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過去の代償
7.
寝支度を終え、カイルの部屋の大きなベッドに潜り込む。すると先に寝ていたカイルに身体を引き寄せられた。
こうやって毎晩カイルとふたりきりで過ごせる時間がユリスはとても好きだ。
「マルクスは可愛かったですね」
普段あまり幼子を抱くこともないので、アレクとテオの息子・マルクスとの触れ合いは印象的だった。
「そうだな」
カイルは頷いたあと、ユリスの身体を抱き締めてきた。
「カイル様も我が子が欲しくなったのではありませんか?」
マルクスと触れ合うカイルはいつになく楽しそうに見えた。カイルにとって意地悪な質問だと思うが、少しでもカイルの本音を聞いてみたかった。
「いや、その反対だ」
「えっ?」
予想外の反応にユリスは驚いてカイルの顔を見た。
「もし俺とユリスの間にアルファの男児が産まれてみろ。ユリスは当然その子をかわいがるのだろう?」
「はい。もちろんです」
ユリスは我が子を可愛がらないはずがないと思った。
「そうなったら俺はどうなる? ユリスはきっと俺に興味がなくなって、子供ばかり構うようになるだろう? 自分に尽くしてくれるユリスを子供も慕うに違いない。ユリスと子供ばかりが仲良くして、俺は蚊帳の外だ。今日だってユリスは俺を振り払ってずっとマルクスを抱いてたじゃないか」
「あれはマルクスが寝てしまったからで……」
「ほら、そういうふうに言い訳をしてユリスは俺を蔑ろにするんだ。つまらん。まったくもってつまらん」
カイルの話を聞いていて途中からユリスは笑いを堪えるのに必死だ。
「親子で、そういう関係にはならずとも、本能でアルファとオメガは惹かれ合うものだ。俺は今日のマルクスとユリスを見て、どうしても許せなかった。あれがもし我が子だったとしたら、あれを毎日見ることになるのだろう? 俺は発狂しそうだ」
カイルは大きい子供みたいだ。一歳のマルクスにもヤキモチを焼いていたが、まだ産まれていない子供にもヤキモチを焼いている。
「なぜ笑う? 俺にとっては一大事だ」
笑いを堪えていたのに、カイルにはバレてしまったようだ。
「だってカイル様が可笑しなことを言うから……」
「可笑しなことじゃない。子供が産まれたらこうしてユリスとふたりきりでいる時間も減ってしまうと思うと寂しいのだ」
カイルはユリスの額にキスをした。
「もしそうなったら、なんとかふたりきりで過ごせる時間も作りましょう」
「本当か?!」
カイルの顔がぱっと明るくなった。
「はい。私もカイル様とこうして過ごせる時間を失いたくないですから」
幸いユリスの周りには人手がある。たまには王子を信頼できる誰かに預けてカイルとゆっくり過ごす時間も作れるかもしれない。
「その言葉、絶対だぞ。子供が産まれた途端に俺を忘れたら承知せんぞ!」
「はいはい」
ユリスがカイルの唇にキスをすると「まさか口づけで誤魔化そうとしてるのではあるまいな」と言われた。
「違います。カイル様を誘っているのですよ?」
ユリスはもう一度カイルにキスをする。
「今夜も私を抱いてくださいますか? カイル様」
こうしてカイルとふたりきり過ごせるうちに存分に甘えておこうと思った。
「ユリス……。ああ……なんてことを言うんだ……。ユリスから言われたら今夜は我慢などせぬぞ?」
カイルが唇を合わせてきて、そのまま舌を這わせてユリスの口内を犯してきた。
その甘美な行為を始まりにしてユリスもカイルもふたりだけの快楽に溺れていった。
こうやって毎晩カイルとふたりきりで過ごせる時間がユリスはとても好きだ。
「マルクスは可愛かったですね」
普段あまり幼子を抱くこともないので、アレクとテオの息子・マルクスとの触れ合いは印象的だった。
「そうだな」
カイルは頷いたあと、ユリスの身体を抱き締めてきた。
「カイル様も我が子が欲しくなったのではありませんか?」
マルクスと触れ合うカイルはいつになく楽しそうに見えた。カイルにとって意地悪な質問だと思うが、少しでもカイルの本音を聞いてみたかった。
「いや、その反対だ」
「えっ?」
予想外の反応にユリスは驚いてカイルの顔を見た。
「もし俺とユリスの間にアルファの男児が産まれてみろ。ユリスは当然その子をかわいがるのだろう?」
「はい。もちろんです」
ユリスは我が子を可愛がらないはずがないと思った。
「そうなったら俺はどうなる? ユリスはきっと俺に興味がなくなって、子供ばかり構うようになるだろう? 自分に尽くしてくれるユリスを子供も慕うに違いない。ユリスと子供ばかりが仲良くして、俺は蚊帳の外だ。今日だってユリスは俺を振り払ってずっとマルクスを抱いてたじゃないか」
「あれはマルクスが寝てしまったからで……」
「ほら、そういうふうに言い訳をしてユリスは俺を蔑ろにするんだ。つまらん。まったくもってつまらん」
カイルの話を聞いていて途中からユリスは笑いを堪えるのに必死だ。
「親子で、そういう関係にはならずとも、本能でアルファとオメガは惹かれ合うものだ。俺は今日のマルクスとユリスを見て、どうしても許せなかった。あれがもし我が子だったとしたら、あれを毎日見ることになるのだろう? 俺は発狂しそうだ」
カイルは大きい子供みたいだ。一歳のマルクスにもヤキモチを焼いていたが、まだ産まれていない子供にもヤキモチを焼いている。
「なぜ笑う? 俺にとっては一大事だ」
笑いを堪えていたのに、カイルにはバレてしまったようだ。
「だってカイル様が可笑しなことを言うから……」
「可笑しなことじゃない。子供が産まれたらこうしてユリスとふたりきりでいる時間も減ってしまうと思うと寂しいのだ」
カイルはユリスの額にキスをした。
「もしそうなったら、なんとかふたりきりで過ごせる時間も作りましょう」
「本当か?!」
カイルの顔がぱっと明るくなった。
「はい。私もカイル様とこうして過ごせる時間を失いたくないですから」
幸いユリスの周りには人手がある。たまには王子を信頼できる誰かに預けてカイルとゆっくり過ごす時間も作れるかもしれない。
「その言葉、絶対だぞ。子供が産まれた途端に俺を忘れたら承知せんぞ!」
「はいはい」
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「違います。カイル様を誘っているのですよ?」
ユリスはもう一度カイルにキスをする。
「今夜も私を抱いてくださいますか? カイル様」
こうしてカイルとふたりきり過ごせるうちに存分に甘えておこうと思った。
「ユリス……。ああ……なんてことを言うんだ……。ユリスから言われたら今夜は我慢などせぬぞ?」
カイルが唇を合わせてきて、そのまま舌を這わせてユリスの口内を犯してきた。
その甘美な行為を始まりにしてユリスもカイルもふたりだけの快楽に溺れていった。
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