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4章 臆病者と家族とキラキラ星
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「困ってたら、お互い様ってな。ほら、前にも一度言ったじゃん? 俺達、酸いも甘いも噛み分けてきたバンド仲間同士、死なば諸共ってさ。これぐらいどうって事ないって」
「お茶の子さいさい、へのへのへのカッパってな~」と場の空気を変えるつもりで続けたら、「死語やめろ」と優作が顔をしかめた。
え、これ、死語なん? 嘘、マジで?? 思わず、この場で一番の若者を見れば、「おちゃ……?」と不思議そうに首をかしげている姿が目につく。
……もしかして俺って、意外と自分で思ってるよりもおじさんに近かったりします?
嘘でしょ~、知りたくなかった真実だわ~。とほほ、と心の中で泣きながら落ち込めば、俺達のやり取りに呆れたのか、拓弥が再び苦笑を顔に浮かべる。
……かと思うと、ふっと笑みを和らげ、俺、優作、たかのっぽくんの3人を見回してきた。
そして、
「――ありがとう」
ぽつりと、少し恥ずかしそうな声音で、そう言葉を続けた。
優作とたかのっぽくんが、驚いたように目を丸くする。
が、すぐに優作が照れたようにそっぽを向き、たかのっぽくんが嬉しそうな笑みを顔に浮かべた。
俺も、友人からの素直でストレートなお礼に少し気恥ずかしくなりつつも、へへへ、と笑い返した。
(きっと、全てを完璧に解決するのは難しい)
これがテストなら、努力すれば満点は取れる。でも、現実はテストみたいに答えがあるわけじゃない。
これが『正しい』、あれが『正しい』、そういうものはあるけど、だからって正しい事ばかりで上手くいくかと言われたら、そうではない時なんて山ほどある。
何もかも上手くいくわけではない。努力は必ず実を結ぶわけではない。どんなに頑張っても、どんなに正しいことをしても報われない事はある。
だから現実は厳しくて難しくて、時には心折れてしまう事だって起こりるのだ。
(だけど、)
それでも見えてくるものは、確かにある。
間違って、失敗して、後悔して、諦めて。
そうする事で見えてくるものだって、きっとあるのだ。
成功することでしか見えない、手に入らない景色があるのなら、失敗する事でしか見えないものだって、きっとあるはずだから。
(……そういうのを大事にしていけたらなぁ、なんて、そんな事を思ったり)
まぁ現実問題、どうにかしなくちゃいけない事がなくなるわけじゃないので、現実が厳しい事に変わりはないのですが。
実際、拓弥の問題は解決したけど、MVの方は全然まったくもってなんの進展もしてないしね。
はーーーーーーーーっ、現実ってつらっ。
「ま、まぁ、とにかく、なんとかなって何よりってな。にしても、まさかタクが親馬鹿タイプの人間だったとはな。まったく思っても見なかったぜ」
よく知る昔馴染みからの穏やかな視線に耐えられなくなったのか、優作が話題の矛先を変え始めた。「あー、それわかるわー」と思わず俺が便乗すれば、たかのっぽくんも、「あー……」と何か物言いただげな表情を顔に浮かべる。
「え、そう?」と拓弥がびっくりしたように、俺達の反応に目を丸めた。
「んだよ、無自覚かよ。娘ちゃんに『嫌い』って言われた時、あんだけショック受けといて、それで違うはねぇだろ」
「えぇ? でも自分の娘だよ? かわいい娘に嫌われたらさ、皆落ち込みぐらいするでしょ?」
「いやぁ、ショックは受けるかもだけど、あそこまでショック受けるかって言われたら悩ましいと思うぜ?」
「なー」と優作、たかのっぽくんに同意を求めれば、「だな」と優作が深く頷き返してくれた。たかのっぽくんも困惑した様子を見せているが、否定はしないところを見るに、同意見と捉えていいだろう。
俺達の反応に納得できなかったらしい拓弥が、「えー」と困ったように声をあげる。
が、ふっと口元を緩めると、「でも、そうだね……」と何かを考えるように続けながら、きらりちゃんと元奥さんがいる方へ振り返った。
「親馬鹿かどうかはさておき、今回の事は、俺もアイツもちょっと過保護すぎたのかもしれないな」
「過保護すぎた、ですか?」
たかのっぽくんが拓弥の言葉に、不思議そうに首をかしげた。
「お茶の子さいさい、へのへのへのカッパってな~」と場の空気を変えるつもりで続けたら、「死語やめろ」と優作が顔をしかめた。
え、これ、死語なん? 嘘、マジで?? 思わず、この場で一番の若者を見れば、「おちゃ……?」と不思議そうに首をかしげている姿が目につく。
……もしかして俺って、意外と自分で思ってるよりもおじさんに近かったりします?
嘘でしょ~、知りたくなかった真実だわ~。とほほ、と心の中で泣きながら落ち込めば、俺達のやり取りに呆れたのか、拓弥が再び苦笑を顔に浮かべる。
……かと思うと、ふっと笑みを和らげ、俺、優作、たかのっぽくんの3人を見回してきた。
そして、
「――ありがとう」
ぽつりと、少し恥ずかしそうな声音で、そう言葉を続けた。
優作とたかのっぽくんが、驚いたように目を丸くする。
が、すぐに優作が照れたようにそっぽを向き、たかのっぽくんが嬉しそうな笑みを顔に浮かべた。
俺も、友人からの素直でストレートなお礼に少し気恥ずかしくなりつつも、へへへ、と笑い返した。
(きっと、全てを完璧に解決するのは難しい)
これがテストなら、努力すれば満点は取れる。でも、現実はテストみたいに答えがあるわけじゃない。
これが『正しい』、あれが『正しい』、そういうものはあるけど、だからって正しい事ばかりで上手くいくかと言われたら、そうではない時なんて山ほどある。
何もかも上手くいくわけではない。努力は必ず実を結ぶわけではない。どんなに頑張っても、どんなに正しいことをしても報われない事はある。
だから現実は厳しくて難しくて、時には心折れてしまう事だって起こりるのだ。
(だけど、)
それでも見えてくるものは、確かにある。
間違って、失敗して、後悔して、諦めて。
そうする事で見えてくるものだって、きっとあるのだ。
成功することでしか見えない、手に入らない景色があるのなら、失敗する事でしか見えないものだって、きっとあるはずだから。
(……そういうのを大事にしていけたらなぁ、なんて、そんな事を思ったり)
まぁ現実問題、どうにかしなくちゃいけない事がなくなるわけじゃないので、現実が厳しい事に変わりはないのですが。
実際、拓弥の問題は解決したけど、MVの方は全然まったくもってなんの進展もしてないしね。
はーーーーーーーーっ、現実ってつらっ。
「ま、まぁ、とにかく、なんとかなって何よりってな。にしても、まさかタクが親馬鹿タイプの人間だったとはな。まったく思っても見なかったぜ」
よく知る昔馴染みからの穏やかな視線に耐えられなくなったのか、優作が話題の矛先を変え始めた。「あー、それわかるわー」と思わず俺が便乗すれば、たかのっぽくんも、「あー……」と何か物言いただげな表情を顔に浮かべる。
「え、そう?」と拓弥がびっくりしたように、俺達の反応に目を丸めた。
「んだよ、無自覚かよ。娘ちゃんに『嫌い』って言われた時、あんだけショック受けといて、それで違うはねぇだろ」
「えぇ? でも自分の娘だよ? かわいい娘に嫌われたらさ、皆落ち込みぐらいするでしょ?」
「いやぁ、ショックは受けるかもだけど、あそこまでショック受けるかって言われたら悩ましいと思うぜ?」
「なー」と優作、たかのっぽくんに同意を求めれば、「だな」と優作が深く頷き返してくれた。たかのっぽくんも困惑した様子を見せているが、否定はしないところを見るに、同意見と捉えていいだろう。
俺達の反応に納得できなかったらしい拓弥が、「えー」と困ったように声をあげる。
が、ふっと口元を緩めると、「でも、そうだね……」と何かを考えるように続けながら、きらりちゃんと元奥さんがいる方へ振り返った。
「親馬鹿かどうかはさておき、今回の事は、俺もアイツもちょっと過保護すぎたのかもしれないな」
「過保護すぎた、ですか?」
たかのっぽくんが拓弥の言葉に、不思議そうに首をかしげた。
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