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過去の代償
4.
「薬でヒートを起こして、カイル様に抱いていただければ、私にもカイル様の子が孕めるかもしれません……」
「ユリス。焦ることはないと言っただろう?」
「ですが、王妃になって九ヶ月が経ちました。普通のオメガなら3回はヒートが来るはずです! それなのに、私は一度も……」
「ユリス……そんなことは気にするな。俺はユリスさえいればそれでいい。無理などせずに自らの身を大切にするんだぞ」
「そうはまいりません。皆が、カイル様のお子の……世継ぎの誕生を心待ちにしております……」
大臣のヒイラを始め、他の家臣からも「期待してますぞ」と世継ぎのことばかり言われる。そしてユリス自身もカイルの子を孕むことを望んでいる。
「世継ぎがなんだ! 子供などできなくても構わない。俺はユリスがなにより大切なんだ。だからユリスもそんなに気負うな」
カイルはユリスの身体を強く抱き締めてきた。
「誰かに意地悪を言われたのか……? 誰だ? 名前を教えろ。今後は世継ぎの話はユリスでなくて俺に言うように伝えるから」
「いいえ……そのようなことはありません……」
どこの誰のせいじゃない。ユリスだって世継ぎを望んでいる。
「カイル様? お言葉ですが、カイル様は国王なのです。なので世継ぎは要らないというわけにはいきません。以前カイル様もおっしゃってましたよ? 私に子供をたくさん産んで欲しいと。国王の義務だからと」
平民ならば子がいなくとも夫婦円満ならそれでいいが、カイルはそうはいかない。カイルに子がいなかったらケレンディア王家が途絶えてしまう。
「たしかに言った。だが、無理にでも、などとは思っていない。今までどおりユリスとすごして自然にヒートが来て、子供ができたらそれは喜ばしいことだ。だがユリスの身体に負担をかけてまでは子を望んでおらぬ。そうするくらいなら子は要らん。そういう意味だ」
「カイル様……」
「ユリス。変な考えはよせ。発情薬は飲むな。もし薬で無理矢理ヒートを起こしたら、俺はそんなユリスは抱かない。だから絶対にやめるんだ! いいな?」
「……はい」
カイルに抱いてもらえなければ発情薬でヒートを起こしても意味がない。
どうしたらいい……?
薬を飲んだことを黙っていて、自然なヒートが来たとカイルを騙すしかないのか。だがもしバレたら? 薬のせいでユリスの身に不都合が起きたら?
なによりもカイルに嘘をつくことはしたくない。
「ユリス。大丈夫だ。子は要らんと言ったが、俺は必ずユリスにはヒートが来ると思っている。俺の勘は当たる。ユリスの身体には何も問題ないはずだ」
カイルはユリスの顔をじっと覗き込み、ユリスに言い聞かせるように言った。
「ユリス。実は俺なりにオメガの身体やヒートについて調べてはいるのだ。それでわかったことだが、アルファとよく交わったほうがオメガにとって良いらしい」
カイルはやけに嬉しそうににやけている。
「オメガのうなじにアルファが口づけしたり、舐めたりするのも効果があるそうだ」
カイルはユリスのうなじに手を触れ、そこをつーっと指でなぞる。
「アルファとオメガの接触回数は多いほうがいい。夜以外に時間がとれないなら朝や昼は口づけするだけでもいいとオメガの医学書に書いてあった」
たしかにアルファとの性的な接触は多いほうがいいとユリスも知ってはいたが……。
「これからは時間を作って一日五回口づけすることを俺とユリスの義務にしよう」
「ご、五回もですか……?」
それだと起きている間、三時間おきくらいにカイルと口づけを交わすことになってしまうが……。
「今も欠かさないようにしてはいるが、夜は必ず共にしよう。ユリス、よいな?」
「は、はい……」
まさか嫌とは言えない。ユリスのためを想って提案してくれているのだから。
「ユリス、後ろを向いて俺にうなじを差し出してくれ」
「えっ!」
「早く! 試せることはなんでもやろう。ユリスも何かあったら遠慮なく俺にいうのだぞ? ユリスのためなら協力する。なんでもしてやるぞ」
カイルにくるりと身体を反転させられた。そしてカイルはユリスのうなじに口づけする。
「あっ……」
駄目だ。そんなことをされると身体がゾクゾクしてしまう。
「効果がありそうだな。続けるぞ」
カイルは唇と舌を使って、丁寧にユリスのうなじを愛撫する。
「はぁ……んんっ……」
うなじばかり攻められるのにはまったく慣れていない。思わず嬌声を上げてしまい、すごく恥ずかしい。
「可愛いな、ユリスは」
カイルは愛撫の合間に囁いてきた。
「ユリス。愛してる」
カイルはユリスの身体を優しく抱き締め、うなじへの愛撫を繰り返す。
カイルの愛撫はすごく刺激的で、同時にカイルの優しさを感じて、不安だったユリスの気持ちまで溶かしてしまうほどだった。
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