その告白は勘違いです

雨宮里玖

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2 特別な時間

2-2

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「七沢、その問題わからないの? さっきからずっと手が止まってる」
「あ、あぁ……これさ、答え見てもわかんない。この式がどうしてこの式になるの?」
「それはさ」

 有馬は座っていた椅子を持ち上げて、俺の隣に移動してきた。そして俺のシャーペンを手にしてスラスラとノートに数式を書き連ねていく。

「ここが、こうなって」

 有馬はひとつひとつ丁寧に俺に数字の動きを教えてくれる。

「ここはひとつにまとめて、それから式を整える」
「ホントだ。この式に辿り着いた……」

 有馬の手にかかると複雑な数式が魔法みたいに綺麗に整えられていく。でも目の前で解法を見せつけられてわかる。そんなに難しいことはしていない。
 てか、すごいわかりやすい。

「わかった?」
「うん」
「このパターン、よく出るから。ほら、この問題も同じ。やってみて」

 有馬に言われて俺は次の問題も解いてみる。
 なんか、ひとりで勉強しているときと違う。有馬に見られているとちょっと緊張する。

「あ、そこ、こっちの考え方のほうがいいよ。先にここを揃えたほうがあとが楽だから」
「え? あ、うん。ありがと……」

 なんか、すごい優しいし。

「解けた。正解、すごい。よくできました」
「う、うん」

 正解したらいちいち褒めてくれるし。

「これと同じような問題が期末で絶対に出る。これ、覚えておいて」
「わかった。印つけとく」
「うん。そうして」

 テスト勉強のコツまで全部知ってるし。

 こうして勉強会をするようになってから、みんなが有馬に勉強を聞きにくる理由が俺にもわかった。
 有馬は親身になって手取り足取り教えてくれる。もちろん教え方もうまい。俺のできないところを理解してくれて、俺のレベルに合わせて話してくれる。
 できなくても怒鳴り散らかしたりしないし、できたら褒めてくれる。

 これは、みんな有馬にハマるだろうな。

 有馬は普段、あまり表情を変えない。誰かに馴れ馴れしくしたり、騒いだり慌てたりしない。いつも冷静だからもっとクールなやつかと思っていた。

 でも、話してみると違う。

 人のことよく見てて、気遣いがすごいし、とにかく優しい。
 真面目すぎるメガネ委員長の有馬がどうしてモテるのか、ちょっとわかった気がする。

 勉強嫌いの俺が有馬のおかげで夢中になって勉強していると、スマホのアラームが鳴った。
 十七時十五分を告げるアラームだ。俺はこれ以上学校には残れない。

「有馬、時間だ! 俺、行くとこあるからもう帰らなきゃ」

 机に広げていたものたちを迷いなく片づけて、俺は立ち上がる。

「ありがとう有馬、また来週な!」

 俺がさっさと教室を出ようとしたとき、有馬が追いついてきた。
 有馬は何も言わずに俺の横を歩いている。

「え……なに?」
「別に。俺だって今から帰るから」 
 
 たしかに。俺が帰るなら有馬も帰るに決まっている。そして俺たちが向かうのは同じ校舎の出入り口だ。
 校舎の外に出ても俺と有馬の行く先は同じ。当たり前だけど、学校の校門に向かっていく。それからも大抵の生徒は一本道で駅へと向かう。
 歩きながらも、俺はすぐ近くにいる有馬の存在が気になって仕方ない。

 どうしよう。有馬とふたりで下校しているみたいになってる。
 気まずい。
 落ち着かない。
 ちょっとなんか話しかけてみようかな。
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