チョコレートのきみ

nanomaru

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僕のことと君のこと

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あれから、電車に乗る度に彼のことが頭に浮かんだ。

もう少しお近づきになりたい。

パティスリーなら、話が合うかもしれない。
そう期待しても、やはり、彼に話しかけるのは憚られた。
あれから、時間が合わないのか、彼に遭遇することもなかったのだ。なんだか、モヤモヤした気持ちのまま焼き菓子の講習に参加してたら、失敗してしまっていた。黒焦げになったフィナンシェを見つめながら、やはり、あのお店に行ってみようと決心した。

いつもは降りない駅にまた足を踏み荒れることはなんだか、やっぱり勇気がいった。
足元から震えが走っていたが、一歩また一歩とあの「ショコラトリー田中」に近づいていた。

さぁ、彼に会うんだ!

そっとドアを開くと、まずチョコレートの甘い匂いが鼻につく。
中も綺麗なチョコレート色をした壁に、シャンデリアまでチョコレート色をしていた。
ショーケースには、チョコレートとケーキが並んでいた。灯りはほんのり薄暗く落ち着いた店内は、僕のような若い男には、不釣り合いなお店だった。

「いらっしゃいませ。」
僕が店内を見渡してると、背後から声をかけられた。彼だった。

「あの、ちょっと、気になるお店だったので。」と、しどろもどろになりながら、何かいいわけめいたことを口走っていた。

「チョコレートはお好きですか?」
「ええ、はい!」
「男の方のお客様は珍しいので、つい嬉しくてお声がけしてしまい、申し訳ありません。」
と、彼は会釈した。

「あの、僕も今、勉強中で、その、将来は、パティシエになるのが、目標なんで、お店を食べ歩いてるんです!」
顔が赤く火照るのが、自分でもわかる。心にもないことを口走る。
「素敵ですね。僕はただの受付なんです。このお店のオーナーが父なもので。」
照れ臭そうに笑う彼が可愛かった。
「そ!そうなんですね!」
「うちのチョコレートはお値段はしますが、味は保証しますよ。」
と、また彼は微笑んだ。

可愛かった、可愛かったんだ!

「どれになさいます?」
と、急にそくされて、気持ちが動転していた。
「お、おすすめとか、ありますか?」
「そうですね。個人的に好きなのは・・・・・・このガナッシュかな。」
「こっちのガトーショコラもおすすめですよ。」
と、また微笑む。

心臓が飛び出そうだ!チョコより君に興味があるなんて言えない、絶対言えない!

「お、おすすめ、全部ください!」
「ありがとうございます。」

今月の仕送りが!失くなっていく!バカか!俺は!

「またのお越しをお待ちしております。」
「また、是非、来ます!」

と、チョコレートをたんまりと買い込んで僕は店を出た。
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