復讐に燃えたところで身体は燃え尽きて鋼になり果てた。~とある傭兵に復讐しようと傭兵になってみたら実は全部仕組まれていた件

坂樋戸伊(さかつうといさ)

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亮平

亮平 -04

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 暗い暗い闇の中。
 「誰か」が膝を抱えて座っている。

 ぼんやりと、焦点の定まらない視界でみるその横顔は、自分の眼尻にある古傷のようなシミが見えていた。

「お前は……?」

 その横顔がこちらへ向いたとたんに視界は白く眩しく光り、そのまま、より深い眠りに叩き落された。

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「おい!」

 ベッドの上に寝転がっていた俺の足元に、ワークブーツの蹴りが飛んでくる。
 大分荒っぽい起こし方をするやつもいたもんだとうっすら目を開けると、飛び込んできたのはかなり見目整った美人だった。
 そうだ、この女、俺のマネージャーだ。

「いったいいつまで寝ているつもりだ?」

 あれだけの衝撃があったにもかかわらず、外傷はほとんどないらしい。シートのハーネスでこすった傷が胴を中心に見えるが、それ以外はほとんど皆無と言っていい。つまり、生き延びて、晴れてLASで仕事ができるようになったというわけだ。仕事ができる、と言っても、復讐を成し遂げるにあたって必要な条件を一つクリアした、ということに過ぎない。ライセンスを取ったところで、あの傭兵を殺せなければ何の意味もないのだ。

「……言いたいことはそれなりにあるようだが、これでお前はLASの傭兵だ。規範云々を言う気はない。お前はお前の定めた目標を見続けろ。」

 アリスはそう言いながら、携帯デバイスを操作する。そして、その画面を見せた。LASの傭兵がアクセスする、ゲートウェイのページだ。

「本人が操作を必要としないところは粗方こちらで手配が終わっている。マネージャーとして私も登録したところだ。マネージャーがもつアカウント権限は傭兵本人との契約内容次第だが、とりあえず依頼の受諾、応募についてはこちらにも権限がある状態にした。」

 本来、傭兵は単独でオペレーターなどの手配までもすることがあるのだが、まったくの素人である亮平が突拍子もない依頼を受けたり、あるいは害意が潜んでいそうな案件を弾く為にも、アリスがしばらく依頼の選定をすることになった。
 依頼をこなしながら、ひとかどの傭兵として生計を立てられるよう、レクチャーも兼ねる、とのことだった。

「LASへ入れたらそれでお別れ、ってことじゃないんだな……」

 思ったことが口をついて出てきた。

「復讐を成し遂げる前に野垂れ死んで構わん、というのなら私はマネージャーを降りるが?」

 アリスはベッドの傍らにあった椅子に座り、肩をすくめて亮平に投げかけ、さらに続ける。

「それはお前が決めるところだが、まともに装備も、経験もない状態で依頼を受けて、早々に退場、となられても困るんだがなあ……」

 器用に片目を瞑り、値踏みするような顔で亮平の顔を見るアリス。

「最短で行く道が、アリスのマネージメントを受けつつ行く道であるなら、俺はそっちでいい。」

 強く、ただ強く目を光らせる。その外見には似合わぬほど昏い気を漂わせて、自分の行く道を宣言する。

「……よくわかった。」

 そう言いながらアリスは立ち上がり、亮平に背を向け立ち去ろうとする。ドアを開け放ったあと、彼女はこう言った。

「本当を言うと、この一回で終わらせると思っていなかった。よくやった。結果がどうであれ、ひとまずの目標をクリアできたぞ。今はしっかり休め」

 その言葉を聞いて、亮平はベッドに体を預ける。

 また、明日から血反吐を吐き出すような教練と、さらに依頼で実戦をこなしていくことになる。今日までと違う、より昏い覚悟が必要になるだろう明日を思いながら、眠りに落ちていった。

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 杉屋亮平にとって不幸なことは、彼の周りの誰もがその日にいなくなってしまったことだ。
 それまでの彼をよく知る友人、そこまで育てた親、そして、出会った人々。だれも、憎しみがどういうものであるのか、どう自分の周りの世界と関わっていくことが幸せに近づけるのか、伝えられるものは居なかった。

 何よりも、彼が生み出された出自を知っている父が亡くなってしまい、「ヒトとして」生きる道がわからなくなってしまった。

 まだ、亮平かれは知らない。自分が大きな災禍の中心にいることを。
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