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「エルヴィンは第三王子で兄がふたりいるんだよな」
ルークはエルヴィンを抱きしめる手を緩めた。気持ちは落ち着いたようだが、ルークの表情は決して明るくはない。
「はい。ふたりともとてもいい兄です。僕は落ちこぼれなんですけど、それでも兄たちはいつだって僕を置いていったりしませんでした。『エルヴィンらしくていい』とこんな僕のことを認めてくれました」
本当に家族に恵まれたと思う。人質になって黒狼の城に来ることを決断したのも、優しい家族を守りたい一心からだ。
「俺も、小さいころは兄に憧れを抱いていた」
ルークはぽつりと語りだした。
「だが、兄はいつも俺に牙を向けてばかりだ。どうやら俺の存在が悉く許せないらしい」
「ああ……」
エルヴィンも、メイナード陛下とルーク王弟殿下は不仲だという噂を聞いたことがある。黒狼獣人に限らず、どこの王族も兄弟で権力や財産争いをするという話を聞く。エルヴィンの家族のように兄弟仲がいいのは珍しいのかもしれない。まぁ、エルヴィンの家は貧乏すぎて一家総出で畑を耕しているような家で、おおよそ王族とは呼べないような家柄だが。
「だが俺も十八になった。見識も広がり、何が正しくて何が間違っているか見えるようになった。そして何を守るべきか、わかるようになった」
ルークは金色の双眼でエルヴィンを見つめている。夕明かりに照らされるルークは、決意を秘めた表情をしていた。
「エルヴィン」
ルークは膝を折り、エルヴィンに顔を近づけてくる。エルヴィンの頬に手を触れ、その手はエルヴィンを上向きにさせる。
恋愛経験のないエルヴィンでも何をされるかわかった。ルークは目を閉じ、ゆっくりとエルヴィンに唇を寄せる。
わかっていても逃げられなかった。
ルークはただの患者でも友達でもない。そう思い込んでまでもそばにいたいと願う、エルヴィンの大好きな人だ。
この行為が偽物だって勘違いだっていい。とにかくルークが好きだ。あとでルークに忘れられてどんな辛い目に遭おうとも構わない。ルークとの今しか考えたくない。
ルークの唇が触れる。何度か確かめるようなキスをされたあと、ルークはエルヴィンの唇を割って舌を滑り込ませてきた。
「あっ……ん……」
ルークの舌で口内を犯される。舌を弄ばれ、口蓋を舐められ、エルヴィンは息も絶え絶えになりながらもそれを受け入れた。
いい。気持ちいい。このまま何も考えずにルークに溺れてしまいたい。
「んっ……はぁっ、いい……っ」
ルークとのしびれるようなキスで、猫耳の先まで感じてしまってエルヴィンは何度もビクッと身体を震わせる。
(やばい。おかしくなる……)
キスはこんなに気持ちがよくなるものだと初めて知った。
ルークと初めてキスしたのは薬を飲ませるためで色気などない。あのときはルークに生きてほしくてエルヴィンも必死だった。そしてあれがエルヴィンのファーストキスだ。
そうじゃない、これは性愛のキスだ。
「エルヴィン、可愛い……」
ルークはキスをやめない。エルヴィンもやめてほしくなくて、ルークを求めてしまう。
「エルヴィン……俺の可愛いエルヴィン……」
ルークに名前を囁かれると、その吐息でゾクゾクする。ルークに求められているように感じて空っぽの心が満たされていく。
ルークをこれ以上好きになってしまうのが嫌で、ずっと接触を避けてきた。いつか別れがくることも覚悟しなくてはいけないとわかっている。
でも、そんなことに構ってられない。ルークとの先は真っ暗だとわかっているのに、今に溺れていく。
ルークと離れたくない。
「エルヴィン……エルヴィン……っ」
「はぁっ……殿下……!」
エルヴィンはルークとの禁断のキスに夢中になっていった。
ルークはエルヴィンを抱きしめる手を緩めた。気持ちは落ち着いたようだが、ルークの表情は決して明るくはない。
「はい。ふたりともとてもいい兄です。僕は落ちこぼれなんですけど、それでも兄たちはいつだって僕を置いていったりしませんでした。『エルヴィンらしくていい』とこんな僕のことを認めてくれました」
本当に家族に恵まれたと思う。人質になって黒狼の城に来ることを決断したのも、優しい家族を守りたい一心からだ。
「俺も、小さいころは兄に憧れを抱いていた」
ルークはぽつりと語りだした。
「だが、兄はいつも俺に牙を向けてばかりだ。どうやら俺の存在が悉く許せないらしい」
「ああ……」
エルヴィンも、メイナード陛下とルーク王弟殿下は不仲だという噂を聞いたことがある。黒狼獣人に限らず、どこの王族も兄弟で権力や財産争いをするという話を聞く。エルヴィンの家族のように兄弟仲がいいのは珍しいのかもしれない。まぁ、エルヴィンの家は貧乏すぎて一家総出で畑を耕しているような家で、おおよそ王族とは呼べないような家柄だが。
「だが俺も十八になった。見識も広がり、何が正しくて何が間違っているか見えるようになった。そして何を守るべきか、わかるようになった」
ルークは金色の双眼でエルヴィンを見つめている。夕明かりに照らされるルークは、決意を秘めた表情をしていた。
「エルヴィン」
ルークは膝を折り、エルヴィンに顔を近づけてくる。エルヴィンの頬に手を触れ、その手はエルヴィンを上向きにさせる。
恋愛経験のないエルヴィンでも何をされるかわかった。ルークは目を閉じ、ゆっくりとエルヴィンに唇を寄せる。
わかっていても逃げられなかった。
ルークはただの患者でも友達でもない。そう思い込んでまでもそばにいたいと願う、エルヴィンの大好きな人だ。
この行為が偽物だって勘違いだっていい。とにかくルークが好きだ。あとでルークに忘れられてどんな辛い目に遭おうとも構わない。ルークとの今しか考えたくない。
ルークの唇が触れる。何度か確かめるようなキスをされたあと、ルークはエルヴィンの唇を割って舌を滑り込ませてきた。
「あっ……ん……」
ルークの舌で口内を犯される。舌を弄ばれ、口蓋を舐められ、エルヴィンは息も絶え絶えになりながらもそれを受け入れた。
いい。気持ちいい。このまま何も考えずにルークに溺れてしまいたい。
「んっ……はぁっ、いい……っ」
ルークとのしびれるようなキスで、猫耳の先まで感じてしまってエルヴィンは何度もビクッと身体を震わせる。
(やばい。おかしくなる……)
キスはこんなに気持ちがよくなるものだと初めて知った。
ルークと初めてキスしたのは薬を飲ませるためで色気などない。あのときはルークに生きてほしくてエルヴィンも必死だった。そしてあれがエルヴィンのファーストキスだ。
そうじゃない、これは性愛のキスだ。
「エルヴィン、可愛い……」
ルークはキスをやめない。エルヴィンもやめてほしくなくて、ルークを求めてしまう。
「エルヴィン……俺の可愛いエルヴィン……」
ルークに名前を囁かれると、その吐息でゾクゾクする。ルークに求められているように感じて空っぽの心が満たされていく。
ルークをこれ以上好きになってしまうのが嫌で、ずっと接触を避けてきた。いつか別れがくることも覚悟しなくてはいけないとわかっている。
でも、そんなことに構ってられない。ルークとの先は真っ暗だとわかっているのに、今に溺れていく。
ルークと離れたくない。
「エルヴィン……エルヴィン……っ」
「はぁっ……殿下……!」
エルヴィンはルークとの禁断のキスに夢中になっていった。
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