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7.喧嘩
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「まーしたっ!」
塔矢だ。またゼミ終わりにやって来た。塔矢の姿を見て、立ち上がりズンズン迫っていくのは一条だ。
「おい塔矢。てめぇ、ちょっと話がある」
「は? 浮気野郎と話すことなんてないけど」
うわぁ。本人に向かってはっきり言うなよ! 皆コソコソ噂をしてたのに。
「うるせぇ! ちょっと来い!」
「わかったよ。二股どころじゃないんだろ? 本当は何股かけてたのか聞かせろよ」
「塔矢、俺にぶっ殺されてぇの? これ以上俺を陥れるな!」
「何言ってんの? 全部お前が悪いんじゃん」
一触即発の空気のまま、一条と塔矢の二人はゼミの教室を出て行く。
嫌な予感しかない。
二人のことが心配で、真下も二人の後を追う。
二人は大学構内の、人気のない場所で対峙していた。傍目で険悪な雰囲気が伝わってくる。
「あの日、舞美をそそのかして俺の部屋に行くようけしかけたのは塔矢、お前だろ?! ふざけんなよ!」
やっぱり。眼鏡と黒マスクの男は塔矢だったんだ。
「俺ね、誰にでもいい顔する奴、好きじゃない。知らねぇの? 恋人ってひとりだけなんだよっ。誰彼構わず関係を持ちたいなんて盛ってんじゃねぇよ! クズ野郎が!」
うわ、どうすればいい。なんとかこの場を収めたい。
「一条、もうお前の味方なんていない。お前と付き合いたい奴なんていねぇから。ひとり寂しく泣いてろよ!」
塔矢の罵声に一条は反撃の言葉を詰まらせた。
「一条。お前だけは許さない。これでもまだわからないなら、今度はお前のSNSをめちゃくちゃにしてやる!」
塔矢……! そこまでしなくても……。
「お前がチヤホヤされるのは、見た目が理由だろ? お前には顔しかない。性格腐ってんだからよ! だったら俺がその顔をぶち壊してやろうか?」
一条の見た目に惹かれたのもあるけど、明るくていい奴だと中身にも惹かれたのは事実だ。真下は最初に一条を好きになった時のことを思い出した。
「死ねよクズ。マジで今すぐここでそのムカつく顔をフルボッコにしてやるっ!」
「塔矢! やめろ!」
もう黙っていられない。真下は塔矢と一条の間に割って入った。
「どけっ! 真下っ! 俺はこいつをぶっ殺してやるっ!」
塔矢の勢いは止まらない。
「塔矢、やめてよ。もういいから……」
もう十分だ。これ以上塔矢が一条に手を下す必要なんてない。
塔矢はチッと舌打ちした。
「わかったよ。真下がそう言うならやめる。一条覚えとけよ! 今度ふざけた真似をしたらマジでぶっ殺す!」
捨て台詞のように塔矢はそう言い残し、憤慨したままその場からさっさといなくなってしまった。
「真下……」
一条が力なく真下の名前を呼んだ。
「ごめん。お前を散々傷つけた」
しおらしく謝ってくる一条に「もういいよ」と声をかけてやる。心からそう思ってる。一条の行為は悪いことだと思うが、今の真下にとってはもう過去の話だ。
「ありがとな。俺を庇ってくれて」
「別に一条を庇ってなんかないよ」
「いや。助かった。真下、お前やっぱり優しくていい奴だな。俺がこうやってひとりきりになったときに、俺に手を差し伸べてくれたのはお前だけだ」
さすがの一条も、塔矢の猛攻に参ってたんだ。二股野郎だと噂をされていることを知りながら、ゼミにちゃんと顔を出したのもきっとかなり無理をしていたんだろう。
「それなのにお前を選ばないなんて、お前だけを愛さなかったなんて間違ってた。真下がもしまだ俺を少しでも好きでいてくれるなら、こんな俺を許してくれるなら、お前とこのまま恋人でいさせて欲しい。そして今度こそお前を大切にする。お前だけを好きでいさせてくれ。だから俺のそばにいてくれないか?」
一条は必死で真下に訴えてくる。ここ数日、塔矢のせいで辛かったのだろう。その目に少し涙が滲んでる。
「真下。大好きだ」
一条は真下をそっと抱き締める。その手は今までないくらいに優しかった。
塔矢だ。またゼミ終わりにやって来た。塔矢の姿を見て、立ち上がりズンズン迫っていくのは一条だ。
「おい塔矢。てめぇ、ちょっと話がある」
「は? 浮気野郎と話すことなんてないけど」
うわぁ。本人に向かってはっきり言うなよ! 皆コソコソ噂をしてたのに。
「うるせぇ! ちょっと来い!」
「わかったよ。二股どころじゃないんだろ? 本当は何股かけてたのか聞かせろよ」
「塔矢、俺にぶっ殺されてぇの? これ以上俺を陥れるな!」
「何言ってんの? 全部お前が悪いんじゃん」
一触即発の空気のまま、一条と塔矢の二人はゼミの教室を出て行く。
嫌な予感しかない。
二人のことが心配で、真下も二人の後を追う。
二人は大学構内の、人気のない場所で対峙していた。傍目で険悪な雰囲気が伝わってくる。
「あの日、舞美をそそのかして俺の部屋に行くようけしかけたのは塔矢、お前だろ?! ふざけんなよ!」
やっぱり。眼鏡と黒マスクの男は塔矢だったんだ。
「俺ね、誰にでもいい顔する奴、好きじゃない。知らねぇの? 恋人ってひとりだけなんだよっ。誰彼構わず関係を持ちたいなんて盛ってんじゃねぇよ! クズ野郎が!」
うわ、どうすればいい。なんとかこの場を収めたい。
「一条、もうお前の味方なんていない。お前と付き合いたい奴なんていねぇから。ひとり寂しく泣いてろよ!」
塔矢の罵声に一条は反撃の言葉を詰まらせた。
「一条。お前だけは許さない。これでもまだわからないなら、今度はお前のSNSをめちゃくちゃにしてやる!」
塔矢……! そこまでしなくても……。
「お前がチヤホヤされるのは、見た目が理由だろ? お前には顔しかない。性格腐ってんだからよ! だったら俺がその顔をぶち壊してやろうか?」
一条の見た目に惹かれたのもあるけど、明るくていい奴だと中身にも惹かれたのは事実だ。真下は最初に一条を好きになった時のことを思い出した。
「死ねよクズ。マジで今すぐここでそのムカつく顔をフルボッコにしてやるっ!」
「塔矢! やめろ!」
もう黙っていられない。真下は塔矢と一条の間に割って入った。
「どけっ! 真下っ! 俺はこいつをぶっ殺してやるっ!」
塔矢の勢いは止まらない。
「塔矢、やめてよ。もういいから……」
もう十分だ。これ以上塔矢が一条に手を下す必要なんてない。
塔矢はチッと舌打ちした。
「わかったよ。真下がそう言うならやめる。一条覚えとけよ! 今度ふざけた真似をしたらマジでぶっ殺す!」
捨て台詞のように塔矢はそう言い残し、憤慨したままその場からさっさといなくなってしまった。
「真下……」
一条が力なく真下の名前を呼んだ。
「ごめん。お前を散々傷つけた」
しおらしく謝ってくる一条に「もういいよ」と声をかけてやる。心からそう思ってる。一条の行為は悪いことだと思うが、今の真下にとってはもう過去の話だ。
「ありがとな。俺を庇ってくれて」
「別に一条を庇ってなんかないよ」
「いや。助かった。真下、お前やっぱり優しくていい奴だな。俺がこうやってひとりきりになったときに、俺に手を差し伸べてくれたのはお前だけだ」
さすがの一条も、塔矢の猛攻に参ってたんだ。二股野郎だと噂をされていることを知りながら、ゼミにちゃんと顔を出したのもきっとかなり無理をしていたんだろう。
「それなのにお前を選ばないなんて、お前だけを愛さなかったなんて間違ってた。真下がもしまだ俺を少しでも好きでいてくれるなら、こんな俺を許してくれるなら、お前とこのまま恋人でいさせて欲しい。そして今度こそお前を大切にする。お前だけを好きでいさせてくれ。だから俺のそばにいてくれないか?」
一条は必死で真下に訴えてくる。ここ数日、塔矢のせいで辛かったのだろう。その目に少し涙が滲んでる。
「真下。大好きだ」
一条は真下をそっと抱き締める。その手は今までないくらいに優しかった。
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