偽りの姿(仮)

麻沙綺

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6話 冬哉兄さんの寮部屋にて

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  寮の廊下を歩いてたら。
「幸矢。早速来たんだな。」
  目の前に冬哉兄さんが居た。
「うん。兄さんに相談したいこともあったし……。」
  まぁ、単なる暇潰しだけど……。
「わかった。俺の部屋に行くか?」
  私は、冬哉兄さんの後ろを付いていった。


「ここが、俺の部屋。」
  そう言って、ドアを開けて中に招き入れてくれた。
「一人部屋だから、気がね無しに話せる。」
  陽気な声を出して言う、冬哉兄さん。
「相変わらず、小綺麗にしてるんだね。」
  部屋の中を見渡してそう呟けば。
「小綺麗って……。まぁ、幸矢ならそう言う感想を持つだろうな。ほら、そんな所に立ってないで、座れよ」
  冬哉兄さんに進められるまま、椅子に座り兄さんは、ベッドの縁に座る。
「しかし、おばさんから連絡貰った時は、ビックリしたぞ。まさか、幸矢がこの学校に来るとは、思ってもいなかったからな。」
  冬哉兄さんが、苦笑混じりで言う。
「うん。私も自分でもなんでここに入れられたか、わかんないもん。」
  他人事のように答える。
  兄さんの前では、自分を偽らなくていいから楽だ。
「もう一つ驚いているのは、お前が、男子の制服で校内を歩いてるってことだ」
  兄さんが不思議そうな顔で私を見てくる。

  ん?

  いや、今までだって男子の制服だったよ?

「俺、おばさんに “幸矢が女子の制服で入学するから、悪い虫が付かないように見ててくれないかなぁ” って、言われてたんだよ。したら、男子の制服で堂々と歩いてるんだもんな」
  そんなこと母さんが言ってたんだ。
「本当言うと、女子の制服も用意してもらってたんだけど、スカートを履き慣れてなかったから、違和感があって、急遽男子の制服を取り寄せたんだよね。」
  笑いながら答える。
  スカートを履いた時は、自分じゃないように思えたんだ。
「……そっか。俺としては、おじさん達と離れてる間は、女に戻ってもいいと思うが?」
  冬哉兄さんは、私の素性を知ってるから、そう伝えてくるのだろう。
「……そうしたかったんだけど、今までの事でトラウマになってるみたいで、女の自分って違和感がありすぎて……。」
  今までの過程のせいだと思う。
「幸矢って、変なところで気にしすぎるんだな。そこがいいところでもあるが……。で、一ヶ月間男として過ごして困ったことあるか?」
「あると言えばあるし、ないと言えばない。」
「なんだそれ?」
「一番困るのは声だよ。」
  怪訝そうな顔をする冬哉兄さん。
「普段の私の声って、アルトじゃん。それより少し低く出すのて、結構疲れるって言うか……。」
  そう言うと、笑い出す兄さん。
  他人事だと思って……。
「悪い……。」
  そう言いながら、目尻を拭う。
「笑いすぎ。」
  私は、頬を膨らます。
「ごめん、まあ、確かに地声より低く出すのは大変だよな。そんなに気にすること無いと思うぞ。そのままでも充分だと俺は思うが……。」
  って、さっきとうって変わって真剣な顔つきで言う。
「そういやさ、もうすぐ水泳が始まるだろ。授業出れないじゃん? どうするんだ?」
  まぁ、それは気になる質問? になるのか……。
「それは、解決済みだよ。授業後に居残りで水泳の授業をしてもらうことになってる。」
  何でもないことのように話した。
「授業後って…。水泳部が使ってるだろうが…。」
「その期間だけ、寮の門限を遅らせてもらえるように計らってもらってて、水泳部の練習が終わってから、補習授業ってことになってるから、誰にも出くわすこと無いと思う。」
「用意周到なことで。」
  って、冬哉兄さんが、感心してる。
「私が…って言うより、お爺様と父が根回ししてるって言った方がいいのかな。私が女だって知ってる先生も限られてるし……。」
  苦笑するしかなかった。
「そりゃあ、そうだろうな。戸籍上の性別は、男だしな実際は、女だなんて言えないよな。」
  難しい顔をする。
  そうなんだけど……。
「そうだ、さっきの “アイツ” には、気を付けろよ。」
  真顔で言う。
  ?
  少し考えてから。
「あいつって成瀬の事?」
  口にして聞き返す。
「あぁ、“アイツ” 意外と鋭い感覚をもってる。女とバレル前にアイツとは、距離をとった方が俺はいいと思うが……。」
  まぁ、確かに距離をとった方がいいと思うが。
  最近の成瀬は、私に付きっきりだ。
「何かあったら、俺のところに来いよ。いくらでもフォローしてやるから。」
  冬哉兄さんが、私の頭を両手でワシャワシャと掻き交ぜる。
「髪が乱れるから、やめて…」
  私は、冬哉兄さんから距離をとろうと四苦八苦する。
「触り心地がいいんだから仕方ないだろ。」
  悪戯っ子な顔を見せる。
  私は、何処ぞの犬でしょうかね。
「もう、兄さん!!」
「仕方ないだろう。お前が、可愛いのがいけないんだよ。」
  ボソッと聞こえてきた。
  可愛いって…なんだ?
「おっ、そろそろ夕飯の時間だな。食堂に行くか?」
  兄さんが時計に目を向けてそう言う。
「そうだね。」
  私は、そう頷いていた。









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