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7 一緒にいたいから
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夜になり、寝支度を整えた俺と有馬は、俺のベッドの隣にもうひとつ布団を敷く。これは父さんが使っていたものだ。今はいないから有馬が使うことになった。
俺はベッド、有馬は布団に寝転がったんだけど、俺たちは会話が途切れない。学校のこと、今までハマってきたもの、それから少しだけ将来のことを話した。
「有馬、受験が終わったらさ、ふたりでどっか出かけない?」
俺はベッドで横向きになり、布団にいる有馬に声をかける。
「いいよ。どこ行こうか」
「そうだなぁ。遊園地とか楽しそうだな。有馬は、絶叫系とか乗れる?」
「多分、いけると思う」
「おっしゃ、いいね。行こう。約束な!」
俺が親指を立ててグッドサインを送ると、有馬は同じ形の手をぶつけてきた。それから有馬は俺の手を握りしめてくる。
「今のうちに、たくさん思い出を作りたいな」
宙を眺めながら有馬が呟いた言葉に、胸が痛くなる。
俺はあまり考えないようにしていたけど、もしかしたら俺たちは数年間、離れ離れになるかもしれない。
「そうだね……」
後悔のないようにって、できることは今のうちにって、よく聞く言葉だ。会えなくなってからじゃ遅いから。
それに、離れているあいだに、有馬が心変わりすることもあるかもしれない。俺よりもっと素敵な人に出会うかもしれない。
でも俺との記憶がたくさんあれば、有馬が俺を思い出してくれて、踏みとどまってくれる可能性が高くなるんじゃないか。
そんなことを考えてたら急にさみしくなってきて、俺は有馬の手を弱く握り返す。
しばらくの沈黙。
俺たちはただ、何も言わずに手を握り合っているだけ。
その手から有馬の存在を強く感じる。有馬の気持ちが伝わってくる。
「あのさ」
静寂を破って、有馬が口を開いた。
「そっち、行っていい?」
そう言われて、俺は言葉は何も返さなかった。返事の代わりに有馬の手をぎゅっと握る。それで、有馬には俺の気持ちが伝わったみたいだ。
有馬は俺のベッドへ潜り込んできた。シングルベッドに男ふたりで寝る。でも、有馬とだったらまったく狭いと思わなかった。
「有馬。ずっと一緒にいよう」
それは約束でも束縛みたいなものでもなく、ただの俺の願い。
叶うかどうかはわからない。
でも、誰だって願うことくらいは許されるだろ?
「うん。そうしよう」
そんな俺の願い事に、有馬が頷いてくれた。ホント優しいやつ。俺、有馬のこと大好きだよ。
「ずっと一緒にいるってことは、七沢はずっと俺の恋人でいてくれるってことだよな?」
有馬が俺のほうへと身体を寄せてくる。
ほのかに有馬からシャンプーの香りがした。俺が普段使ってるシャンプーと同じ匂い。
そうだよな、有馬は今日うちでシャワーを浴びたんだから。
「ま、まぁ……そういうことになるかも……」
そうだよな。俺は有馬と別れる気はないから、ずっと有馬と付き合うことになるのかな。先のことはわからないけど、有馬がそばにいてくれたら嬉しいな。
「俺がいる未来を想像して、そんな可愛い顔するの、反則」
柔らかな手が俺の髪を撫でる。そして流れるようにごく自然に、有馬は俺の頬にキスをした。
「ほ、ほら、寝るぞっ」
俺は急に恥ずかしくなって有馬に背を向ける。
「うん」
有馬は俺を抱き枕にするみたいにして背後からくっついてきた。
有馬の体温を感じる。優しく俺を包み込む有馬の腕の重みが心地いい。
鳴り止まない心臓の音。目を閉じても、いっこうに眠気が訪れてこない。
今、有馬のほうを振り向くことはできない。
これ以上のことは、俺の心臓がもたないよ。
振り向いたら、俺はもっともっと有馬のことを好きになる。そして俺はそのまま深みにはまっていくんだ。
この予感は決して勘違いなんかじゃない。
「おやすみ」
吐息混じりの有馬の声。それを聞いて、俺の気持ちが少し落ち着いてきた。
よし。
この調子なら眠れそう。
……と、思っていたのに!
「ねぇ七沢、こっち向いて」
俺の身体を抱きしめ、甘いことを囁く、魅惑的な有馬のお誘い。
だから、俺はこれ以上は無理だって!
「七沢、俺のこと好きならこっち向いて」
「えっ……!」
そんなこと有馬に言われたら、拒めるわけがないだろ!
やばい俺、今夜は眠れそうにない。
――完。
俺はベッド、有馬は布団に寝転がったんだけど、俺たちは会話が途切れない。学校のこと、今までハマってきたもの、それから少しだけ将来のことを話した。
「有馬、受験が終わったらさ、ふたりでどっか出かけない?」
俺はベッドで横向きになり、布団にいる有馬に声をかける。
「いいよ。どこ行こうか」
「そうだなぁ。遊園地とか楽しそうだな。有馬は、絶叫系とか乗れる?」
「多分、いけると思う」
「おっしゃ、いいね。行こう。約束な!」
俺が親指を立ててグッドサインを送ると、有馬は同じ形の手をぶつけてきた。それから有馬は俺の手を握りしめてくる。
「今のうちに、たくさん思い出を作りたいな」
宙を眺めながら有馬が呟いた言葉に、胸が痛くなる。
俺はあまり考えないようにしていたけど、もしかしたら俺たちは数年間、離れ離れになるかもしれない。
「そうだね……」
後悔のないようにって、できることは今のうちにって、よく聞く言葉だ。会えなくなってからじゃ遅いから。
それに、離れているあいだに、有馬が心変わりすることもあるかもしれない。俺よりもっと素敵な人に出会うかもしれない。
でも俺との記憶がたくさんあれば、有馬が俺を思い出してくれて、踏みとどまってくれる可能性が高くなるんじゃないか。
そんなことを考えてたら急にさみしくなってきて、俺は有馬の手を弱く握り返す。
しばらくの沈黙。
俺たちはただ、何も言わずに手を握り合っているだけ。
その手から有馬の存在を強く感じる。有馬の気持ちが伝わってくる。
「あのさ」
静寂を破って、有馬が口を開いた。
「そっち、行っていい?」
そう言われて、俺は言葉は何も返さなかった。返事の代わりに有馬の手をぎゅっと握る。それで、有馬には俺の気持ちが伝わったみたいだ。
有馬は俺のベッドへ潜り込んできた。シングルベッドに男ふたりで寝る。でも、有馬とだったらまったく狭いと思わなかった。
「有馬。ずっと一緒にいよう」
それは約束でも束縛みたいなものでもなく、ただの俺の願い。
叶うかどうかはわからない。
でも、誰だって願うことくらいは許されるだろ?
「うん。そうしよう」
そんな俺の願い事に、有馬が頷いてくれた。ホント優しいやつ。俺、有馬のこと大好きだよ。
「ずっと一緒にいるってことは、七沢はずっと俺の恋人でいてくれるってことだよな?」
有馬が俺のほうへと身体を寄せてくる。
ほのかに有馬からシャンプーの香りがした。俺が普段使ってるシャンプーと同じ匂い。
そうだよな、有馬は今日うちでシャワーを浴びたんだから。
「ま、まぁ……そういうことになるかも……」
そうだよな。俺は有馬と別れる気はないから、ずっと有馬と付き合うことになるのかな。先のことはわからないけど、有馬がそばにいてくれたら嬉しいな。
「俺がいる未来を想像して、そんな可愛い顔するの、反則」
柔らかな手が俺の髪を撫でる。そして流れるようにごく自然に、有馬は俺の頬にキスをした。
「ほ、ほら、寝るぞっ」
俺は急に恥ずかしくなって有馬に背を向ける。
「うん」
有馬は俺を抱き枕にするみたいにして背後からくっついてきた。
有馬の体温を感じる。優しく俺を包み込む有馬の腕の重みが心地いい。
鳴り止まない心臓の音。目を閉じても、いっこうに眠気が訪れてこない。
今、有馬のほうを振り向くことはできない。
これ以上のことは、俺の心臓がもたないよ。
振り向いたら、俺はもっともっと有馬のことを好きになる。そして俺はそのまま深みにはまっていくんだ。
この予感は決して勘違いなんかじゃない。
「おやすみ」
吐息混じりの有馬の声。それを聞いて、俺の気持ちが少し落ち着いてきた。
よし。
この調子なら眠れそう。
……と、思っていたのに!
「ねぇ七沢、こっち向いて」
俺の身体を抱きしめ、甘いことを囁く、魅惑的な有馬のお誘い。
だから、俺はこれ以上は無理だって!
「七沢、俺のこと好きならこっち向いて」
「えっ……!」
そんなこと有馬に言われたら、拒めるわけがないだろ!
やばい俺、今夜は眠れそうにない。
――完。
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