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1章 妹と兄と自主制作
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「どうせ、このアホの顔を隠す事もMV制作の目的に入ってんだ。これを機に音も録り直して、スタジオ版からMV版にすげ替えちまおうぜ」
「だから、人の事アホアホ言うなやっ」
コイツ、肯定的な意見が続いてると思ったら、人の事バカにしたがってただけか! 悪かったですわねっ、顔出しできない奴がボーカルなんてやっちゃってっ!
「本当にアホになったらどうしてくれんだ、アホッ」と優作に吠え返せば、「アホって言われて常に反応してる時点で、アホ確定だろ」とフンッ、と鼻を鳴らし返された。
きぃ~~っ、このゴリラ、あぁいえばこう言いやがりますわ~っ!
思わず、心の中で地団駄を踏みながら恨めしげに優作を見返せば、「はいはい、そこまで」と、拓弥が呆れたように苦笑しながら手を叩いた。
とまぁ、そんな感じで話し合いは進んでいき、最終的にたかのっぽくんの妹ちゃんとは、来月末――、つまりは4月末の土曜に顔合わせをする形で話がまとまった。
少し時間は空いてしまうが、そこはどうしようもない問題である。なんせ、バンドメンバーに土日も通常営業のデパ地下フロア店長と、新年度頭はどうしたって忙しくなりがちな教職の2人がいるのだ。4月の下旬……、せめて中旬ぐらいにはならないと、ゆっくりバンドの事を考えている余裕なんて生まれない。
とはいえ、拓弥の事を考えるなら、本当は平日に集まった方がいいんだろうなぁ。休日休みの教職と違い、デパ地下って土日の方が繁忙してるだろうし。
でもそうすると、今度は平日は仕事勢の俺、優作、さらに4月から復学するたかのっぽくんのスケジュールが厳しくなっちゃうし……。うーん、このスケジュールパズル、難易度が高すぎる。
社会人バンドを結成して本当に大変な事って、もしかしたら曲作りでも動画投稿でもなく、全員のスケジュールのすり合わせなのかもしれない。
世の社会人バンドの皆様は、どうやって解決してるんだろうなぁ、この難題。
「間が空いちゃってごめんね~」と俺が謝れば、たかのっぽくんが「大丈夫ですよ」と苦笑した。
「一応、妹には皆さんが働いてる方々である事は伝えてあるので。むこうも事情はわかってくれるはずです」
う~ん、ならいい……、のか?
若干の不安は拭えないが、だからと言ってこれ以上予定を早められないのも事実だ。栓のないこと言っている暇があるなら、バンドの練習でもしていた方がいいだろう。
優作の提案に乗るなら、もう1回録音もし直さなきゃだしね。
どうせ録るなら、前回よりももっと上手くなってから録りたいじゃん?
そんなわけで、この日の話し合いはここで終了。残りの時間からは、早速件の楽曲の練習に時間をつぎ込む事となった。
後日。メッセージアプリを通して、改めてたかのっぽくんから、妹ちゃんが打ち合わせの日程に了承してくれた旨が大人組に通達された。
こうして、4月末の土曜日――、正式には4月の第5土曜。
その日に、俺達と妹ちゃんとの顔合わせが行われる事が決まったのだった。
そんなこんなで日は経ち、顔合わせ当日――……。
「えーっと、それじゃあ、その……、改めて紹介をしますと、これが今回、俺達HerecのMVを制作する俺の妹のシオリです」
「高野須シオリです。どうも」
たかのっぽくんの紹介を受けた妹ちゃん……、もとい高須野シオリちゃんが、俺、優作、拓弥に向かって軽く頭をさげる。
しかし、どうも、という気軽い挨拶に対して、その顔から向けられる眼差しはなぜか冷たく厳しいものだった。
一切の親しみやすさを取り払った鋭い眼差し。
まるでこちらを射らんとばかりに向けられる眼差し。
その思ってもみなかった反応に、途端、俺達大人組の言葉にならない戸惑いが、賑やかなファミレス内の1席に広がったのは、きっと言うまでもないことだろう。
……なにがどうしてこうなった? ほわい?
「だから、人の事アホアホ言うなやっ」
コイツ、肯定的な意見が続いてると思ったら、人の事バカにしたがってただけか! 悪かったですわねっ、顔出しできない奴がボーカルなんてやっちゃってっ!
「本当にアホになったらどうしてくれんだ、アホッ」と優作に吠え返せば、「アホって言われて常に反応してる時点で、アホ確定だろ」とフンッ、と鼻を鳴らし返された。
きぃ~~っ、このゴリラ、あぁいえばこう言いやがりますわ~っ!
思わず、心の中で地団駄を踏みながら恨めしげに優作を見返せば、「はいはい、そこまで」と、拓弥が呆れたように苦笑しながら手を叩いた。
とまぁ、そんな感じで話し合いは進んでいき、最終的にたかのっぽくんの妹ちゃんとは、来月末――、つまりは4月末の土曜に顔合わせをする形で話がまとまった。
少し時間は空いてしまうが、そこはどうしようもない問題である。なんせ、バンドメンバーに土日も通常営業のデパ地下フロア店長と、新年度頭はどうしたって忙しくなりがちな教職の2人がいるのだ。4月の下旬……、せめて中旬ぐらいにはならないと、ゆっくりバンドの事を考えている余裕なんて生まれない。
とはいえ、拓弥の事を考えるなら、本当は平日に集まった方がいいんだろうなぁ。休日休みの教職と違い、デパ地下って土日の方が繁忙してるだろうし。
でもそうすると、今度は平日は仕事勢の俺、優作、さらに4月から復学するたかのっぽくんのスケジュールが厳しくなっちゃうし……。うーん、このスケジュールパズル、難易度が高すぎる。
社会人バンドを結成して本当に大変な事って、もしかしたら曲作りでも動画投稿でもなく、全員のスケジュールのすり合わせなのかもしれない。
世の社会人バンドの皆様は、どうやって解決してるんだろうなぁ、この難題。
「間が空いちゃってごめんね~」と俺が謝れば、たかのっぽくんが「大丈夫ですよ」と苦笑した。
「一応、妹には皆さんが働いてる方々である事は伝えてあるので。むこうも事情はわかってくれるはずです」
う~ん、ならいい……、のか?
若干の不安は拭えないが、だからと言ってこれ以上予定を早められないのも事実だ。栓のないこと言っている暇があるなら、バンドの練習でもしていた方がいいだろう。
優作の提案に乗るなら、もう1回録音もし直さなきゃだしね。
どうせ録るなら、前回よりももっと上手くなってから録りたいじゃん?
そんなわけで、この日の話し合いはここで終了。残りの時間からは、早速件の楽曲の練習に時間をつぎ込む事となった。
後日。メッセージアプリを通して、改めてたかのっぽくんから、妹ちゃんが打ち合わせの日程に了承してくれた旨が大人組に通達された。
こうして、4月末の土曜日――、正式には4月の第5土曜。
その日に、俺達と妹ちゃんとの顔合わせが行われる事が決まったのだった。
そんなこんなで日は経ち、顔合わせ当日――……。
「えーっと、それじゃあ、その……、改めて紹介をしますと、これが今回、俺達HerecのMVを制作する俺の妹のシオリです」
「高野須シオリです。どうも」
たかのっぽくんの紹介を受けた妹ちゃん……、もとい高須野シオリちゃんが、俺、優作、拓弥に向かって軽く頭をさげる。
しかし、どうも、という気軽い挨拶に対して、その顔から向けられる眼差しはなぜか冷たく厳しいものだった。
一切の親しみやすさを取り払った鋭い眼差し。
まるでこちらを射らんとばかりに向けられる眼差し。
その思ってもみなかった反応に、途端、俺達大人組の言葉にならない戸惑いが、賑やかなファミレス内の1席に広がったのは、きっと言うまでもないことだろう。
……なにがどうしてこうなった? ほわい?
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