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3 好きなのかな
3-3
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授業が終わったあと俺は有馬の机に急ぐ。有馬と話がしたくてたまらなかった。
「有馬っ、ありがとう」
俺は開口一番、有馬に礼を言う。
「すごいな、有馬。あれだけの内容を全部覚えててさ、マジで鳥肌立ったよ。有馬が手伝ってくれて助かった」
有馬のおかげで、俺は落ち着いて発表できた。
あそこでひとりだけ前に立たされていたら、裕太のぶんはプリントを見ながら棒読みしていたら、間違いなく発表は台無しだった。
有馬が流暢に話してくれたから、俺ものせられて笑いを取れるほどの発表にできたんだ。
そのときだった。
「緊張した。失敗するかと思った」
あの有馬が、はにかみながらそんなことを言ったんだ。
俺は有馬がこんなふうにホッとした顔をして、弱音を吐くのを初めて聞いた。
有馬でも、緊張したり、怖いと思うことはあると思う。でも、有馬はそれを決して表に出すようなやつじゃない。どんなことでも涼しい顔で、完璧にこなしてしまうような男だ。
そう思っていたのに、有馬もこんな可愛い照れ顔をするんだ。
なんか、ドキドキする……。
なんで俺、有馬を見てこんなにドキドキしてんの……?
「これをお守りにしてた」
有馬はブレザーの胸ポケットからあるものを取り出して俺に見せる。
それは、チョコエッグのおまけの小さなキャラクターフィギュアだ。
宇宙人みたいな生き物で、ちょっとお間抜けな顔をした可愛いゲームキャラクター。
そうだ。有馬が俺に似てるとか言ってたな。ホント、失礼なやつ。
「それ、俺があげたやつ?」
「うん。俺、こんなの子どもっぽくて自分で買うの恥ずかしいから」
有馬め……この前、俺が言ったことを嫌味みたいに返してきたな。
でも有馬とこんなふうに気軽に話せるのは嬉しい。
そして、俺があげたものを大切にしてくれてることは、もっと嬉しい。
俺にとってもあれは有馬との特別な思い出だったから。
「最後は七沢に助けられた。俺、最後まで覚えられなかった」
「あぁ、ラクローおじさんのくだりだろ? 裕太はホントくだらないよな。ここんとこ毎週日曜にあいつの家に行って、あそこばっかふたりで練習してたから、俺も覚えてたんだ。あぁいうバカっぽいのは、俺が言うほうが合ってたよな。有馬にはオモウマい店とか似合わないって」
「へぇ。七沢はあいつと休みの日も会ってるんだ……」
「そうだよ。ガチでここ最近は毎週。裕太は俺の成績のこと気にしてくれてるからさ。この発表で点数稼いで卒業だ! とか意気込んでたくせに」
ハイテンションの俺に対して、有馬は愛想笑いだけ。
どうしたんだろ。なんか有馬、さっきと雰囲気変わった……?
俺はその場が辛気臭くなるのが嫌で明るく振る舞う。
「裕太さ、いつも無駄に元気なくせに、なんで今日に限って休むんだよ。あいつんち、学校から近いしあとで見舞いに行きながら文句言ってやろうかな。俺をひとりにするなって。裕太がいなきゃさびしくて死んじゃうぅって。有馬がいてくれなかったら俺、爆死してたとこだよ。なぁ、まったくあいつは……」
「仲いいんだな」
「うん。高一から同じクラスなんだ。裕太はノリがよくて気が合うからずっと一緒にいるよ。この前、あいつと遊園地行ったんだけど、マジでバカでさ、今度聞かせてやるよ、裕太のお化け屋敷事件!」
裕太はお化け屋敷でやらかしたんだ。恐怖でパニックになって、どこをどう彷徨ったのか出口からじゃなくて従業員出入り口から出てきたのは、仲間うちで伝説と化している。
有馬は席から立ち上がる。そして俺のほうへと近づいてきた。
「俺の前で、あんまり他の男の話しないで」
えっ?
今、有馬はなんて……?
「莉紬ーっ、弁当食おうぜー!」
俺と有馬の会話は友達の声で遮られた。
そうだった。今日はみんなでそれぞれの家の卵焼きの味当てゲームをやる約束だった。
「じゃあ、また」
有馬はなんでもない顔をして、いつもの友達のところへと行ってしまった。
そうだよな。
同じクラスでも俺には俺の世界があって、有馬にも仲のいい友達がいる。
こんなチグハグな俺たちが友達でいるだけでも奇跡なのに、それ以上のことなんてありえないよな。
「有馬っ、ありがとう」
俺は開口一番、有馬に礼を言う。
「すごいな、有馬。あれだけの内容を全部覚えててさ、マジで鳥肌立ったよ。有馬が手伝ってくれて助かった」
有馬のおかげで、俺は落ち着いて発表できた。
あそこでひとりだけ前に立たされていたら、裕太のぶんはプリントを見ながら棒読みしていたら、間違いなく発表は台無しだった。
有馬が流暢に話してくれたから、俺ものせられて笑いを取れるほどの発表にできたんだ。
そのときだった。
「緊張した。失敗するかと思った」
あの有馬が、はにかみながらそんなことを言ったんだ。
俺は有馬がこんなふうにホッとした顔をして、弱音を吐くのを初めて聞いた。
有馬でも、緊張したり、怖いと思うことはあると思う。でも、有馬はそれを決して表に出すようなやつじゃない。どんなことでも涼しい顔で、完璧にこなしてしまうような男だ。
そう思っていたのに、有馬もこんな可愛い照れ顔をするんだ。
なんか、ドキドキする……。
なんで俺、有馬を見てこんなにドキドキしてんの……?
「これをお守りにしてた」
有馬はブレザーの胸ポケットからあるものを取り出して俺に見せる。
それは、チョコエッグのおまけの小さなキャラクターフィギュアだ。
宇宙人みたいな生き物で、ちょっとお間抜けな顔をした可愛いゲームキャラクター。
そうだ。有馬が俺に似てるとか言ってたな。ホント、失礼なやつ。
「それ、俺があげたやつ?」
「うん。俺、こんなの子どもっぽくて自分で買うの恥ずかしいから」
有馬め……この前、俺が言ったことを嫌味みたいに返してきたな。
でも有馬とこんなふうに気軽に話せるのは嬉しい。
そして、俺があげたものを大切にしてくれてることは、もっと嬉しい。
俺にとってもあれは有馬との特別な思い出だったから。
「最後は七沢に助けられた。俺、最後まで覚えられなかった」
「あぁ、ラクローおじさんのくだりだろ? 裕太はホントくだらないよな。ここんとこ毎週日曜にあいつの家に行って、あそこばっかふたりで練習してたから、俺も覚えてたんだ。あぁいうバカっぽいのは、俺が言うほうが合ってたよな。有馬にはオモウマい店とか似合わないって」
「へぇ。七沢はあいつと休みの日も会ってるんだ……」
「そうだよ。ガチでここ最近は毎週。裕太は俺の成績のこと気にしてくれてるからさ。この発表で点数稼いで卒業だ! とか意気込んでたくせに」
ハイテンションの俺に対して、有馬は愛想笑いだけ。
どうしたんだろ。なんか有馬、さっきと雰囲気変わった……?
俺はその場が辛気臭くなるのが嫌で明るく振る舞う。
「裕太さ、いつも無駄に元気なくせに、なんで今日に限って休むんだよ。あいつんち、学校から近いしあとで見舞いに行きながら文句言ってやろうかな。俺をひとりにするなって。裕太がいなきゃさびしくて死んじゃうぅって。有馬がいてくれなかったら俺、爆死してたとこだよ。なぁ、まったくあいつは……」
「仲いいんだな」
「うん。高一から同じクラスなんだ。裕太はノリがよくて気が合うからずっと一緒にいるよ。この前、あいつと遊園地行ったんだけど、マジでバカでさ、今度聞かせてやるよ、裕太のお化け屋敷事件!」
裕太はお化け屋敷でやらかしたんだ。恐怖でパニックになって、どこをどう彷徨ったのか出口からじゃなくて従業員出入り口から出てきたのは、仲間うちで伝説と化している。
有馬は席から立ち上がる。そして俺のほうへと近づいてきた。
「俺の前で、あんまり他の男の話しないで」
えっ?
今、有馬はなんて……?
「莉紬ーっ、弁当食おうぜー!」
俺と有馬の会話は友達の声で遮られた。
そうだった。今日はみんなでそれぞれの家の卵焼きの味当てゲームをやる約束だった。
「じゃあ、また」
有馬はなんでもない顔をして、いつもの友達のところへと行ってしまった。
そうだよな。
同じクラスでも俺には俺の世界があって、有馬にも仲のいい友達がいる。
こんなチグハグな俺たちが友達でいるだけでも奇跡なのに、それ以上のことなんてありえないよな。
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