Herec 2nd~一度音楽をやめた奴らが結成した『社会人バンド』がMVを作る事になった話~

勝哉道花@みちなり文庫

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1章 妹と兄と自主制作

1-1

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「「「妹/さんの自主制作の手伝いをして欲しい??」」」

 野郎3人による本日2度目の綺麗なハモりを前に、たかのっぽくんが「はい」と再び頷き返した。

 そうして、自分の周囲に集まるようにしてスタジオ内の床に座っている大人達を見回すと、自身も背筋をピッと伸ばして正座をしながら、「正確には、」と言葉を続けた。

「皆さんのMVを作るので、それを自主制作作品……、えぇっと、妹自身の実績として就活に活用させて欲しいんだそうです。『ポートフォリオ』の制作をするのに、そろそろ本格的に何がしか動きたいからとかなんとか……」
「妹さんって言うと、『あの時』会った彼女の事だよね」

 俺の左横に座っていた拓弥が、確認するようにたかのっぽくんに尋ねた。
 拓弥が言う『あの時』がいつの事なのか、たかのっぽくんにはすぐにわかったらしい。「えぇ、そうです」とまた頷きが返される。

(『あの時』っつーと、あれだよな。たかのっぽくんの妹ちゃんだっつー子が、たかのっぽくんを探して俺達の前に現れた時の事だよな)

 頭の中に、以前1度だけ顔をあわせた事がある少女の姿を思い浮かべる。

 実はたかのっぽくん、大学を休学をしていたその時期に、なんと家族とも連絡を取る事すら経っていたという、とんでも経歴の持ち主でもあるのだ。

 本人曰く、ベースを理由に休学した事がバレるのが怖くて連絡を取れなくなってしまっていたとの事だったが、家族からしたらたまったものではない。
 そこで兄を探すため、白羽の矢が立ったのが、兄とそう遠くないところにある大学に通っていた妹さんだった……、というわけである。

(いやぁ、今思い返しても、あの時は本当にびっくりしぜ。なんせ、目の前にとんでもない美少女が現れたかと思ったら、たかのっぽくんの事を『お兄ぃ』とかって言い出すんだもんな。)

 そういえば、あの後すぐにたかのっぽくんが妹ちゃんを引きずって帰ってしまったから、彼女とは挨拶らしい挨拶も交わさない別れちゃったんだっけ。
 一言も話はできなかったけど、落ち着いた雰囲気のあるたかのっぽくんとは真逆に、剣呑とした、どこかピリッとした空気がある少女だった事だけはよく覚えている。

 覚えている……、のだが、

「でも、なんで俺達のMV制作が妹ちゃんのポートフォリオ制作に役立つの?」
「え」
「だって、『ポートフォリオ』って、あれだよね。子どもの工作とか作文とか、そういう作品物をまとめるやつ」

 ぽんっ、と頭の中に浮かべるものを、美少女の姿から仕事で使っている道具に切り替える。

『ポートフォリオ』。
 元は確か、『紙束入れ』とか『書類入れ』とか、そんな意味の英単語だったはずだ。

 実際に授業で使う代物ではないけれど、子ども達の学習成果物――さっき言った、工作や作文にくわえて、日々のテストや宿題なんかもそれにあたる――をまとめて保存しておく事で、そこから子ども達の学習の状態を分析したり、己の指導の仕方を改めたりできる代物となっている。

 学校によっては教育そのものの一環として、子ども達自身に作らせている場所もあるぐらいだ。自分で自分の提出物をまとめる事で、自己評価の仕方を学んでもらうのが目的となっている。

 要は、自分で自分の行動を反省したり、もっとこうしてみようと考えたりできる力をつけようって話。
 進んで学習したいという気持ちがわくサポートをするアイテムとでも思ってもらえば間違いないかな。

 結局のところ、何事も身になるかどうかは本人のやる気次第だからさ。子ども達のやる気を引き出すのもまた、教師の腕の見せどころってな。

 でも、それがたかのっぽくんの妹ちゃんの就活と、どう関係するのかがさっぱりだ。

(もしかして、俺と同じで教職に就こうとしてる子だったりするのかな。いやでも、そうならMVが実績になるってのがよくわかんねぇな)

 てか、それ以前に就活では使ってないしな、ポートフォリオ。

 う~ん? どういうことだ????

 たかのっぽくんが「えぇっと……」と困り顔で俺を見てきた。なんて言葉を返せばいいのかわからない、と言いたげな表情だ。

 なんか俺、変な事言った? 首をかしげたその時、俺の右隣を陣取っていた優作が「ほー」と面白そうに声をあげた。
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