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【第2章】検索されるお店 ― SEOの基本

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一週間後、ホームページが公開された。
トップには、美咲と涼が決めた言葉――

灯りを、もうひとつ。
やさしい写真とともに、画面に静かに浮かんでいた。

「すごく素敵です……!」
公開ボタンを押した瞬間、美咲の胸は高鳴った。
まるで新しいドアを開けたような感覚。
これでお客さんが少しずつ増える――そう信じていた。

しかし、現実は静かだった。
数日たっても、問い合わせフォームには何も届かない。
アクセス解析を開いても、数字はゼロか、一日に一件だけ。
それもたぶん、自分が確認したアクセスだ。

「……見てくれる人が、いない」
夜のカウンターで、美咲はつぶやいた。
「せっかく作ったのに、誰も知らないんじゃ意味ないですよね」

涼は、コーヒーを飲みながらうなずいた。
「それが“最初の壁”なんです。
ウェブの世界では、いいサイトを作るだけじゃ届かない。
“探される仕組み”を作る必要があるんです」

「探される……仕組み?」
「はい。検索で見つけてもらうための仕組み。
つまり、“SEO”です」

その言葉は、美咲には呪文のように聞こえた。
「エス……イーオー?」
「Search Engine Optimization、つまり“検索エンジン最適化”です。
Googleで“パンケーキ カフェ 代々木”って検索したとき、
上の方に出てくるお店ってありますよね。
あれは偶然じゃなくて、仕組みを整えているんです」

美咲は目を丸くした。
「そんな世界があるんですね……」

涼は笑った。
「あります。
でも、“裏技”じゃないんです。
大事なのは“検索する人が、何を求めてるか”を理解すること。
SEOって結局、“相手の気持ちに近づく努力”なんですよ」

美咲は静かにノートを開いた。
“探される仕組み”という言葉の横に、
彼女は小さくこう書き添えた。

“人の思いを、見つけてもらうための道”

翌日、涼はノートPCを開きながら、美咲の前に一枚の紙を置いた。
そこには、びっしりと単語が並んでいる。
「パンケーキ」「ラテアート」「カフェ 代々木」「静か カフェ」「勉強できるカフェ」。

「これ、何だと思います?」
「……うちに関係ありそうな言葉、ですか?」
「そうです。ネットで人が検索している“言葉”です。
この中から、あなたのお店を見つけてくれる人がいます。」

美咲はその紙を見つめた。
「“静か カフェ”って、そんなに検索されてるんですか?」
「はい。
みんな“パンケーキが食べたい”より、“落ち着ける場所を探したい”って検索してる。
つまり、“商品名”より“気持ち”で検索してるんです。」

涼の指が、画面上のグラフを示した。
「SEOっていうのは、検索エンジンに“うちはこういう人のための場所です”って伝える作業なんです。
キーワードを正しく選ぶことで、Googleにあなたのお店の個性を理解してもらう。
そして、その言葉を探している人に、出会わせてもらうんです。」

「なるほど……」
美咲はうなずいたが、同時に不思議な感情も湧いてきた。
まるで“お客さんの心の声”を読むような作業だ。

「たとえば、“パンケーキ カフェ”で検索する人と、
“心落ち着く カフェ”で検索する人。
どちらもカフェを探してるけど、求めている体験は違います。
SEOは、その違いを見つけて言葉にすることなんです。」

涼の説明を聞きながら、美咲の中で何かが繋がった。
「……つまり、“うちのカフェの灯り”を見つけてくれる言葉を探す、ってことですね。」
涼はにっこり笑った。
「まさに。それが一番正確な表現です。」

二人はテーブルに向かい合い、キーワードの候補を並べていく。
“代々木 カフェ 静か”“ハンドドリップ コーヒー”“心が休まる場所”。
どれも少しずつ違う表情を持っていた。

「これって、ただの言葉じゃないですね」
「そう。SEOは、“言葉で橋をかける仕事”なんです」

夜、作業が終わる頃。
店の窓に映る街の明かりが、ふと柔らかく滲んで見えた。
美咲は、そっとつぶやいた。

「探してくれてる人が、どこかにいるんだな……」

涼はカップを片づけながら答えた。
「その人に届くように、少しずつ道を整えましょう。」
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