81 / 82
5章 本気と『本気』と似た者同士
5-9
しおりを挟む
「では、その方向性でMVを作っていくという事でいいですね」
「へあ」
「なんですか、そのアホな返事は」
「間抜けなのでやめてください」とシオリちゃんがきっぱりと言葉を続ける。
いや間抜けって。確かに俺も、今の返事は大人としてどうなのかとは思いますが、もう少し、こう優しくオブラードに包んで言ってほし……、あ、すみません。嘘です。文句なんて1つもありません。
睨まないで。美人からの睨み、本当怖い。
「いや、あの、別に変な意味じゃなくてね、その、ただ驚いただけといいますか」
「は? 驚く必要ありましたか、今」
「だって、その、えっと、絶対、いろいろ言われるんだろうなぁって思ってたからさ」
ほら、それっぽい事は言ってるけど、このテーマ、結構穴があいてるといいますか、ボロ丸出しといいますか。
そもそも、結局のところ、このテーマは楽曲に詰め込んだ『何か』がわからないままだからこその、苦肉の策みたいな案なわけでして。
こんな根本の部分が曖昧な答え方、テストでされたら三角なんてつける隙もなくバツ一択だわ。
どれだけ途中式ができていても、答えがしっかり導き出せてなかったら点数になりません。
間違っててもいいから答えは書いてください。
「自覚はあるんですね」
あわあわと言葉を続ける俺に、シオリちゃんが呆れたような眼差しを向けてきた。
うっ、睨まれるのも嫌だけど、この「どうしようもないな、コイツ」みたいな眼差しを向けられるのもしんどいものがあるぜ。
美人は敵に回すものじゃないな。何をされても心にくるものがある。
返す言葉も思いつかず、「すんません……」と謝りながら、俺はしょぼしょぼと背中を丸めた。
「……別に、私だって頭ごなしに全てを否定するつもりはありませんよ。そりゃあ、私個人としては、言いたい事は山程ありますけどね」
はぁ、とシオリちゃんが大きなため息を吐いた。
「たとえ本当に後出しの理由だとしても、『つけた』って、後出し丸出し状態な言い方をするのはどうなの、もっと言いようがあるでしょとか、結局、根本的に何をしたいかはわからないままじゃないとか、というか、自分本位な活動は変わらずじゃない、聞く側の事を考える話はどうなった、あと全体的に言動が稚拙過ぎる、大人って二2文字を辞書で引き直してきてほしいとか。言っていいなら、それこそいろいろ出てきますよ」
「もうすでにいろいろ言ってません?」
「もっと他にもいろいろあるって事ですよ」
「言ってほしいなら言いましょうか」と俺のツッコミをさらりとかわしながら、シオリちゃんがコーヒーに口をつける。
なんて冷静かつ鋭利な返答だ。背中を伝う汗が止まらないぜ!
「いえ、大丈夫です……」と、ソッとシオリちゃんの提案を遠慮すれば、ふんっ、と俺の返事を一蹴するようにシオリちゃんが鼻を鳴らした。
どうして俺の周りにいる女の子達って、こうも強かな子達が多いんだろう。
それとも、俺が知らなかっただけで、元来女の子ってのはこういう子のが多いのか?
もしかして、井上さんみたいな落ち着いていて優しい雰囲気の人のが、実は少なかったりします?
「でも、これらはあくまでも私個人の話です」
シオリちゃんがカップをテーブルの上に戻す。
量の減ったコーヒーがカップの中でゆるりと揺れ、小さな波紋をその表面にたたせた。
「そちらが私の事をどう見ているかは知りませんが、それが皆さんの考えで意見だというなら、私の方はそれを否定するつもりは一切ありません」
「で、でも、前回は、その、ほら、凄い怒ってたってか、俺達の今の活動に反対してる風だったじゃん……?」
「あれは、貴方達がちゃんと『誰かに見せる』という事を意識していないのに腹が立っただけです。動画サイトにあげる、見せるというセクションをしておいて、画面の向こう側にいる人の事を全く意識せずに活動していた事に理解できなかったんですよ」
ギロリと、こちらを嗜めるように睨みつけてくるシオリちゃん。
どうやら、話しながら前回の怒りがよみがえってきたらしい。
やっべ、蒸し返しちゃいけないこと蒸し返しちゃった。えーんっ、助けてたかのっぽくーんっ、俺の最強の仲間ーっ、カムバーック‼
「……私は、聴覚や言葉だけでは補えないものを表現し、そこに込められたメッセージ性や世界観を深める事こそ、動画の役割であると考えています」
少し間をあけて、シオリちゃんが再び口を開いた。
「へあ」
「なんですか、そのアホな返事は」
「間抜けなのでやめてください」とシオリちゃんがきっぱりと言葉を続ける。
いや間抜けって。確かに俺も、今の返事は大人としてどうなのかとは思いますが、もう少し、こう優しくオブラードに包んで言ってほし……、あ、すみません。嘘です。文句なんて1つもありません。
睨まないで。美人からの睨み、本当怖い。
「いや、あの、別に変な意味じゃなくてね、その、ただ驚いただけといいますか」
「は? 驚く必要ありましたか、今」
「だって、その、えっと、絶対、いろいろ言われるんだろうなぁって思ってたからさ」
ほら、それっぽい事は言ってるけど、このテーマ、結構穴があいてるといいますか、ボロ丸出しといいますか。
そもそも、結局のところ、このテーマは楽曲に詰め込んだ『何か』がわからないままだからこその、苦肉の策みたいな案なわけでして。
こんな根本の部分が曖昧な答え方、テストでされたら三角なんてつける隙もなくバツ一択だわ。
どれだけ途中式ができていても、答えがしっかり導き出せてなかったら点数になりません。
間違っててもいいから答えは書いてください。
「自覚はあるんですね」
あわあわと言葉を続ける俺に、シオリちゃんが呆れたような眼差しを向けてきた。
うっ、睨まれるのも嫌だけど、この「どうしようもないな、コイツ」みたいな眼差しを向けられるのもしんどいものがあるぜ。
美人は敵に回すものじゃないな。何をされても心にくるものがある。
返す言葉も思いつかず、「すんません……」と謝りながら、俺はしょぼしょぼと背中を丸めた。
「……別に、私だって頭ごなしに全てを否定するつもりはありませんよ。そりゃあ、私個人としては、言いたい事は山程ありますけどね」
はぁ、とシオリちゃんが大きなため息を吐いた。
「たとえ本当に後出しの理由だとしても、『つけた』って、後出し丸出し状態な言い方をするのはどうなの、もっと言いようがあるでしょとか、結局、根本的に何をしたいかはわからないままじゃないとか、というか、自分本位な活動は変わらずじゃない、聞く側の事を考える話はどうなった、あと全体的に言動が稚拙過ぎる、大人って二2文字を辞書で引き直してきてほしいとか。言っていいなら、それこそいろいろ出てきますよ」
「もうすでにいろいろ言ってません?」
「もっと他にもいろいろあるって事ですよ」
「言ってほしいなら言いましょうか」と俺のツッコミをさらりとかわしながら、シオリちゃんがコーヒーに口をつける。
なんて冷静かつ鋭利な返答だ。背中を伝う汗が止まらないぜ!
「いえ、大丈夫です……」と、ソッとシオリちゃんの提案を遠慮すれば、ふんっ、と俺の返事を一蹴するようにシオリちゃんが鼻を鳴らした。
どうして俺の周りにいる女の子達って、こうも強かな子達が多いんだろう。
それとも、俺が知らなかっただけで、元来女の子ってのはこういう子のが多いのか?
もしかして、井上さんみたいな落ち着いていて優しい雰囲気の人のが、実は少なかったりします?
「でも、これらはあくまでも私個人の話です」
シオリちゃんがカップをテーブルの上に戻す。
量の減ったコーヒーがカップの中でゆるりと揺れ、小さな波紋をその表面にたたせた。
「そちらが私の事をどう見ているかは知りませんが、それが皆さんの考えで意見だというなら、私の方はそれを否定するつもりは一切ありません」
「で、でも、前回は、その、ほら、凄い怒ってたってか、俺達の今の活動に反対してる風だったじゃん……?」
「あれは、貴方達がちゃんと『誰かに見せる』という事を意識していないのに腹が立っただけです。動画サイトにあげる、見せるというセクションをしておいて、画面の向こう側にいる人の事を全く意識せずに活動していた事に理解できなかったんですよ」
ギロリと、こちらを嗜めるように睨みつけてくるシオリちゃん。
どうやら、話しながら前回の怒りがよみがえってきたらしい。
やっべ、蒸し返しちゃいけないこと蒸し返しちゃった。えーんっ、助けてたかのっぽくーんっ、俺の最強の仲間ーっ、カムバーック‼
「……私は、聴覚や言葉だけでは補えないものを表現し、そこに込められたメッセージ性や世界観を深める事こそ、動画の役割であると考えています」
少し間をあけて、シオリちゃんが再び口を開いた。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる