おやじ猫を拾う

kony

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be my best

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残りのロス滞在はユニバに行き、ディズニーに行きたくさん楽しんだ、ケンを楽しませるつもりで
おじさんなりに感張ってみた。しかしケンの表情がどこか暗い。
ケンに「元気ななさそうだけど、具合でも悪い?」ときくと
ケンは「アメリカっていいよね、同性婚出来るし、何処に行っても、手を繋いでいても誰も気にも留めないし」
「日本に帰ったら、手なんて繋げないなって思うとさ、なんだか悲しくて」と
俺はそんな事かと、クスッと笑ってしまった、20歳のハートは美しく脆い
俺は「ケン、東京でも手を繋いでもいいよ、みんな気を遣ってるだけで」「俺とケンの関係なんてわかってるよ」
「なんならLAで二人だけの結婚式でもやるか?」と言ったら「やるやるって」ケンは急にニコニコした
ホテルのコンシェネジュに早速相談してみたら「お任せくださいと」
コンシェネジュとウエディングコーディネーターが30分もしないでやって来た
服のレンタルや色々と手際よく決まった。指輪もティファニーで用意してもらい
明日の午前中に式が瞬く間に決まって能力の高さにビックリした。
参列者はマーク夫妻と佐藤君だけ、質素だけどケンは大喜びだ。
勢いで言ってしまったが、こんなにすぐ決まるとは、さすがアメリカの寛容性なのか
その日の夜、なんとホテルの計らいでバチェラーパーティーを開いてもらった
本来なら別々にするパーティーなのだが、特別な事情って事で
ホテルの関係者の方や現地の日本人会の方、宿泊客そして何処で聞いたのかあのビーチボーイも参加していた
盛大に盛り上がってさすがに俺も吐き気がしてきた。
レストランを抜け出し、バルコニーでタバコを吸っていた。すると日本人会の方が同じくタバコを吸いにやって来た。やたらと難しい英語で話しかけられ理解が出来なかったが「Be my best」と言い残し消えていった
「全力を尽くせ」か。。。そして記憶がないまま起きた時にはベッドの上だった。
とりあえず服は着ているのでバカな事はしてないと安心した。ケンは俺の手帳をみて肩を震わせ泣いていた。俺は寝たふり、いやガチ寝してしまった。翌朝ケンに叩き起こされた。「早くシャワーシャワー」と急かされ
シャワーから出てくるとヘアメイクさんやら、地元TV局など多数が押しかけていた。
ケンに「どういうこと?」
と聞くと「ケンは「覚えてないんだ」「昨日、SNSに投稿したでしょ」「人気インフルエンサーの目に止まって、すごい人だよ」
俺は「すまん、何も覚えてない」もう凄まじいスピードで着替えから全て他人任せってのは初めての経験だった
迎えのリムジンに乗り、教会までの道中佐藤君から事の詳細を聞き、怒涛のスピードで式が執り行われ
最後にライスシャワーだけが、悪気は無いのであろうが子孫繁栄はありえないしと思いながらも
午後便の飛行機に急いだ。
飛行機の中ではケンも佐藤君も相当疲れたのだろう爆睡していた。いつもの様に手帳を開くと
何ページにもわたってインクが滲んでいた。
昨夜の事を思い出し、ケンの涙かと思い最後ページに進むと
ケンからのメッセージが綴られていた「ヒロさんへ、僕は全部知ってるよ夜中トイレに行って、タバコを吸いながら僕をじっと見つめている事、20代の好きなご飯を検索してる事、すごく嬉しいよ、僕はヒロさんの汗臭くタバコ臭くてウイスキーの香りがするキスが好きだよ。ヒロさんがメガネをかけている姿も好きだよメガネ越しに見るヒロさんの瞳が僕は大好きだよ。ヒロさんと一緒にいると安心できる。そっけない態度も好きだよ。結局は全部好きなんだ。だからお願い長生きしてね」
俺は目頭が熱くなった。「長生きしてね」かメモ帳に記載してある俺の「死」について指してるんだな
大切にするよケン、大好きだよと心の中で呟き、いつも通りケンの線画をメモ帳に書き始めた。
さよならアメリカ





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