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7章 活気のないピエール王国

第31話 町にて

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 魔女がウトウトと寝ていると、キューとちいが魔女の布団に現れた。
「うわ!びっくりした。そうか。ドルゾーのネックレスの近くに戻るんだったね」
「ごめんなさい。魔女さん」
「ただいま~」
「おお!キュー。人間になったね。良かった。魔法はリセットされたんだね」
ミンクーの世界はお昼だった。キューとちいは町に買い物に行った。
「コングもジルも驚いていたね。魔法が解けた僕を見て」
「わたしの世界の服がびっくりしたのよ。早くこの世界の服をそろえましょう」ちいが言った。
町の者はキューの服を白い目で見て、ヒソヒソと噂話うわさばなしをしていた。
「なんか嫌だな。この町の人」
「キューのふるさとでしょう?わすれたの?」
「だめだ。やっぱり記憶があまりない。記憶は戻らなかった」
「そう・・今に思い出すよ」
「そうだといいけど」
 二人は服屋に着いた。いろいろな服が飾ってある。
「お客さん、まだ子供だね。お金持っとるのかね?」店主が言った。
「あります。大丈夫です」キューが言った。
「それならいいが」
「ちい、この服にする。どうかな?」
「いいね。身軽そうね」
「この服、下さい」キューがお金を出した。
「あいよ」店主はぶっきらぼうに金を受け取った。

 キューは服を着替え、ちいと町をぶらぶらしていた。コングに出会った。
「おお。服、買ったのか?」
「うん。コングはどこに行くの?」
「minku coffeeに行くところだ。一緒に行くか?」
「行く。行く」
 三人はminku coffee店へ向かった。
「本当は酒が飲みたいけどな」コングが豪快に笑った。
コングが笑うと、町の人はとてもびっくりして見ていた。
「なんか、元気がない町だな。ピエール王国という所は」
「うん・・みんな暗い顔で不機嫌だね」キューが言った。
「おっとそうだ。珈琲屋に行くなら、帽子をかぶらなきゃ。僕が王子と分かる人もいるだろうから」キューはさっきの店で買った、帽子を深くかぶった。
「minku coffeeってチェーン店なの?ペトンの町にもあったけど」
「そうだ。チェーン展開している」コングが言った。
「スタパみたいね」
「スタパ?なにそれ?」キューが不思議そうにした。
(パパもどこかの店で働いていたんだ)
「どうも広くて分からんな。人に聞くか」
 コングはあたりにいた中年の男にminku coffee店への道を聞いた。
「すまんが、分かるかい?」
「ああ、あんたらよそ者か。この先を曲がるとあるよ」
「ありがとう」コングは礼を言った。
「外の世界は・・この町の外は黒い国がやっぱりはびこっているのかな・・」男が暗い顔で言った。
「どこもかしこも魔物でいっぱいだった」
「そうだよね・・この町を出たいのだが・・」男はか細く言うと、去っていった。
三人はminku coffeeに着いた。

 扉を開けると、もくもくと煙草たばこの煙が充満していた。
先にいた客は3人を見ようともしない。煙草を死んだような目で吸って、コーヒーをすすっていた。3人は席についた。
コングは、
「やはり、極みブレンドか、いや夜空ブレンドにしよう」
「僕は紅ブレンド」とキュー。
「わたしはまたフルーツジュースよ」
3人はマスターに注文した。マスターは無言でうなずいた。しばらくすると、マスターは飲み物を運んできた。黙って、テーブルに飲み物をおいた。
コングはコーヒーを一口飲んだ。
「うむ・・なにか、他のお店と違う」
「どれどれ」キューも一口。
「ん・・。なんか気の抜けたような・・」
「わたしのも、フレッシュ感が・・」
3人は黙り込んでしまった。
コングは隣りにいた、痩せた男に話しかけた。
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