その告白は勘違いです

雨宮里玖

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4 期末テスト

4-3

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「にいに」

 結月はゆっくりと身体を起こして俺に微笑みかける。

「ゆづ、このかっこいいお兄さんと待ってる」

 結月、その年でもうわかるのか。有馬の兄ちゃんは有馬と同じくイケメンだって。
 わかるよ、わかる。有馬も有馬の兄ちゃんも規格外のビジュアルだって。

「結月、俺、学校行ってきても大丈夫か?」
「うん」
「大丈夫。七沢くんが帰ってくるまで様子をみてるよ。早く、真と一緒に学校行って。期末に遅れるよ」
「すみません、本当にありがとうございます!」

 俺は有馬の兄ちゃんに頭を下げる。それからすぐに学校の支度を整えて、有馬と一緒にマンションを飛び出していく。


 電車に駆けこんでからやっと俺たちは顔を合わせた。そのくらい、猛烈に走ったんだ。

「有馬、あのっ……」

 俺は乱れた呼吸を整えてから、有馬を見上げる。

「ありがとう」

 俺のSOSに気がついてくれたこと。大丈夫だって言ってくれたこと。感謝してもしきれないことばかりで何から言えばいいのかわからなくなって、俺はそんなありきたりな言葉しか言えなかった。

「もっと早く言え。遅刻するかと思った」
「ごめん」

 相変わらずの激込み満員電車だ。走ったせいで息は切れるし、鼓動は早い。でも俺の心は穏やかだ。

 全部、全部、有馬のおかげ。
 こんないいやつ、いるんだな。優しすぎるよ有馬は。

 言葉にならない。
 有馬に伝えたい気持ちはたくさんあるのに、ごめんのあとの言葉を口にすることができない。
 有馬に出会ってから涙腺弱くなったのかな。俺、公共の場なのに涙目だよ。

 電車が揺れ俺の身体がふらつくと、有馬がそっと手を差し伸べてくれる。
 そこに、「俺が守ってやる」とか恩着せがましい言葉なんてないんだ。
 そうすることが当たり前のように、なんなら俺に気付かれないように、俺を守ろうとする。

 有馬だったら、俺、寄りかかってもいいかな。

 俺はそっと有馬の肩に頬を寄せる。
 有馬は何も言わない。嫌がることも、過剰に反応するでもなく、ただただ黙って肩を貸してくれた。

 有馬の白シャツは、俺のシャツと違う柔軟剤の匂いがする。

 早く静まれ、俺のうるさい心臓の音。
 有馬に何か言われたら、全速力で走ったせいにしよう。

 まさか正直に有馬の強さと優しさにドキドキしてるなんて答えられない。
 だって有馬は、俺を守っていることを俺が気がついていないと思っているだろうから。
 俺が「守ってくれてドキドキした」なんて言ったら、有馬は嫌だろう。


 それから、遅刻ギリギリ学校に駆け込んで、俺も有馬も無事に期末試験を受けることができた。

 保育園への休みの連絡を忘れていて、ちょっとゴタゴタしたことはどうか許してほしい。
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