攻められない攻めと、受けたい受けの話

雨宮里玖

文字の大きさ
5 / 5

5.手を繋ぐ

しおりを挟む

 高月の家に着いた。明かりは消えていて、家には誰もいない様子だとわかる。

 家に入って、適当な夕食をとり、風呂を勧められ入り、部屋着を高月から借りて、二人で高月のベッドで寝る——。

 わけがない。

 高月はどこからか寝具一式を持ってきて、床にひき始めた。

 やっぱり高月は宮咲と二人でベッドに寝る気はないらしい。宮咲の妄想は徒労に終わりそうだ。

 でも今日、宮咲は満足している。高月と付き合い初めて三ヶ月。今日はついに高月と手を繋ぐことができたから。

 焦ることなどない。これからゆっくり進んでいけばいい。

「おやすみ」

 結局、高月のベッドを宮咲が使うことになった。
 なんだこれ最高だぞ。高月の匂いがする。
 今日はいい夢が見れそうだと思って堪能していたら、高月が「あのさ」と話しかけてきた。

「高月? どうしたの?」

 高月の方を見ると、眠れないのか高月はまだ横にはならずに上半身を起こしていた。

「宮咲はさ、やっぱ女もいけるの?」
「え?!」
「ごめん、急に。お前がこないだ智江と二人でいるところ見てたら、いい感じだなって、なんか、妬けたから……」

 え……。冗談だろ。

 宮咲が高月と唯香をみて嫉妬してた時に、高月も宮咲と智江をみて嫉妬してたのだろうか? 宮咲からしたらありえないことだ。

「高月。俺にはお前しかいないのに……」
「ほんとに? 俺、お前に捨てられるのが怖くてたまらない。やっぱり男は嫌だとか、飽きたとか言われたらどうしようっていつも思ってる」
「なんでだよ……」
「お前に嫌われないように、俺はお前を大切にしたい。お前に辛い思いはさせたくないんだよ。なのに……」

 高月は何を言おうとしているんだ……?

「ごめん、宮咲。お前にどうしても確認したいことがある」
「なんだ?」

 高月が改まってまで、一体何を宮咲に聞きたいのだろう。

「なぁ、宮咲。俺とヤるとこ、想像したことある?」
「え?!」

 驚きすぎて飛び起きてしまった。心臓が急にバクバクいい始める。

「俺は想像してる。お前とそういうことするところ」
「い、いきなりどうしたんだよ……」

 純情で奥手な高月君。君は一体どこに消えたんだよ。

「宮咲は? どう?」

 高月の表情はいたって真面目だ。

「え……」

 やば、俺はいつも妄想ばかりですよと正直に言うのは恥ずかしい……。

「あの……お前って、どっち?」
「どっちって……」

 どういう意味だ……?

「俺は、間違いなくタチ、なんだけど……」

 タチ? 確か、突っ込む方のことだったような。

「俺との絡み、お前はどっちを想像した? お前、実は女とも付き合えそうだから、もしかしてと思って……」

 か、身体の相性みたいなことの話をしてるのだろうか。

 宮咲がいつも妄想してるのは——。

「お前が俺を受けとめてくれたらいいなとは思ってるけど、きっとそっち側の方がキツいだろうから……。俺の欲望を満たすのに、お前を辛い目に合わせるなんてできない……。俺がこんなこと言っても気にするな。俺は別に、お前と何もできなくたって傍にいられればそれだけでいいから」

 高月はそんなことを気にしていたのか。でもたしかに性癖を聞くなんてなかなかできないことかもしれない。好きになるときはそんなことを考えもせずに好きになるから。

「お、俺は……」

 うわ、ここで妄想暴露かよ。赤面不可避だ。でも高月には、宮咲の希望を知っておいて欲しい。

「だ、大丈夫だよ、高月。俺は、お前を受け入れたいと思ってる。俺はいつもそんなことばかり想像してて」

 高月に強い視線を向けられて、ドキリとした。

「お、お前に攻められて感じてみたくて、いつもそんな妄想が——」

 そこまで言いかけて高月が抱き締めてきた。高月に抱き締められるなんて初めてで、驚きと同時に嬉しさが込み上げてくる。

「宮咲、俺を、煽ってるんだな?」

 いや決して煽ってない。宮咲の妄想を伝えただけで……。

「宮咲は俺を受け入れてくれるの?」

 高月はさらにぎゅっと抱き締めてきた。高月の腕の中で、宮咲はそっと頷く。いつだって自分は高月を受け入れることばかり妄想していたから。

「俺も同じこと想像してた。お前の中を俺がぐちゃぐちゃに掻き回したい。お前を犯してさんざん喘がせたいといつも妄想してた」

 ちょっと待て。高月の妄想は、俺の妄想よりも上をいくような……。

「俺の服を着てる宮咲とか最高だよ。ブカブカで袖、余ってんじゃん」

 宮咲を抱き締めながらも、高月は部屋着の下から手を侵入させてきた。そして直に肌に触れてくる。

「宮咲、好きだ。お前がそっちなら、俺、お前のこと襲ってもいい?」

 高月は宮咲を勢いよくベッドに押し倒す。

「高月……っ?」

 宮咲の上に覆い被さってくる高月。ちょっと待てよ、急にこんな……。

 突然唇に唇を重ねられる。これってファーストキス……?!

「俺を受け入れてくれ」

 そこから高月は自らの服を脱ぎ、上半身の裸体を露わにする。

 え?! ちょっと、高月の裸をまともに見たのも初めてで……。

 高月は宮咲の服にも手を掛ける。

「ちょっと……ま、待て」

 こんなの急展開すぎる。
 急展開すぎるだろ——!!!


 ——完。
しおりを挟む
感想 6

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

こここ
2023.10.18 こここ
ネタバレ含む
2023.10.18 雨宮里玖

こっこさんに気がついてもらえた✨

感想ありがとうございます!

来週からはエブを離れ、こちらで連載開始します。
どうぞよろしくお願いします🙇‍♀️

解除
nico
2023.10.16 nico
ネタバレ含む
2023.10.16 雨宮里玖

最後までお読みくださり、感想までありがとうございます!

10月24日あたりを目標に長編連載するつもりなのですが、その前に過去作短編をこちらに置かせていただいてます☺️

もしよければまた読みに来てくださると幸いです✨

解除
nico
2023.10.16 nico
ネタバレ含む
2023.10.16 雨宮里玖

次の更新で最後です!

毎回の投稿に、感想をくださりありがとうございます‼️

解除

あなたにおすすめの小説

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

突然現れたアイドルを家に匿うことになりました

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 「俺を匿ってくれ」と平凡な日向の前に突然現れた人気アイドル凪沢優貴。そこから凪沢と二人で日向のマンションに暮らすことになる。凪沢は日向に好意を抱いているようで——。 凪沢優貴(20)人気アイドル。 日向影虎(20)平凡。工場作業員。 高埜(21)日向の同僚。 久遠(22)凪沢主演の映画の共演者。

クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話

雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。 塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。 真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。 一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

ファントムペイン

粒豆
BL
事故で手足を失ってから、恋人・夜鷹は人が変わってしまった。 理不尽に怒鳴り、暴言を吐くようになった。 主人公の燕は、そんな夜鷹と共に暮らし、世話を焼く。 手足を失い、攻撃的になった夜鷹の世話をするのは決して楽ではなかった…… 手足を失った恋人との生活。鬱系BL。 ※四肢欠損などの特殊な表現を含みます。

ギャルゲー主人公に狙われてます

一寸光陰
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。 自分の役割は主人公の親友ポジ ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。