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1章 妹と兄と自主制作
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妹ちゃんから返信があったと、たかのっぽくんから連絡が来たのは、翌日水曜日の夜の事だった。
たかのっぽくんいわく、実は返事そのものは、昨晩俺達が解散した後に来ていたのだとか。だが時間帯も時間帯だったので、翌日夜、俺達大人組の仕事が終わるのを待って連絡をいれてくれたらしい。
「遅くなってすみません」と、たかのっぽくんからは謝られたがとんでもない。むしろ、謝らなきゃいけないのは気を遣わせてしまったこっちだろう。
顔が良ければ気も遣えて、その上態度も丁寧。なんて非の打ち所のなさよ。
ここまで完璧だと、嫉妬すらできないというか、逆にうちの子自慢すらしたくなってくるレベルだぜ。うちの子、凄いでしょ、ドヤッ。
と、いうわけで。
そこから、さらに翌日の木曜日。週2で行ってるバンド練の2日目にあたるその日。
再びRe:crieationに集まった俺達は、そこで改めて今後の流れについて話し合う事となった。
「妹の方としては、できるなら、制作を始める前に一度顔を合わせておきたいとの事です。その方が、今後どのような形でやり取りをする事になっても進めやすいからと……。あとは、可能ならMVに使う楽曲も事前に教えてほしいとの事です」
先日と同じ、練習用スタジオルーム。そのど真ん中で、円を組むようにバンドメンバー全員で床に腰をおろし、顔をつき合わせる。
「顔合わせの件は賛成だな」と、優作が口を開いた。
優作の対面で、スマホに送られてきた妹ちゃんからのメッセージを確認していたたかのっぽくんが顔をあげ、そちらに顔を向ける。
「よく知る相手の妹とはいえ、一度も顔も合わせず挨拶もせずっつーのは、さすがにまずいだろ。そこはしっかりしておくべきだ」
優作の意見に、俺も拓弥も、確かにと頷き返した。
「となると、残す問題は楽曲の方だね。MVにしてほしい楽曲かぁ。新しい曲……、はさすがに作ってる暇がないから、既存曲でいくしかないかな」
拓弥が眉をひそめながら、考え込むように顎に手をやった。
「そうですね」と、たかのっぽくんも拓弥に同意する。
「既存曲ってなると、あのオリジナル曲で行く感じ?」
拓弥に訊き返しながら、頭の中に『あのオリジナル曲』とやらを思い浮かべる。
Herec唯一のオリジナル曲。昨年の年末頃に、俺達が動画投稿をするために作った楽曲だ。
作曲・編曲の経験があるたかのっぽくんを中心に、楽器組が作曲をし、そこに俺が作った歌詞を乗せた、純度100%のオリジナル楽曲である。
俺達Herecの代表曲、看板曲と言っても差し支えない曲だろう。MVで使うのにも申し分ない曲だ。
……それしかオリジナル曲がないだけだろ、というのは言わないお約束だぜ?
「いーんじゃねぇの」と、優作が再び口を開いた。
なんか、優作にしては珍しく肯定的な意見が続いてるな――、そう思った次の瞬間、くいっと、優作の親指が俺の方に向けられた。
たかのっぽくんいわく、実は返事そのものは、昨晩俺達が解散した後に来ていたのだとか。だが時間帯も時間帯だったので、翌日夜、俺達大人組の仕事が終わるのを待って連絡をいれてくれたらしい。
「遅くなってすみません」と、たかのっぽくんからは謝られたがとんでもない。むしろ、謝らなきゃいけないのは気を遣わせてしまったこっちだろう。
顔が良ければ気も遣えて、その上態度も丁寧。なんて非の打ち所のなさよ。
ここまで完璧だと、嫉妬すらできないというか、逆にうちの子自慢すらしたくなってくるレベルだぜ。うちの子、凄いでしょ、ドヤッ。
と、いうわけで。
そこから、さらに翌日の木曜日。週2で行ってるバンド練の2日目にあたるその日。
再びRe:crieationに集まった俺達は、そこで改めて今後の流れについて話し合う事となった。
「妹の方としては、できるなら、制作を始める前に一度顔を合わせておきたいとの事です。その方が、今後どのような形でやり取りをする事になっても進めやすいからと……。あとは、可能ならMVに使う楽曲も事前に教えてほしいとの事です」
先日と同じ、練習用スタジオルーム。そのど真ん中で、円を組むようにバンドメンバー全員で床に腰をおろし、顔をつき合わせる。
「顔合わせの件は賛成だな」と、優作が口を開いた。
優作の対面で、スマホに送られてきた妹ちゃんからのメッセージを確認していたたかのっぽくんが顔をあげ、そちらに顔を向ける。
「よく知る相手の妹とはいえ、一度も顔も合わせず挨拶もせずっつーのは、さすがにまずいだろ。そこはしっかりしておくべきだ」
優作の意見に、俺も拓弥も、確かにと頷き返した。
「となると、残す問題は楽曲の方だね。MVにしてほしい楽曲かぁ。新しい曲……、はさすがに作ってる暇がないから、既存曲でいくしかないかな」
拓弥が眉をひそめながら、考え込むように顎に手をやった。
「そうですね」と、たかのっぽくんも拓弥に同意する。
「既存曲ってなると、あのオリジナル曲で行く感じ?」
拓弥に訊き返しながら、頭の中に『あのオリジナル曲』とやらを思い浮かべる。
Herec唯一のオリジナル曲。昨年の年末頃に、俺達が動画投稿をするために作った楽曲だ。
作曲・編曲の経験があるたかのっぽくんを中心に、楽器組が作曲をし、そこに俺が作った歌詞を乗せた、純度100%のオリジナル楽曲である。
俺達Herecの代表曲、看板曲と言っても差し支えない曲だろう。MVで使うのにも申し分ない曲だ。
……それしかオリジナル曲がないだけだろ、というのは言わないお約束だぜ?
「いーんじゃねぇの」と、優作が再び口を開いた。
なんか、優作にしては珍しく肯定的な意見が続いてるな――、そう思った次の瞬間、くいっと、優作の親指が俺の方に向けられた。
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