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4章 臆病者と家族とキラキラ星
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翌日、4月第5日曜日、昼すぎ。
拓弥との待ち合わせ場所であるRe: creation前に向かうと、そこにはすでに拓弥の姿があった。
Re: creationに入っていく人の邪魔にならないようにするためか、建物から少し離れた歩道端に立っている拓弥。
モスグリーンのスウェットに白のカジュアルシャツ、それからチノパンと、昨日同様にラフな私服姿の友人は、どこか休日のパパを思わせる落ち着いた雰囲気がある。
辺りを照らす春の日差しのやわらかさも相まって、これから子どもとピクニックに行くのだと言われても納得できそうな装いだ。
同じラフな格好であっても、ブルーのパーカーにジーンズのパンツだけの俺とは、醸し出すラフさの種類が違う。
なんでだろうなぁ、なんか向こうのが大人に見えるっつーか。
優作といい、たかのっぽくんといい、なんで俺の周り、服のセンスいい奴らばかりいすぎでは?
(……まぁ当の本人は、ピクニックなんて、そんなウキウキわくわくドッキドキな心情からは遠い状態にいるんだろうけど)
ボーッと、魂が抜けたような表情で通りを眺めている友人の姿に、ポリポリと頬をかく。
俺がRe: creationの中から出てきた事にも、まったく気づいてねぇな、ありゃあ。昨日、きらりちゃんに「嫌い」って言われて相当キてる感じだったし、やっぱりそう簡単に回復はしないか。
ふぅ、とひとつ息をつく。そうして、よし、と軽く頬を叩いて意気込む。
(行こう)
ここまで来たら、もう後戻りはできない――。意を決して拓弥の方へ足を踏み出す。
「拓弥」
俺に呼ばれた拓弥がこちらを振り返った。
「透くん」
「悪い、待たせた?」
突然俺が現れたからか、拓弥の目が驚きで見開かれている。
が、すぐに平常心を取り戻したらしい。「ううん」と首を横にふると、へらりと、気の抜けた笑みを返してきた。
「ちょっと前に着いたばかりだから、大丈夫。むしろ透くんの方こそ、いつからいたのさ。全然気づかなかったから、びっくりしたよ」
「待ち合わせ場所がここに指定された時もびっくりしたけどさ」と、拓弥が苦笑しながら続ける。
いつも通りの苦笑。でもやはり、どこかいつもより影を落としているように感じる笑みに、少しばかし苦い気持ちになりながらも、俺は昨晩この友人とした会話を思い返した。
***
『明日さ、きらりちゃんを帰してあげる前に、ちょっとだけきらりちゃんとやりたい事があるんだけどさ、時間もらっても平気?』
そう俺が拓弥に連絡をしたのは、例のお目当ての人物達との話し合いも終わり、俺の膝上で寝ていたきらりちゃんを起こして、布団へ寝かしつけ直した後の事だった。
きらりちゃんが寝ていたのもあって、連絡はメッセージアプリで行った。
話し合いが少々長引いた事もあり、拓弥に連絡を入れる頃には夜もいい感じに更けていたのだが、拓弥からの返信は早かった。きっと、俺からの連絡がいつ来てもいいようにスマホを肌身離さ持っていたのだろう。
秒もかからずにメッセージ横に『既読』のマークがついたかと思うと、すぐに『なにかあった?』と返事がきた。
『もしかしてきらりが何かわがまま言ってる?』
『迷惑かけてない?』
『大丈夫?』
矢継ぎ早に飛んでくるメッセージ達。
心配性なパパですなぁと苦笑しつつ、俺は『そうじゃなくて』とすかさず返信した。
『俺がもうちょっとだけ、きらりちゃんとお話がしてみたくなっただけ』
『透くんが?』
『そう。今のまま『時間になったから、じゃあお家に帰りましょ』なんてしても、何も変わらないってか、きらりちゃんにとってもむこうの親御さんにとっても嫌な気持ち抱えたままになっちゃうじゃん。せめてちょっとぐらいは、気持ちよく帰してあげたいなって。拓弥もこのままきらりちゃんに嫌われたままじゃ、嫌っしょ?』
『だからもう少しだけ、何かできることはないかなって思って』とメッセージを締めれば、やはり秒もかからずに既読のマークがつく。
だが、今度は返信までに間があった。
拓弥との待ち合わせ場所であるRe: creation前に向かうと、そこにはすでに拓弥の姿があった。
Re: creationに入っていく人の邪魔にならないようにするためか、建物から少し離れた歩道端に立っている拓弥。
モスグリーンのスウェットに白のカジュアルシャツ、それからチノパンと、昨日同様にラフな私服姿の友人は、どこか休日のパパを思わせる落ち着いた雰囲気がある。
辺りを照らす春の日差しのやわらかさも相まって、これから子どもとピクニックに行くのだと言われても納得できそうな装いだ。
同じラフな格好であっても、ブルーのパーカーにジーンズのパンツだけの俺とは、醸し出すラフさの種類が違う。
なんでだろうなぁ、なんか向こうのが大人に見えるっつーか。
優作といい、たかのっぽくんといい、なんで俺の周り、服のセンスいい奴らばかりいすぎでは?
(……まぁ当の本人は、ピクニックなんて、そんなウキウキわくわくドッキドキな心情からは遠い状態にいるんだろうけど)
ボーッと、魂が抜けたような表情で通りを眺めている友人の姿に、ポリポリと頬をかく。
俺がRe: creationの中から出てきた事にも、まったく気づいてねぇな、ありゃあ。昨日、きらりちゃんに「嫌い」って言われて相当キてる感じだったし、やっぱりそう簡単に回復はしないか。
ふぅ、とひとつ息をつく。そうして、よし、と軽く頬を叩いて意気込む。
(行こう)
ここまで来たら、もう後戻りはできない――。意を決して拓弥の方へ足を踏み出す。
「拓弥」
俺に呼ばれた拓弥がこちらを振り返った。
「透くん」
「悪い、待たせた?」
突然俺が現れたからか、拓弥の目が驚きで見開かれている。
が、すぐに平常心を取り戻したらしい。「ううん」と首を横にふると、へらりと、気の抜けた笑みを返してきた。
「ちょっと前に着いたばかりだから、大丈夫。むしろ透くんの方こそ、いつからいたのさ。全然気づかなかったから、びっくりしたよ」
「待ち合わせ場所がここに指定された時もびっくりしたけどさ」と、拓弥が苦笑しながら続ける。
いつも通りの苦笑。でもやはり、どこかいつもより影を落としているように感じる笑みに、少しばかし苦い気持ちになりながらも、俺は昨晩この友人とした会話を思い返した。
***
『明日さ、きらりちゃんを帰してあげる前に、ちょっとだけきらりちゃんとやりたい事があるんだけどさ、時間もらっても平気?』
そう俺が拓弥に連絡をしたのは、例のお目当ての人物達との話し合いも終わり、俺の膝上で寝ていたきらりちゃんを起こして、布団へ寝かしつけ直した後の事だった。
きらりちゃんが寝ていたのもあって、連絡はメッセージアプリで行った。
話し合いが少々長引いた事もあり、拓弥に連絡を入れる頃には夜もいい感じに更けていたのだが、拓弥からの返信は早かった。きっと、俺からの連絡がいつ来てもいいようにスマホを肌身離さ持っていたのだろう。
秒もかからずにメッセージ横に『既読』のマークがついたかと思うと、すぐに『なにかあった?』と返事がきた。
『もしかしてきらりが何かわがまま言ってる?』
『迷惑かけてない?』
『大丈夫?』
矢継ぎ早に飛んでくるメッセージ達。
心配性なパパですなぁと苦笑しつつ、俺は『そうじゃなくて』とすかさず返信した。
『俺がもうちょっとだけ、きらりちゃんとお話がしてみたくなっただけ』
『透くんが?』
『そう。今のまま『時間になったから、じゃあお家に帰りましょ』なんてしても、何も変わらないってか、きらりちゃんにとってもむこうの親御さんにとっても嫌な気持ち抱えたままになっちゃうじゃん。せめてちょっとぐらいは、気持ちよく帰してあげたいなって。拓弥もこのままきらりちゃんに嫌われたままじゃ、嫌っしょ?』
『だからもう少しだけ、何かできることはないかなって思って』とメッセージを締めれば、やはり秒もかからずに既読のマークがつく。
だが、今度は返信までに間があった。
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