄化の力を巡る、勘違いと溺愛の異世界オメガバースBL。絶望の淵から始まる、世界で一番幸せな恋の物語。

悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?

水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。 断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。 しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。 これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?