50 / 82
3章 子どもとカレーと背景事情
3-12
しおりを挟む
余ったカレー達が沈黙するテーブル。
その端には、カレー皿を並べるために避けた雑貨達が集っている。
リモコンやテイッシュ箱、スマホに仕事関係のあれやこれやをするために使ってるペンや定規などの文具が入っているペン立て――。
普段テーブルの上を占拠しているそれらの中にさり気なく混ざっていたそれを、なんとなくで手を伸ばして取る。
――『ヒーロック!』と書かれた、古い缶型のペンケース。
かつて、優作、拓弥、そして郁也の3人と一緒に地中深く埋めた、タイムカプセル。その少し錆びれて色が落ちた表面を眺めた。
(これも、そろそろちゃんと片付ける場所考えないとだよなー)
このペンケースを俺が預かっておく事になったのは、Herecの皆と一緒に中身を確認した日の事だった。
完成したばかりのオリジナル曲を動画サイトに投稿するため、動画の制作をスタジオで行っていたその日。全ての作業が終わった帰り際、誰がこのペンケースを持っておくかという話になった。
結果、それまでペンケースを預かっていた俺が、そのまま保管する事になったのである。
といってもまぁ、結果だけ見れば当然の帰結といえば当然の帰結だったのだけど。
なんせ、もともとこのペンケースの持ち主って俺だったからね。中身のテープは郁也の物だったはずだけど、外身はかつて実際に使っていた俺のペンケースである。
(なんだっけなー。確か、「どうせ入れるならこれがいい」って思ったんだよな)
『ヒーロック』にハマったのは、小学生の頃だ。これを埋めた時はすでに中学生だったので、さすがにもうこの子ども向けのケースを使う事はなくなっていたが、思い出深さから捨ててしまう事はできず、勉強机の引き出しの奥底で眠らせていた。
そこにふってわいてきた、タイムカプセルという話題。
それを聞いた瞬間、俺はこのペンケースを引き出しの奥から引っ張り出す事を決めた。
自分達がバンドを始めるきっかけとなった、ビッグなヒーロー達が描かれたペンケース。これ以上に、タイムカプセルに最適な容れ物はないと、そう思ったから。
(音楽に全力を尽くしていたあの頃ですら、届かないものがあったんだ。そりゃあ、上手くいかない事ばかりの連続でも、人生おかしくはないさ)
でも、とペンケースを床に置いて、膝上のきらりちゃんに目を戻す。
そんな自分の――、自分達の演奏でも、凄いとこの子は言ってくれたんだよなぁ。
笑って、目を輝かせて、楽しそうに曲を聞いてくれた。
あの頃夢見たものからは程遠いけれど、100%完璧なものじゃないけれど。
それでも確かに、あの頃に憧れていた光景の一部が、あそこにはあった。
「全力を尽くす、か」
ぽつりと口から、自分の中で渦巻き続ける言葉がこぼれ落ちた。
「――よし」
パン、と小さく音をたてながら頬を叩く。
ネガティブにぐるぐる考える時間は終わりだ。どうせ、このまま考えていたって埒が明かないのは、火を見るよりも明らかなのだ。
それならば、もっと別の方法を試してみた方が手っ取り早いだろう。
(どうすればいいかなんて全く全然わからないけど、たぶん、できる何かはあるはずだ)
未熟者でまだまだな部分ばかりで、いざという時に逃げる事しかできない情けない大人だけど、それでも相手を笑わせるぐらいの事はできたのだ。
なら、何かあるはずだ。
まだ何か、できることが。
「まぁ、とりあえずは、」
こんな俺にも付き合ってくれる、ビッグではないけれど、俺にとっては最高でつよつよな仲間達にでも頼ってみますかね。
三人寄れば文殊の知恵とも言いますしな。
「よっ」と小さく意気込み、きらりちゃんを起こさないように気をつけながら、再びテーブルの上に手を伸ばす。
手に取ったスマホの電源をいれ、使い慣れたメッセージアプリを開く。そうしてお目当ての人物達にむけて、俺はメッセージを打ち込み始めたのだった。
その端には、カレー皿を並べるために避けた雑貨達が集っている。
リモコンやテイッシュ箱、スマホに仕事関係のあれやこれやをするために使ってるペンや定規などの文具が入っているペン立て――。
普段テーブルの上を占拠しているそれらの中にさり気なく混ざっていたそれを、なんとなくで手を伸ばして取る。
――『ヒーロック!』と書かれた、古い缶型のペンケース。
かつて、優作、拓弥、そして郁也の3人と一緒に地中深く埋めた、タイムカプセル。その少し錆びれて色が落ちた表面を眺めた。
(これも、そろそろちゃんと片付ける場所考えないとだよなー)
このペンケースを俺が預かっておく事になったのは、Herecの皆と一緒に中身を確認した日の事だった。
完成したばかりのオリジナル曲を動画サイトに投稿するため、動画の制作をスタジオで行っていたその日。全ての作業が終わった帰り際、誰がこのペンケースを持っておくかという話になった。
結果、それまでペンケースを預かっていた俺が、そのまま保管する事になったのである。
といってもまぁ、結果だけ見れば当然の帰結といえば当然の帰結だったのだけど。
なんせ、もともとこのペンケースの持ち主って俺だったからね。中身のテープは郁也の物だったはずだけど、外身はかつて実際に使っていた俺のペンケースである。
(なんだっけなー。確か、「どうせ入れるならこれがいい」って思ったんだよな)
『ヒーロック』にハマったのは、小学生の頃だ。これを埋めた時はすでに中学生だったので、さすがにもうこの子ども向けのケースを使う事はなくなっていたが、思い出深さから捨ててしまう事はできず、勉強机の引き出しの奥底で眠らせていた。
そこにふってわいてきた、タイムカプセルという話題。
それを聞いた瞬間、俺はこのペンケースを引き出しの奥から引っ張り出す事を決めた。
自分達がバンドを始めるきっかけとなった、ビッグなヒーロー達が描かれたペンケース。これ以上に、タイムカプセルに最適な容れ物はないと、そう思ったから。
(音楽に全力を尽くしていたあの頃ですら、届かないものがあったんだ。そりゃあ、上手くいかない事ばかりの連続でも、人生おかしくはないさ)
でも、とペンケースを床に置いて、膝上のきらりちゃんに目を戻す。
そんな自分の――、自分達の演奏でも、凄いとこの子は言ってくれたんだよなぁ。
笑って、目を輝かせて、楽しそうに曲を聞いてくれた。
あの頃夢見たものからは程遠いけれど、100%完璧なものじゃないけれど。
それでも確かに、あの頃に憧れていた光景の一部が、あそこにはあった。
「全力を尽くす、か」
ぽつりと口から、自分の中で渦巻き続ける言葉がこぼれ落ちた。
「――よし」
パン、と小さく音をたてながら頬を叩く。
ネガティブにぐるぐる考える時間は終わりだ。どうせ、このまま考えていたって埒が明かないのは、火を見るよりも明らかなのだ。
それならば、もっと別の方法を試してみた方が手っ取り早いだろう。
(どうすればいいかなんて全く全然わからないけど、たぶん、できる何かはあるはずだ)
未熟者でまだまだな部分ばかりで、いざという時に逃げる事しかできない情けない大人だけど、それでも相手を笑わせるぐらいの事はできたのだ。
なら、何かあるはずだ。
まだ何か、できることが。
「まぁ、とりあえずは、」
こんな俺にも付き合ってくれる、ビッグではないけれど、俺にとっては最高でつよつよな仲間達にでも頼ってみますかね。
三人寄れば文殊の知恵とも言いますしな。
「よっ」と小さく意気込み、きらりちゃんを起こさないように気をつけながら、再びテーブルの上に手を伸ばす。
手に取ったスマホの電源をいれ、使い慣れたメッセージアプリを開く。そうしてお目当ての人物達にむけて、俺はメッセージを打ち込み始めたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる