復讐に燃えたところで身体は燃え尽きて鋼になり果てた。~とある傭兵に復讐しようと傭兵になってみたら実は全部仕組まれていた件

坂樋戸伊(さかつうといさ)

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アリス

アリス-05

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 ブリーフィングを終え、各自が持ち場に着く。オペレーターとして作戦に参加することになったため、用意された席へ着き、戦域マップや機体ステータス、レーダーとの同期をしていく。通信状況と、作戦の最終確認のため亮平へ呼び掛ける。
「こちらHQ。聞こえるか?アルファ1ワン、亮平。」
「聞こえてるよ。」

 傍受されたところで暗号化されている通信なのでコールサインを決めなくとも問題ないのだが、念のためコールサインを伝え、以降はそれで呼ぶことにする。

「アルファ1、HQの戦域マップデータをお前の機体と同期した。戦域のデータはよく確認しておけ。」
「アイアイマム」

 続いて同時に作戦に参加している傭兵にもコールサインを伝えていく。アルファ(A)は亮平のみで他のブラボー(B)、チャーリー(C)、デルタ(D)、エコー(E)はそれぞれ、シノノメ私兵のAVが4機つき、BとCにはそれぞれ傭兵が割り当てられている。秘匿されているとは言え、幹線がほど近い場所に位置しており、3人の傭兵はその幹線に近い位置に配置する。
 事前に敵戦力がわかっていればもう少し偏った配置になったのだろうが、最良で襲撃はブラフになる可能性があるうえ、どの位置から来るかもわかっていない。このため、それぞれの武装の射程がぎりぎり重なるくらいの守備範囲を初期位置として設定したのだ。

「作戦開始時間まであと600。時計合わせ。……カウント開始。5、4、3……今。」

 一定時間を区切って行う作戦であるため、各自の時計を合わせる。

『コントロールよりHQ、全部隊、迎撃態勢です。』
「了解。全部隊、索敵範囲に敵機バンディット、並びに不明機ボギーが侵入した場合は迷わず撃て。以上。」

 作戦区域に配置された全機の態勢が整ったことを確認、レーダーに捕まえたIFFに反応しない機体はすべて排除対象であると再確認する。そして、作戦が始まるのだった。

「作戦開始」

 その宣言があってから、およそ2時間はそのまま待機状態となった。犯行グループの予告した時間を過ぎて、防衛線から一番遠い小隊からだらけた空気が漂い、それが伝播していく。通信に私語が多くなってきていた。

『よー。アルファ1、傭兵のアンチャンよ。』

 疲れたことを微塵も隠さない声音で緊張をほぐそうとしているのか、デルタ部隊の兵士が亮平に呼び掛ける。亮平には基本的には作戦目標に関わること以外やり取りしないよう言いつけている。滅多なことを喋れば、ゆくゆくは何らかの不利を被る可能性があるからだ。おそらく他愛ない無駄話をしたいのだろう。ひとまず私がそれに応えることにする。

『私語は慎んでもらいたい、デルタ1。彼のマネージャーである私が答えよう。作戦に関わる話か?』
『お。ママが出張ってきたか』

 揶揄うつもりの声音が聞こえる。私兵団所属の人間はいずれも亮平より一回りは年上と見える。大方、予測していた攻撃が無い事から通常の警備任務と同じような感覚になってきているのだろう。彼の口ぶりは新兵いじりのそれだと感じられる。確かに保護者の側面が無いわけではないが、ここでその話をしてもこの男を調子づかせるだけだ。

『で、用件は?』
『いやいや。ママのおっぱいもらうついでに、傭兵のアンチャンは童貞をもらわれちまったのかなあ、って気になったんでさあ。』

 そういって男は下卑た笑いを漏らす。それにつられて、コントロールルームに居る何人かからもくつくつと笑い声がした。しょうもない話だ、と心の中ではデルタ2や嗤っている連中を蔑みつつ、亮平へ命令を出す。

『アルファ1、お前は口を出すなよ。』
『アイマム。』

 短く返答が返ってきた声を聴き、デルタ2の戯言に返答する。

『作戦中だ。答える義理は無かろう。欲求が溜まっているならお望み通りお前が枯れ果てて許しを乞うてくるくらいに搾り取ってやろうか』
『おおやおや。ママが相手してくれるってか!』

 今度こそ無線に下卑た笑いと、はやし立てる声が入り始めた。

『マネージャー殿!指揮官殿!私も加わりたいで有ります!めくるめく夜戦を愉しみたいであります!』
『おいだまれチャーリー4!俺が先約だろうが』

 そんな猿どもの無線騒ぎが盛り上がろうとしたその時。

『ミサイル警報!10時方向から飛来!』
『ブラボー、チャーリーの2隊は散開しつつ発射元の確認を急げ!』

『アイマム!』
『ラジャー!』

 練度はそこそこあったらしいシノノメの兵たちは指示通り散開し、周辺索敵を始める。

『こちらブラボーリーダー……ちょっと数がおかしかねえか?そっちのレーダーは何見てるんだよ?接敵まであと200!方位225!』

 ブラボーリーダーからの通信。どうやら欺瞞されていたらしい。全く動きが無く、緩み始めたところを突かれた。実際には相当の数の敵が動いていたらしい。

「……はあ、こいつら相手に楽な作戦は無い。か……」

 コントロールルームからそんなボヤキが聞こえるほどに、予測以上の戦力で敵は詰めかけていた。
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