復讐に燃えたところで身体は燃え尽きて鋼になり果てた。~とある傭兵に復讐しようと傭兵になってみたら実は全部仕組まれていた件

坂樋戸伊(さかつうといさ)

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アリス

アリス-04

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 その傭兵、杉屋亮平の復帰戦は、概ね予想通りの結果になった。
 この調子でいけば、近いうちに荒川を凌駕するだけの実力となるだろう。依頼をこなし、傭兵として、戦士としての経験を積み、武装を更新してより強くなっていく。実を言えばこんなに時間をかけずともより早く強くする方法はあるが、それはヒトであることをやめ、純粋に目的を果たすための力を得る手段だ。そして、その末を私はよく知っている。だから、まっとうと言える方法で亮平には己を鍛えるための道筋を示したのだ。亮平は心を折り、躓きながらも立ち上がって見せた。これからも、多くの困難があるだろうが、おそらくぶれることなくただ仇を討つ、そのために研鑽を積んでいくだろう。
 もしかしたら、その先にある未来も、見えてきたかもしれない。

 だが、私のそんな思いはとても甘い楽観だったと、思い知らされることになる。


 アリーナにおいて、亮平はいい戦績を勝ち取れるようになっていた。また、依頼を受けても問題ないと判断し、LASが斡旋してくる依頼も、他の傭兵と同じく適度にこなすようにも変えていく。傭兵としての実力が上がったことを受け、徐々にライズテックやシノノメなどからの依頼も受けることになり、その難度と報酬も上がっていった。そんな中、とある依頼を受けることになる。

『シノノメ重機開発 第23事業部 重機部品開発第4部 実装評価第1課

 先日、とある集団から脅迫のメールが届きました。内容は、今私が開発中のFCSの検証データと最新版の設計データを譲渡しなければ、私の居る事務所を襲撃するといった内容です。この脅迫については差出人不明です。今のところ実害は本当に些細なものですが、古典的なクラッキング攻撃を受けていました。それを撃退した結果としていよいよ直接的、物理的な方法を出して脅迫をしてきています。クラッキングについては逆探知をかけて反撃をしようとしていたのですが、全く陰を掴めず、脅迫者側も焦れたのか今回の依頼に至る脅迫が来た、というわけです。
 経緯は上司にも連絡はしており、護衛の手配もしているのですが、念には念を、ということで傭兵を雇うこととなりました。十分な報酬を用意できていると考えていますが、戦闘が発生した際、撃破記録をもとに追加報酬を払う用意もあります。

 今回の製品にはそうするだけの価値がある製品だと自負しております。
 どうぞ奮ってご参戦ください。


報酬:40,000 ND』

 撃破記録に応じて追加あり、というかなり美味しい案件だった。しかし、ここまで高い報酬だと、裏があるものと疑ってしまいたくなるところだが、前金での支払いでは無い事、さらに楽観的な見方をすれば文面からおそらく実際の襲撃は無いと考えているが、襲撃があった際の備えとして傭兵を雇う選択を取ったのだろう。
 その程度の考えで有ればシティガードを依頼したほうがいい気がするが。
 最悪の事態として、"管理者"が釣り餌として力を持ち過ぎた対象の排除をしようと動いた可能性もあるが、こと亮平についてはそこまで派手な成績にはなっていないはずだ。特に、一度心が折れてからしばらくはまともに稼働できていないし、アリーナの戦績も散々な状態だったので、勝率は並みの新人より少し上程度、ランク上位から見ればその足元に指先が届くかも怪しいレベルだ。そんな人間を管理、排除対象とするほど暇ではないはずだ。
 おそらく、何らかの裏はあると見えるが、傭兵の立場でそこまで見る必要は無い。さらに、亮平の実力ならば撃破死亡まではほぼ無い依頼とみていいと判断し、このシノノメからの依頼を受けることにした。
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