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伊織side5
しおりを挟む頼の言葉に琉生が、こちらを振り返る。と同時にソファーから立ち上がって、無表情で足早に近付いてくる。
もしかして、怒ってる?
そう思ったら、恐れからか足が一歩後退してしまう。
気がつけば、抱き締められていた。その腕は微かに震えている。
えっ……。
何が起きてるのかわからず、戸惑っていれば。
「やっと会えた。一日半会えなかっただけなのに、オレって女々しいかも……。」
そんな言葉に顔を上げれば、ホッとした顔つきと今にも泣きそうな顔が混在してる彼の顔が、妙に愛しく見えてしまう。
私は、彼の胸に額を押し付け。
「ごめん……ね。」
そう口にした。
彼の心音は、何時もより速くて余程緊張してるんだと思った。
「もう、こんな思いしたくないから、社内でも一緒に居よ。」
琉生の切羽詰まった言葉に私は、首を横に振る。
「何故?」
琉生が、疑問に思うのも無理はない。
「琉生が、女性社員に人気があるから……嫉妬の視線に私が耐えられない……。」
社内だけじゃなく、社外でも人気がある。
私のところにまで、噂が上ってくるぐらいなんだから……。
「それが本音? だったら、オレが護る。何がなんでも、オレが大切に想ってる相手を傷つけるやつは、後悔させてやる。だから、婚約してることを話してしまおう。」
琉生に突然の言葉に、頭がついていかない。
えっ……婚約……。
何時、婚約したの?
私が疑問に思ってたことがわかったのか琉生が。
「今、ここで。」
と口にする。
へっ?
今って……。
益々わからなくなる私に。
「本当は、この間のデートの時に言おうと思ってたんだ。だが、あいつのせいで流れた。だから、今から伊織は、オレの婚約者な。」
って、堂々と宣言されてしまった。
うっ……。
これって、答えは始めから決まってるものだと言われてるみたいだ。一方的ではないのかって思ってしまう自分がそこに居て……。
これといって、拒む理由なんて、何もないから頷くしかないわけで……。
あれこれ悩んでると。
「うおっほん!」
と、突然の咳払いにその方を見れば、頼がジと目で私たちを見ていた。
あっ、ここ頼の家だった。
私の顔は、羞恥心で赤面顔になってるに違いない。
「あのさ。人の家で燃えるのやめてくれない。一人身の俺には、キツすぎるんだけど。続きをしたければ、他所でやってくれ。」
頼に呆れた声。
琉生の顔を見上げれば、彼では珍しく赤面顔。
私たちは、慌てて離れると。
「ごめん、頼。帰るね。」
と声を出せば。
「あぁ。また、喧嘩したら何時でも来れば。」
って、そっけない言葉が返ってくる。
「頼くん、ありがとう。伊織の事、絶対に幸せにするから。」
彼が、真顔で言う。
「お願いします。今までの彼氏達と違って、琉生さんなら任せられると信じてますよ。」
頼も真顔で答えてる。
この二人、短期間で仲良くなりすぎでは?
疑問視しながら、二人を交互に見る。
「あぁ。伊織、行くぞ。」
そっけない返事を返す彼が、一瞬の内に私が持っていた鞄を奪って、空いてる方の手で私の腰に回してきた。
「頼。ありがとうね」
私は、振り返り頼にそう言うと。
「ん。今度は、大丈夫だから、心配せずに琉生さんに着いていきな。」
寂しそうな目をして、言う頼。
「また、来るからね。今度は、ダブルデートできたらいいな。」
口許を緩めて言えば。
「……善処します。」
頼の小さな声が聞こえてきた。
頼、ありがとう。
頼りない姉で、ごめんね。
心の中で、そう告げると玄関を出た。
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