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1章 妹と兄と自主制作
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「教職のポートフォリオって、そんな風に使われてんのな」
「え。そんな風にって……。そういうもんじゃねぇの?」
「いや、全然違ぇけど?」
俺の質問に、優作が首を横に振り返す。
なんですと。
予想外の返答に目を丸めていれば、「まぁ、資料集って点で言えば同じような物だけどな」と、優作があぐらをかいた自身の膝上で頬杖をついた。
「俺の場合、自分で見るもんっつーよりは、企業に見せるもんって感じだな」
「企業? なんで?」
「企業に自分を売り込む際に『自分はこういう事ができる人間です』って示すために使うんだよ。まぁ、参考資料みてぇなもんだな。こういう仕事ができますよって、相手に提示すんのに使うわけだ。これこれ、こういうもんを作りました、こういうプロジェクトに参加しましたっつー、自分の実績を目に見える形にしてまとめて提示すりゃあ、相手から仕事が頼まれやすくなんだろ。
基本的にはデザイナーみてぇなクリエイター職の奴らが使うもんだが、最近はエンジニアでも求められる場合があるからな。俺も一応、簡単には作ってある」
「つってもエンジニアの場合は、フリーでやってる奴や転職をする奴が使うもんで、俺みてぇな企業で落ち着いてる奴は滅多な事で使わねぇけど」と、優作が肩をすくめながら説明を締めた。
「へー、SEのポートフォリオってそんな感じなんだ」
確かに俺ら教師間での使い方とは違うな。
教師でたとえるなら、職歴みたいなものだろうか。どこそこの学校で、いつからいつまで勤務してましたー、みたいな。
教師……、特に公立校担当の教師は数年毎に市内の学校へ異動する事が定められているので、実は人によっては結構頻繁的にいろんな学校を練り歩いてたりするのよね。意外と異動が多い職種なのよ、教師ってのは。
「就活で使うってなると、役割的には教職のそれよりはSE寄りの使い方になんじゃねぇの。たかのっぽくんの妹ちゃん、将来はクリエイター系の職に就く感じか?」
「あ、はい、そうです」
優作に話を振られたたかのっぽくんが、あわあわと返事をする。
「妹は芸工……、えっと、その、芸術工科大学と呼ばれる大学に通ってまして」と、しどろもどろに再び説明を始める。
「映像学科という、映像関係を専門に学ぶ学科の生徒なんです。いろいろやってるみたいなんですが、本人はアニメーションに関する事を主に勉強してるとか……、すみません、詳しい事は俺にもよくわからないんです」
「あんまりそういう話は妹としないので」と、申し訳なさそうに言葉が続けられる。
あ~、言われてみれば、前に会話しているところを見た感じ、そんなに妹ちゃんと仲良さそうな雰囲気じゃなかったもんなぁ。
年子だって話だし、年が近い分、喧嘩になりやすいのかもしれない。
年子って、年が近い分仲良くなりやすそうに見えるが、意外と喧嘩が多いのが実情なんだよね。そういう兄妹、うちの学校にも居ますわ。
しょんぼりと項垂れているたかのっぽくんに苦笑しつつ、「大丈夫、大丈夫」と励ましの声をかける。
その傍らで、映像学科かぁ、と説明された内容について考えてみる。
(これまた未知の世界の単語って感じだけど、そういう学科の生徒さんなら、MV制作が実績作りになるのも頷けるや)
こうして見るとたかのっぽ家って、兄妹揃って何かを作る道に進もうとしてるんだな。親御さんの事も含めて考えると、根っからのクリエイター・アーティスト気質な家なのかもしれない。
たかのっぽくんの話に納得したのか、俺の左で、拓弥がなるほどと言った様子で頷いた。優作も俺の右側で、「まぁ、大体の事情はわかったわ」と腕を組みながら小さく頷いている。
が、拓弥とは違い、なぜかその表情には怪訝の2文字が滲み出ていた。
「どうかしたの、優くん」
優作の表情に気づいたらしい拓弥が、不思議そうに首をかしげながら優作に尋ねた。
「いや、どうっつーか、なんつーか……」と、優作が眉間にしわを寄せたまま答える。
「なんでHerecなんだって、思ってよ」
「なんでうちなんだ?」
って、なにそれ? どういうこと?
優作の言葉の意味がわからず、今度は俺の首が横に倒れた。
「え。そんな風にって……。そういうもんじゃねぇの?」
「いや、全然違ぇけど?」
俺の質問に、優作が首を横に振り返す。
なんですと。
予想外の返答に目を丸めていれば、「まぁ、資料集って点で言えば同じような物だけどな」と、優作があぐらをかいた自身の膝上で頬杖をついた。
「俺の場合、自分で見るもんっつーよりは、企業に見せるもんって感じだな」
「企業? なんで?」
「企業に自分を売り込む際に『自分はこういう事ができる人間です』って示すために使うんだよ。まぁ、参考資料みてぇなもんだな。こういう仕事ができますよって、相手に提示すんのに使うわけだ。これこれ、こういうもんを作りました、こういうプロジェクトに参加しましたっつー、自分の実績を目に見える形にしてまとめて提示すりゃあ、相手から仕事が頼まれやすくなんだろ。
基本的にはデザイナーみてぇなクリエイター職の奴らが使うもんだが、最近はエンジニアでも求められる場合があるからな。俺も一応、簡単には作ってある」
「つってもエンジニアの場合は、フリーでやってる奴や転職をする奴が使うもんで、俺みてぇな企業で落ち着いてる奴は滅多な事で使わねぇけど」と、優作が肩をすくめながら説明を締めた。
「へー、SEのポートフォリオってそんな感じなんだ」
確かに俺ら教師間での使い方とは違うな。
教師でたとえるなら、職歴みたいなものだろうか。どこそこの学校で、いつからいつまで勤務してましたー、みたいな。
教師……、特に公立校担当の教師は数年毎に市内の学校へ異動する事が定められているので、実は人によっては結構頻繁的にいろんな学校を練り歩いてたりするのよね。意外と異動が多い職種なのよ、教師ってのは。
「就活で使うってなると、役割的には教職のそれよりはSE寄りの使い方になんじゃねぇの。たかのっぽくんの妹ちゃん、将来はクリエイター系の職に就く感じか?」
「あ、はい、そうです」
優作に話を振られたたかのっぽくんが、あわあわと返事をする。
「妹は芸工……、えっと、その、芸術工科大学と呼ばれる大学に通ってまして」と、しどろもどろに再び説明を始める。
「映像学科という、映像関係を専門に学ぶ学科の生徒なんです。いろいろやってるみたいなんですが、本人はアニメーションに関する事を主に勉強してるとか……、すみません、詳しい事は俺にもよくわからないんです」
「あんまりそういう話は妹としないので」と、申し訳なさそうに言葉が続けられる。
あ~、言われてみれば、前に会話しているところを見た感じ、そんなに妹ちゃんと仲良さそうな雰囲気じゃなかったもんなぁ。
年子だって話だし、年が近い分、喧嘩になりやすいのかもしれない。
年子って、年が近い分仲良くなりやすそうに見えるが、意外と喧嘩が多いのが実情なんだよね。そういう兄妹、うちの学校にも居ますわ。
しょんぼりと項垂れているたかのっぽくんに苦笑しつつ、「大丈夫、大丈夫」と励ましの声をかける。
その傍らで、映像学科かぁ、と説明された内容について考えてみる。
(これまた未知の世界の単語って感じだけど、そういう学科の生徒さんなら、MV制作が実績作りになるのも頷けるや)
こうして見るとたかのっぽ家って、兄妹揃って何かを作る道に進もうとしてるんだな。親御さんの事も含めて考えると、根っからのクリエイター・アーティスト気質な家なのかもしれない。
たかのっぽくんの話に納得したのか、俺の左で、拓弥がなるほどと言った様子で頷いた。優作も俺の右側で、「まぁ、大体の事情はわかったわ」と腕を組みながら小さく頷いている。
が、拓弥とは違い、なぜかその表情には怪訝の2文字が滲み出ていた。
「どうかしたの、優くん」
優作の表情に気づいたらしい拓弥が、不思議そうに首をかしげながら優作に尋ねた。
「いや、どうっつーか、なんつーか……」と、優作が眉間にしわを寄せたまま答える。
「なんでHerecなんだって、思ってよ」
「なんでうちなんだ?」
って、なにそれ? どういうこと?
優作の言葉の意味がわからず、今度は俺の首が横に倒れた。
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