Herec 2nd~一度音楽をやめた奴らが結成した『社会人バンド』がMVを作る事になった話~

勝哉道花@みちなり文庫

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5章 本気と『本気』と似た者同士

5-9

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「では、その方向性でMVを作っていくという事でいいですね」
「へあ」
「なんですか、そのアホな返事は」

「間抜けなのでやめてください」とシオリちゃんがきっぱりと言葉を続ける。

 いや間抜けって。確かに俺も、今の返事は大人としてどうなのかとは思いますが、もう少し、こう優しくオブラードに包んで言ってほし……、あ、すみません。嘘です。文句なんて1つもありません。

 睨まないで。美人からの睨み、本当怖い。

「いや、あの、別に変な意味じゃなくてね、その、ただ驚いただけといいますか」
「は? 驚く必要ありましたか、今」
「だって、その、えっと、絶対、いろいろ言われるんだろうなぁって思ってたからさ」

 ほら、それっぽい事は言ってるけど、このテーマ、結構穴があいてるといいますか、ボロ丸出しといいますか。
 そもそも、結局のところ、このテーマは楽曲に詰め込んだ『何か』がわからないままだからこその、苦肉の策みたいな案なわけでして。

 こんな根本の部分が曖昧な答え方、テストでされたら三角なんてつける隙もなくバツ一択だわ。
 どれだけ途中式ができていても、答えがしっかり導き出せてなかったら点数になりません。
 間違っててもいいから答えは書いてください。

「自覚はあるんですね」

 あわあわと言葉を続ける俺に、シオリちゃんが呆れたような眼差しを向けてきた。

 うっ、睨まれるのも嫌だけど、この「どうしようもないな、コイツ」みたいな眼差しを向けられるのもしんどいものがあるぜ。
 美人は敵に回すものじゃないな。何をされても心にくるものがある。

 返す言葉も思いつかず、「すんません……」と謝りながら、俺はしょぼしょぼと背中を丸めた。

「……別に、私だって頭ごなしに全てを否定するつもりはありませんよ。そりゃあ、私個人としては、言いたい事は山程ありますけどね」

 はぁ、とシオリちゃんが大きなため息を吐いた。

「たとえ本当に後出しの理由だとしても、『つけた』って、後出し丸出し状態な言い方をするのはどうなの、もっと言いようがあるでしょとか、結局、根本的に何をしたいかはわからないままじゃないとか、というか、自分本位な活動は変わらずじゃない、聞く側の事を考える話はどうなった、あと全体的に言動が稚拙過ぎる、大人って二2文字を辞書で引き直してきてほしいとか。言っていいなら、それこそいろいろ出てきますよ」
「もうすでにいろいろ言ってません?」
「もっと他にもいろいろあるって事ですよ」

「言ってほしいなら言いましょうか」と俺のツッコミをさらりとかわしながら、シオリちゃんがコーヒーに口をつける。

 なんて冷静かつ鋭利な返答だ。背中を伝う汗が止まらないぜ!
「いえ、大丈夫です……」と、ソッとシオリちゃんの提案を遠慮すれば、ふんっ、と俺の返事を一蹴するようにシオリちゃんが鼻を鳴らした。

 どうして俺の周りにいる女の子達って、こうも強かな子達が多いんだろう。
 それとも、俺が知らなかっただけで、元来女の子ってのはこういう子のが多いのか? 

 もしかして、井上さんみたいな落ち着いていて優しい雰囲気の人のが、実は少なかったりします?

「でも、これらはあくまでも私個人の話です」

 シオリちゃんがカップをテーブルの上に戻す。

 量の減ったコーヒーがカップの中でゆるりと揺れ、小さな波紋をその表面にたたせた。

「そちらが私の事をどう見ているかは知りませんが、それが皆さんの考えで意見だというなら、私の方はそれを否定するつもりは一切ありません」
「で、でも、前回は、その、ほら、凄い怒ってたってか、俺達の今の活動に反対してる風だったじゃん……?」
「あれは、貴方達がちゃんと『誰かに見せる』という事を意識していないのに腹が立っただけです。動画サイトにあげる、見せるというセクションをしておいて、画面の向こう側にいる人の事を全く意識せずに活動していた事に理解できなかったんですよ」

 ギロリと、こちらを嗜めるように睨みつけてくるシオリちゃん。
 どうやら、話しながら前回の怒りがよみがえってきたらしい。

 やっべ、蒸し返しちゃいけないこと蒸し返しちゃった。えーんっ、助けてたかのっぽくーんっ、俺の最強の仲間ーっ、カムバーック‼

「……私は、聴覚や言葉だけでは補えないものを表現し、そこに込められたメッセージ性や世界観を深める事こそ、動画の役割であると考えています」

 少し間をあけて、シオリちゃんが再び口を開いた。
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