すれ違い

麻沙綺

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琉生side4

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  繋がった電話。
  だが、相手の声は聞こえてこない。
  沈黙が異様に怖くなる。
  だが、聞いてるかどうかは、判らないが此方から一方的に話すことにした。


「伊織……? 聞いてる? ハァ……。オレと話すこともしたくない……か。」
  応答がないのは寂しいが、このままでは伊織の誤解も解けないと思いそのまま喋ることにした。

「まぁ、オレが勝手に話す。……今日、会社に来なかったのは、オレのせいだよな。顔も会わせたくないぐらいなんだもんな。話したくもないよな……。」
  伊織の現状の思い浮かべながら、そう口にする。
「一昨日は、ごめんな。あの日、思ったよりも早く仕事が片付いて、待ち合わせの時間まで余裕があったから、あいつに "相談がある" って言われてさぁ、ほら、オレあいつと同期だろ話だけでも聞いてやろうと思ったんだよ。それが、中々話をしないあいつに連れられて来たのが予約してた店の前。オレ、実は浮かれてたんだ。最近オレの方が忙しくて、何処にも出掛けられなかっただろ。だから、久し振りの伊織とのデートにさ浮かれてて何処かで油断してたみたいで、あいつがオレの携帯を覗いてあの店に予約した事バレてて、"相談" というキーワードを出してあの店まで、まんまと連れて行かれた訳だ。」
  何か、恥ずかしい。
  自分の胸の内を曝して尚且つやらかした事に対する罪悪感が浮上する。
「伊織の事だから、待ち合わせの時間よりも早めに来ていたんだろう。俺が同期の奴と一緒に改札口を出てきた所を見て追いかけてきたんだろ? 店に行く道のりで、あいつにキスされたところまで見て踵を返したんだろうけど、オレは、あの後おもいっきりあいつを押し退けたんだ。奴が、押された拍子に尻餅を突きオレは、そいつを残して踵を返した。」
  あの時の事を思い出すと嫌悪感しかない。
「だが、キスされたとき俺は夢見心地だったんだよ。何故かって、久し振りの伊織と外での食事に浮かれててさ、お前が嬉しそうな顔してるのが浮かんでて、その隙を突かれたんだ。伊織と一緒に行けないなら、店をキャンセルして、お詫びにスイーツを買ってたんだけどな。」
  顔に苦笑いが浮かぶ。
  オレは、何に対しても真面目に取り組み、嫌な顔一つせず仕事に打ち込む伊織の姿を目で追いかけていたんだ。
  気が付けば、好きになってたんだよなぁ。
  手放すことができないくらいにまで。
  だから、これだけは言っておかないと思い。
「オレが好きなのは、伊織だけだ。お前が傍に居ないと安心できないんだ。」
  はっきりとした声で告げた。
  自分が女々しい男だと思う。
  それがオレの嘘偽りの無い本心だ。
  しかしながら、本当に伊織が居ないとオレはダメだなぁとつくづく思う。
  項垂れてるオレの耳に。
『琉生……、ごめん……。琉生の事疑ったりして……。』
  囁くような声が聞こえてきた。
「オレの方こそ、ごめん。凄く反省してる。だから、オレのところに戻ってきてくれないか?」
  オレとしては、それが誠意一杯の言葉。
  少しの沈黙の後。
「……うん。」
  と確かな答えが返ってきた。
  その声を聞き、ホットしてるところへ。
『もしもし、彼氏さんですか? 姉貴、大泣きして大変なんですよ。直ぐにでも引き取りに来てください。』
  低く、落ち着きのある声が耳に入ってくる。
  伊織が大泣き?
  いくら弟でも、そんな顔を見て欲しくないな。
「何処に行けばいい?」
  オレが返せば。
『住所を言いますので、そこに迎えに来てください。』
  そう言う弟君の言葉にオレは、住所をメモし部屋を出て車を飛ばした。



  言われた住所に辿り着き車を降りる。
  目の前に聳え立つマンション。
  オレよりもいいとこに住んでるじゃん。
  何て思いながら言われた部屋に向かう。


  ドアベルを鳴らせば、直ぐに玄関が開いた。
「えっと、姉貴の彼氏さん?」
  疑問符を付けながら言う目の前の男は、オレよりも少し背が高く、整った顔立ちをしている。  
  顔の輪郭と目元の辺りが、伊織とそっくりだ。
「君が、伊織の弟君?」
  オレがそう声を出して言えば。
「どうぞ、上がってください。姉貴は今準備してますので……。」
  そう言われて、上がらせてもらう。
「お邪魔します。」
  そのままリビングに通されて、ソファーを勧められた。
「姉貴が、暴走してすみません。今まで、散々男に振り回されていたから、今回も同じだと思ったんだと思います。」
  突然、弟君からのカミングアウト。
  っていうか、そんなことオレに言っていいのか?
「姉貴、あんなんだから男が皆逃げる……違うな、男の方が、自信を無くしてしまって、新しい女を作って離れていくんです。誰も姉貴の芯には触れられなかったんです。」
  淡々と告げてるようで、何処か寂しげに話す弟君。
  オレが怪訝そうな顔をしてたのに気付いたのか、言葉を続け出す。
「貴方なら、大丈夫だと思ったんです。オレの感ですけど。姉貴を大切にしてくれると……。姉貴の本心を見抜いてくれると思えるんです。どうか、姉貴を宜しくお願いします。」
  そう言って、頭を下げる弟君。
  そんな弟君を見てオレは、どうしていいかわからず、オロオロするばかり。
  とりあえず。
「頭を上げて。伊織を手放す気はないから。こちらこそ、これからも宜しく。」
  と挨拶させてもらう。
  名前がわからないから、どう声を掛けていいかわからずにいたら。
「姉貴、何そんなところに突っ立っているのさ。こっちに来れば。」
  との言葉に振り返れば、伊織が入り口でこちらをじっと見ていた。
  その頬には、涙の筋が残っていた。


  あぁ、オレが泣かせてしまったんだなと深く反省させられた。














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