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番外編『忘れられたオメガは番を愛せない』
10.一触即発
ライオネルはゲランドールに厳しい視線を向ける。
「すみません、ゲランドール公爵。ノアと話がしたいのです。ここまででよろしいか?」
「……お前がライオネル・バーノンか。バーノン司教の子孫の」
「はい。司教の子孫で、ノアの夫です」
いつも穏やかな男なのに、なぜかライオネルは好戦的な目をゲランドールに向ける。何を張り合おうとしているんだよ。
ほら、ゲランドールは面白くなさそうな顔をしてる。夫だからっていきなり話に割り込まれたらそりゃいい顔しないよな。
「夫? ああ。あの意味のない、紙切れ一枚で決められた婚姻関係のことか。俺はあの制度は嫌いだ。金のため、地位のため、あの制度の裏には人間の醜さが透けて見える」
「すべての結婚がそうとは限りませんよ」
なんでこのふたり一触即発の雰囲気なんだ? 温和なライオネルと何事にも動じないゲランドールがケンカするとは思えないんだが。
「ノア、行こう」
「あ、えっ?」
ライオネルは強引に俺の手を引いて歩き出した。
いつも人前でこんなことしないのに、どうしたんだよライオネルは。なんとかゲランドールに視線でサヨナラを伝えたけど、あの冷静なゲランドールが驚いてたぞ。
「どうしたんだよ、ライオネル」
「あいつ、気軽にノアの頭に触れやがって。許せん。断じて許せん!」
「はっ?」
そんなことで怒ってたのか? しかも、いつから見てたんだよ、俺たちのこと。
「ノアが既婚だと知っての行動だとしたらありえない。ゲランドールめ……」
怒り任せに俺の手を強く握りしめてくる。ゲランドールのことも呼び捨てだよ。ライオネルって普段は穏やかなのに怒ると少し口が悪くなる。
でも、嬉しく思っている自分がいる。だってライオネルが怒っているのはゲランドールが俺に手を出したと思っているからだ。独占欲って言うのかな、こういうの。ライオネルは俺のこと離したくないって思ってくれてるのかな。
「手が痛いよライオネル」
「あ、すまんっ!」
慌ててライオネルは手を離した。離れたところで俺はライオネルの腕を抱きしめるようにして身を寄せる。
「手を繋ぐのもいいけど、今はこれがいい」
ライオネルにくっついていると、心が安らぐんだ。
ホント好き。大好き。
「ノア……」
ライオネルの声がいつもの調子に戻っている。よかった。少し気持ちが落ち着いたみたいだ。
「ライオネル、どうして王都にいるの?」
「それはだな、俺も王都に用事があって……」
声色も、視線が泳ぐそのさまも、どう見ても嘘をついている。
俺がじっと顔を覗き込むようにすると、「ノアが心配で居ても立っても居られなかった」とあっさり白状してきた。
「用が済んだらすぐに帰るのに」
なんて奴だ、と思いながらも思わず顔がにやけてしまう。俺だってライオネルと一緒のほうがどれだけ心強いか。まぁ、本人にはそんなこと言えないけど。
「それでもだ。離れている時間が苦しい。心配で仕事がまったく手につかない。俺はノアを失いたくない。ノアに何かあったらと思うと、黙って待つことなどできなかった」
「しょうがない奴だな」
ライオネルの腕に頬を寄せ、腕をぎゅっと抱きしめる。
俺もそうだ。もし反対の立場になったら、ライオネルのことを追いかけちゃうよ。
俺は以前、実際にライオネルを追いかけた。「ついてくるな」と言われても魔術師の部隊に紛れ込んで、モンスターが暴れ出した原因を突き詰めるための選抜隊についていったことがある。
「そばにいることを許してくれ、ノア」
美しい漆黒の瞳が愛おしげに俺を見つめている。それがまた嬉しくて、心が温かくなる。
俺は最愛の番の大好きな瞳を見つめ返して、頷いてみせた。
「すみません、ゲランドール公爵。ノアと話がしたいのです。ここまででよろしいか?」
「……お前がライオネル・バーノンか。バーノン司教の子孫の」
「はい。司教の子孫で、ノアの夫です」
いつも穏やかな男なのに、なぜかライオネルは好戦的な目をゲランドールに向ける。何を張り合おうとしているんだよ。
ほら、ゲランドールは面白くなさそうな顔をしてる。夫だからっていきなり話に割り込まれたらそりゃいい顔しないよな。
「夫? ああ。あの意味のない、紙切れ一枚で決められた婚姻関係のことか。俺はあの制度は嫌いだ。金のため、地位のため、あの制度の裏には人間の醜さが透けて見える」
「すべての結婚がそうとは限りませんよ」
なんでこのふたり一触即発の雰囲気なんだ? 温和なライオネルと何事にも動じないゲランドールがケンカするとは思えないんだが。
「ノア、行こう」
「あ、えっ?」
ライオネルは強引に俺の手を引いて歩き出した。
いつも人前でこんなことしないのに、どうしたんだよライオネルは。なんとかゲランドールに視線でサヨナラを伝えたけど、あの冷静なゲランドールが驚いてたぞ。
「どうしたんだよ、ライオネル」
「あいつ、気軽にノアの頭に触れやがって。許せん。断じて許せん!」
「はっ?」
そんなことで怒ってたのか? しかも、いつから見てたんだよ、俺たちのこと。
「ノアが既婚だと知っての行動だとしたらありえない。ゲランドールめ……」
怒り任せに俺の手を強く握りしめてくる。ゲランドールのことも呼び捨てだよ。ライオネルって普段は穏やかなのに怒ると少し口が悪くなる。
でも、嬉しく思っている自分がいる。だってライオネルが怒っているのはゲランドールが俺に手を出したと思っているからだ。独占欲って言うのかな、こういうの。ライオネルは俺のこと離したくないって思ってくれてるのかな。
「手が痛いよライオネル」
「あ、すまんっ!」
慌ててライオネルは手を離した。離れたところで俺はライオネルの腕を抱きしめるようにして身を寄せる。
「手を繋ぐのもいいけど、今はこれがいい」
ライオネルにくっついていると、心が安らぐんだ。
ホント好き。大好き。
「ノア……」
ライオネルの声がいつもの調子に戻っている。よかった。少し気持ちが落ち着いたみたいだ。
「ライオネル、どうして王都にいるの?」
「それはだな、俺も王都に用事があって……」
声色も、視線が泳ぐそのさまも、どう見ても嘘をついている。
俺がじっと顔を覗き込むようにすると、「ノアが心配で居ても立っても居られなかった」とあっさり白状してきた。
「用が済んだらすぐに帰るのに」
なんて奴だ、と思いながらも思わず顔がにやけてしまう。俺だってライオネルと一緒のほうがどれだけ心強いか。まぁ、本人にはそんなこと言えないけど。
「それでもだ。離れている時間が苦しい。心配で仕事がまったく手につかない。俺はノアを失いたくない。ノアに何かあったらと思うと、黙って待つことなどできなかった」
「しょうがない奴だな」
ライオネルの腕に頬を寄せ、腕をぎゅっと抱きしめる。
俺もそうだ。もし反対の立場になったら、ライオネルのことを追いかけちゃうよ。
俺は以前、実際にライオネルを追いかけた。「ついてくるな」と言われても魔術師の部隊に紛れ込んで、モンスターが暴れ出した原因を突き詰めるための選抜隊についていったことがある。
「そばにいることを許してくれ、ノア」
美しい漆黒の瞳が愛おしげに俺を見つめている。それがまた嬉しくて、心が温かくなる。
俺は最愛の番の大好きな瞳を見つめ返して、頷いてみせた。
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