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番外編『忘れられたオメガは番を愛せない』
38.事実3
「俺が、悪魔の花嫁……」
こいつの目的は美しいとされる器を使って、自らの子どもを作りたいだけ。そこに人の心はない。だってこいつは悪魔だから。
そのはずなんだ。ただ、俺は今までの話からこの悪魔の中にある矛盾を見つけた。
あの行動だけは、どうしても解せない。
「お前、本物のゲランドールをどこかに隠しているな。いや、ゲランドール自身が望んでどこかに姿を隠しているんだろう。そしてお前は時々ゲランドールに会っている。もしかしたらお前たちふたりは入れ替わっているんじゃないか?」
これは俺の予想だ。
だって自分の本能だけで行動するとしたら、なぜ王位を欲しがる?
それを達成するために、かなりの労力が必要なはずだ。まず、ゲランドールに化けて十年以上も過ごさなければならなくなっている。悪魔の寿命からしたら、ほんの少しの時間かもしれないが、面倒なことに変わりはない。
詳しい事情はわからないが、ゲランドール公爵は幼い頃、近しい人間の裏切りによって捨てられた。その後、悪魔がゲランドールに化けて、自力で戻ったふうに見せかけ、また人間世界に戻ってきたのだろう。
「理由は、自分を捨てた人間を見返すため。そして悪魔。お前はそのためにゲランドールに力を貸している。そうだろう?」
これはゲランドールと悪魔の復讐劇なのではないか。俺はそう考えた。
ライオネルの顔をした悪魔は、「少し違うな」と不敵な笑みを浮かべる。
「これは取引だ。ゲランドールは王位を手にする。そして俺は美しい花嫁を手に入れる。お互いに欲しいものを手にするための契約だ」
なるほど。そのために、ふたりで一役を演じたのか。ほぼ、悪魔が表向きのゲランドールを演じていたんだろうけどな。
「すいぶんとゲランドールを可愛がっているんだな」
悪魔にも、孤独みたいな感情はあるのだろうか。サロニア城が廃城になってからもうかなりの月日が経っている。孤独の中、暮らしていて、ある日、捨てられた人間の子どもを見つけた。それを取って食わずに、拾うということはそこに愛着があったのかもしれない。
「あいつは特別だ」
表情が軟化した。この悪魔は、子どものゲランドールを親のような気持で育てたのかもしれない。人間ぽい面もあるじゃないか。
「お願いだ。俺も、元の場所に返してくれ。俺にも特別な人がいるんだ」
俺の手足は動かせない。
ここから逃げるためには、こいつを説得するしかないんだ。
「何を言う。お前の戻る場所はないぞ」
悪魔はなんでもないことのように言った。
「……どういうことだ」
俺の戻る場所はライオネルの隣だ。それが、ない……?
こいつの目的は美しいとされる器を使って、自らの子どもを作りたいだけ。そこに人の心はない。だってこいつは悪魔だから。
そのはずなんだ。ただ、俺は今までの話からこの悪魔の中にある矛盾を見つけた。
あの行動だけは、どうしても解せない。
「お前、本物のゲランドールをどこかに隠しているな。いや、ゲランドール自身が望んでどこかに姿を隠しているんだろう。そしてお前は時々ゲランドールに会っている。もしかしたらお前たちふたりは入れ替わっているんじゃないか?」
これは俺の予想だ。
だって自分の本能だけで行動するとしたら、なぜ王位を欲しがる?
それを達成するために、かなりの労力が必要なはずだ。まず、ゲランドールに化けて十年以上も過ごさなければならなくなっている。悪魔の寿命からしたら、ほんの少しの時間かもしれないが、面倒なことに変わりはない。
詳しい事情はわからないが、ゲランドール公爵は幼い頃、近しい人間の裏切りによって捨てられた。その後、悪魔がゲランドールに化けて、自力で戻ったふうに見せかけ、また人間世界に戻ってきたのだろう。
「理由は、自分を捨てた人間を見返すため。そして悪魔。お前はそのためにゲランドールに力を貸している。そうだろう?」
これはゲランドールと悪魔の復讐劇なのではないか。俺はそう考えた。
ライオネルの顔をした悪魔は、「少し違うな」と不敵な笑みを浮かべる。
「これは取引だ。ゲランドールは王位を手にする。そして俺は美しい花嫁を手に入れる。お互いに欲しいものを手にするための契約だ」
なるほど。そのために、ふたりで一役を演じたのか。ほぼ、悪魔が表向きのゲランドールを演じていたんだろうけどな。
「すいぶんとゲランドールを可愛がっているんだな」
悪魔にも、孤独みたいな感情はあるのだろうか。サロニア城が廃城になってからもうかなりの月日が経っている。孤独の中、暮らしていて、ある日、捨てられた人間の子どもを見つけた。それを取って食わずに、拾うということはそこに愛着があったのかもしれない。
「あいつは特別だ」
表情が軟化した。この悪魔は、子どものゲランドールを親のような気持で育てたのかもしれない。人間ぽい面もあるじゃないか。
「お願いだ。俺も、元の場所に返してくれ。俺にも特別な人がいるんだ」
俺の手足は動かせない。
ここから逃げるためには、こいつを説得するしかないんだ。
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悪魔はなんでもないことのように言った。
「……どういうことだ」
俺の戻る場所はライオネルの隣だ。それが、ない……?
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