その告白は勘違いです

雨宮里玖

文字の大きさ
67 / 76
7 一緒にいたいから

7-12

しおりを挟む
 夜になり、寝支度を整えた俺と有馬は、俺のベッドの隣にもうひとつ布団を敷く。これは父さんが使っていたものだ。今はいないから有馬が使うことになった。

 俺はベッド、有馬は布団に寝転がったんだけど、俺たちは会話が途切れない。学校のこと、今までハマってきたもの、それから少しだけ将来のことを話した。

「有馬、受験が終わったらさ、ふたりでどっか出かけない?」

 俺はベッドで横向きになり、布団にいる有馬に声をかける。

「いいよ。どこ行こうか」
「そうだなぁ。遊園地とか楽しそうだな。有馬は、絶叫系とか乗れる?」
「多分、いけると思う」
「おっしゃ、いいね。行こう。約束な!」

 俺が親指を立ててグッドサインを送ると、有馬は同じ形の手をぶつけてきた。それから有馬は俺の手を握りしめてくる。

「今のうちに、たくさん思い出を作りたいな」

 宙を眺めながら有馬が呟いた言葉に、胸が痛くなる。
 俺はあまり考えないようにしていたけど、もしかしたら俺たちは数年間、離れ離れになるかもしれない。

「そうだね……」

 後悔のないようにって、できることは今のうちにって、よく聞く言葉だ。会えなくなってからじゃ遅いから。

 それに、離れているあいだに、有馬が心変わりすることもあるかもしれない。俺よりもっと素敵な人に出会うかもしれない。
 でも俺との記憶がたくさんあれば、有馬が俺を思い出してくれて、踏みとどまってくれる可能性が高くなるんじゃないか。

 そんなことを考えてたら急にさみしくなってきて、俺は有馬の手を弱く握り返す。

 しばらくの沈黙。
 俺たちはただ、何も言わずに手を握り合っているだけ。
 その手から有馬の存在を強く感じる。有馬の気持ちが伝わってくる。


「あのさ」

 静寂を破って、有馬が口を開いた。

「そっち、行っていい?」

 そう言われて、俺は言葉は何も返さなかった。返事の代わりに有馬の手をぎゅっと握る。それで、有馬には俺の気持ちが伝わったみたいだ。

 有馬は俺のベッドへ潜り込んできた。シングルベッドに男ふたりで寝る。でも、有馬とだったらまったく狭いと思わなかった。

「有馬。ずっと一緒にいよう」

 それは約束でも束縛みたいなものでもなく、ただの俺の願い。
 叶うかどうかはわからない。
 でも、誰だって願うことくらいは許されるだろ?

「うん。そうしよう」

 そんな俺の願い事に、有馬が頷いてくれた。ホント優しいやつ。俺、有馬のこと大好きだよ。

「ずっと一緒にいるってことは、七沢はずっと俺の恋人でいてくれるってことだよな?」

 有馬が俺のほうへと身体を寄せてくる。
 ほのかに有馬からシャンプーの香りがした。俺が普段使ってるシャンプーと同じ匂い。
 そうだよな、有馬は今日うちでシャワーを浴びたんだから。

「ま、まぁ……そういうことになるかも……」

 そうだよな。俺は有馬と別れる気はないから、ずっと有馬と付き合うことになるのかな。先のことはわからないけど、有馬がそばにいてくれたら嬉しいな。

「俺がいる未来を想像して、そんな可愛い顔するの、反則」

 柔らかな手が俺の髪を撫でる。そして流れるようにごく自然に、有馬は俺の頬にキスをした。

「ほ、ほら、寝るぞっ」

 俺は急に恥ずかしくなって有馬に背を向ける。

「うん」

 有馬は俺を抱き枕にするみたいにして背後からくっついてきた。
 有馬の体温を感じる。優しく俺を包み込む有馬の腕の重みが心地いい。
 鳴り止まない心臓の音。目を閉じても、いっこうに眠気が訪れてこない。

 今、有馬のほうを振り向くことはできない。
 これ以上のことは、俺の心臓がもたないよ。
 振り向いたら、俺はもっともっと有馬のことを好きになる。そして俺はそのまま深みにはまっていくんだ。

 この予感は決して勘違いなんかじゃない。

「おやすみ」

 吐息混じりの有馬の声。それを聞いて、俺の気持ちが少し落ち着いてきた。

 よし。
 この調子なら眠れそう。
 ……と、思っていたのに!

「ねぇ七沢、こっち向いて」

 俺の身体を抱きしめ、甘いことを囁く、魅惑的な有馬のお誘い。
 だから、俺はこれ以上は無理だって!

「七沢、俺のこと好きならこっち向いて」
「えっ……!」

 そんなこと有馬に言われたら、拒めるわけがないだろ!
 やばい俺、今夜は眠れそうにない。 


 ――完。

しおりを挟む
感想 185

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

俺の彼氏は真面目だから

西を向いたらね
BL
受けが攻めと恋人同士だと思って「俺の彼氏は真面目だからなぁ」って言ったら、攻めの様子が急におかしくなった話。

彼氏の優先順位[本編完結]

セイ
BL
一目惚れした彼に告白されて晴れて恋人になったというのに彼と彼の幼馴染との距離が気になりすぎる!恋人の僕より一緒にいるんじゃない?は…!!もしかして恋人になったのは夢だった?と悩みまくる受けのお話。 メインの青衣×青空の話、幼馴染の茜の話、友人倉橋の数話ずつの短編構成です。それぞれの恋愛をお楽しみください。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

きみが隣に

すずかけあおい
BL
いつもひとりでいる矢崎は、ある日、人気者の瀬尾から告白される。 瀬尾とほとんど話したことがないので断ろうとすると、「友だちからでいいから」と言われ、友だちからなら、と頷く。 矢崎は徐々に瀬尾に惹かれていくけれど――。 〔攻め〕瀬尾(せお) 〔受け〕矢崎(やざき)

美澄の顔には抗えない。

米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け 高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。 ※なろう、カクヨムでも掲載中です。

処理中です...