Herec 2nd~一度音楽をやめた奴らが結成した『社会人バンド』がMVを作る事になった話~

勝哉道花@みちなり文庫

文字の大きさ
8 / 82
1章 妹と兄と自主制作

1-4

しおりを挟む
 妹ちゃんから返信があったと、たかのっぽくんから連絡が来たのは、翌日水曜日の夜の事だった。

 たかのっぽくんいわく、実は返事そのものは、昨晩俺達が解散した後に来ていたのだとか。だが時間帯も時間帯だったので、翌日夜、俺達大人組の仕事が終わるのを待って連絡をいれてくれたらしい。

「遅くなってすみません」と、たかのっぽくんからは謝られたがとんでもない。むしろ、謝らなきゃいけないのは気を遣わせてしまったこっちだろう。

 顔が良ければ気も遣えて、その上態度も丁寧。なんて非の打ち所のなさよ。
ここまで完璧だと、嫉妬すらできないというか、逆にうちの子自慢すらしたくなってくるレベルだぜ。うちの子、凄いでしょ、ドヤッ。

 と、いうわけで。

 そこから、さらに翌日の木曜日。週2で行ってるバンド練の2日目にあたるその日。
 再びRe:crieationに集まった俺達は、そこで改めて今後の流れについて話し合う事となった。

「妹の方としては、できるなら、制作を始める前に一度顔を合わせておきたいとの事です。その方が、今後どのような形でやり取りをする事になっても進めやすいからと……。あとは、可能ならMVに使う楽曲も事前に教えてほしいとの事です」

 先日と同じ、練習用スタジオルーム。そのど真ん中で、円を組むようにバンドメンバー全員で床に腰をおろし、顔をつき合わせる。

「顔合わせの件は賛成だな」と、優作が口を開いた。
 優作の対面で、スマホに送られてきた妹ちゃんからのメッセージを確認していたたかのっぽくんが顔をあげ、そちらに顔を向ける。

「よく知る相手の妹とはいえ、一度も顔も合わせず挨拶もせずっつーのは、さすがにまずいだろ。そこはしっかりしておくべきだ」

 優作の意見に、俺も拓弥も、確かにと頷き返した。

「となると、残す問題は楽曲の方だね。MVにしてほしい楽曲かぁ。新しい曲……、はさすがに作ってる暇がないから、既存曲でいくしかないかな」

 拓弥が眉をひそめながら、考え込むように顎に手をやった。

「そうですね」と、たかのっぽくんも拓弥に同意する。

「既存曲ってなると、あのオリジナル曲で行く感じ?」

 拓弥に訊き返しながら、頭の中に『あのオリジナル曲』とやらを思い浮かべる。

 Herec唯一のオリジナル曲。昨年の年末頃に、俺達が動画投稿をするために作った楽曲だ。
 作曲・編曲の経験があるたかのっぽくんを中心に、楽器組が作曲をし、そこに俺が作った歌詞を乗せた、純度100%のオリジナル楽曲である。

 俺達Herecの代表曲、看板曲と言っても差し支えない曲だろう。MVで使うのにも申し分ない曲だ。

 ……それしかオリジナル曲がないだけだろ、というのは言わないお約束だぜ?

「いーんじゃねぇの」と、優作が再び口を開いた。

 なんか、優作にしては珍しく肯定的な意見が続いてるな――、そう思った次の瞬間、くいっと、優作の親指が俺の方に向けられた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

処理中です...