その告白は勘違いです

雨宮里玖

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4 期末テスト

4-4

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「ほんっとーに! ありがとうございましたっ!」

 俺は帰宅するなり、家で結月をみててくれた有馬の兄ちゃんにこれでもかと礼を言う。
 ちなみに有馬はついて来なかった。テストが終わったあと、テニス部のみんなでテスト勉強するんだと。人気者の有馬は基本的に引っ張りだこだ。

「これっ、お世話になったお礼にっ」

 家に気の利いた菓子折りなんてないから、我が家御用達のポン酢の瓶を有馬の兄ちゃんに無理矢理押しつける。

「ありがとう。でも、礼を言うのは俺のほうだから」
「え……っ?」

 有馬の兄ちゃんの言いたいことがわからなくて俺は間抜けヅラになる。

「最近、真の様子が変わったんだ。その原因が今日わかった。七沢くんと友達になったからだ」
「有馬が? どういうことですか」

 俺は有馬の兄ちゃんに詰め寄る。
 気になる。聞きたい。有馬のこと。

「あいつ、おっかしいんだよ。夕飯のときにさ、急に母さんに『いつもありがとう』とか言って。皿とか洗い出してさ。受験生なんだからそんなことしなくていいって言っても、『俺は恵まれてる』とか『友達でやってるやつがいる』って手伝うんだ」
「わぁ……」

 その話を聞いて俺も驚いた。有馬の中で、なにか思うことがあったのかもしれない。

「で、極めつけは今日の行動だ。真は絶対に俺を頼ったりしない。仲悪いってことはないけど、なんで言うんだろな……人に頼ったら負けとでも思ってんじゃないのっていうタイプで。それなのに、真は俺に頭を下げて『頼みがある』って言ってきた」
「そうだったんですか……」

 知らなかった。有馬はそこまでして兄ちゃんをここに連れてきてくれたんだ。

「頼ってもらえて嬉しかったね。兄として。真は言動が完璧すぎてアンドロイドかと思うような弟だったけど、最近あいつから人間らしさを感じるんだよ」
「アンドロイドっ?」

 ちょ、お兄さん。弟のことアンドロイドとか言うの、ひどくないですか。
 あれ、でも有馬の優秀な兄ちゃん捕まえて『猫の手』呼ばわりしてたな。

「あいつを見てて思わない? 絵に描いたようないい子って感じでさ、反抗期もなかった。文句は言わないし、誕生日に食べたいもの聞かれても、好きなものもろくに答えられないんだ。あれはあれで問題ありだ。小っちゃいころはもっと我が儘だったのにな」
「好きなものを、答えられない……?」

 それを聞いて俺は思い出した。

 有馬との勉強会の帰り道、俺が有馬と無言になるのが気まずくて有馬を質問攻めにしたときのことを。

 好きな食べ物を聞いてもまともに答えてくれなくて、俺と会話したくないのかなって思ってたけど、実は有馬は自分の好きを語るのが苦手だったんだ。

 そして、有馬がそうなってしまった原因を、多分、俺は有馬から聞いて知っている。

 あの読書感想文の失敗のせいじゃないか。
 自分を表現して笑われた有馬は、あのときから自分を出すことが怖くなったのかもしれない。
 自分を出さない。嫌われないように、笑われないように、完璧に。

 それであの優等生、有馬真が構築されていった。俺はそんな気がしてならない。
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