Herec 2nd~一度音楽をやめた奴らが結成した『社会人バンド』がMVを作る事になった話~

勝哉道花@みちなり文庫

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4章 臆病者と家族とキラキラ星

4-21

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「うん。あの子の事を心配しすぎてたというか、親だからとか、子どもだからとか、そういう考えに凝り固まりすぎててさ、あの子自身を全然見れてなかったなって」

「これからは、もっとちゃんとあの子自身を見て、いろいろ話していこうと思うよ」そう拓弥が言葉を続ける。

 穏やかな微笑みが浮かぶ顔には、もう陰りはない。むしろ、どことなく晴れやかな雰囲気さえある。
 拓弥の中で家族に対して抱えていたものに、彼なりの答えを導き出せたらしい事は明白だった。

 たかのっぽくんが、「あの子自身を見る」とその言葉に込められたものを考えるかのように、ぽつりと呟いた。

 くり返された自分の言葉に、拓弥が恥ずかしげに笑う。そんな拓弥の様子に、優作が呆れたように肩をすくめつつも口元に小さな笑みを浮かべた。

(考えに凝り固まり過ぎてたかぁ。それに関しては、俺もあんまり人の事は言えねぇな)

 大人として、教師という職に就く人間として。いろいろ考えちゃって、身動き取れなくなっちゃったところがあったもんな、今回、と俺も拓弥の言葉の意味を考える。

 どうする事が正解なのか、考えれば考えるほどドツボにはまって動けなくなっちゃったというか。
 考えなしに動くのもいけないのだろうが、考えすぎて動けなくなるのも問題だ。

 うーん、考えるって難しい。

(……あれ?)

 考えに凝り固まりすぎて、動けなくなる?

 なんかこの感じ、もっと前にも同じような事があったような気が……。

「あ」
「「「あ?」」」
「俺、なんか思いついたかもしれん」

「MVの事っつーか、テーマ性ってか、バンドの方向性? みたいなの?」と言葉を続ければ、キョトンとした顔で拓弥、優作、たかのっぽくんが俺の方を見てくる。

「それって、どういう」と拓弥が、他2人を代表するかのように口を開いた。

 ――時だった。

「ん? おい、なんかお前の娘、こっちに戻ってんぞ」
「え」

 優作の言葉に、拓弥がパッと、再びきらりちゃんと元奥さんがいる方へ振り返る。

 俺とたかのっぽくんも、拓弥につられる形でそちらに顔を向ける。
 すると確かに、優作の言葉通り、こちらに向かって走ってきているきらりちゃんの姿があった。

「どうしたの、きらり。何か忘れ物でもした?」

 拓弥が率先して、きらりちゃんを出迎える。「荷物は全部ママに渡したはずだけど……」と続けながら、ちらりと、ミニバンの横でこちらを見ている元奥さんの方へ目だけを向ける。
 拓弥の言葉通り、元奥さんの手には、昨日彼女から俺が預かったトートバッグが握られていた。

 きらりちゃんが「ううん」と首を横に振った。
 忘れ物をしたわけじゃないらしい。

 じゃあ、どういうわけだ? その場にいる大人組の頭上に同じ疑問符が浮かんだと思われた瞬間、きらりちゃんがバッと俺の方を向いた。

 ……………俺の、方?

 え、なんで????

 きらりちゃんの目と俺の目が、バチンッとはち合う。

 瞬間、きらりちゃんが、ニマ~ッと大きく口を持ち上げて笑った。
 ふふふふふ、となにかを企んでいるらしい事が丸わかりな笑い声と一緒に、俺の方へ近寄ってくる。

「透くんっ」
「お、おう」
「しゃがんで!」

 ……………………はい?

 突然の申し出に、一瞬ばかし思考が停止した。

 他3人も、予想外の事態に頭の中の処理が追いついていないようだ。
 誰も彼もが目を丸めた状態で、俺ときらりちゃんを見ている。

 俺が動かない事にやきもきしたのか、きらりちゃんがムスッと唇を突き出した。
「しゃ~が~ん~でってば~っ」と、その場でドスドスと足を踏み鳴らし始める。

(な、なんだなんだ。一体何が始まるんだ?)

 俺、なにかやらかしましたっけ?

 とりあえず、しゃがまない事には何も始まらなさそうだ。「は、はいっ」と、思わず反射的に返事をしながら、その場に急いでしゃがみ込む。

 と――、

 ふにっ。

 柔らかな何かが、俺の頬に押し付けられた。
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